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C.B.B.NEW FACE  作者: 怠慢兎
第一章・顔合わせ
43/83

43.(・Д・) (・Д・)

「見えて来たな、アレが"ベイバード内部辺境砦"だ」


 緩やかな上り坂を延々と歩き続け、最後の小山を登り切ると、その先には広大な盆地が広がっている。その盆地の中央に巨大な砦があった。


「デケェ〜、遠近感が狂いそうだー」

「五稜郭の内側に九龍城砦跡のスラム街を造ったみてぇだな、だいぶキレイだけど」

「貴様の所の貧民街(スラム)と一緒にするな、内部辺境伯の治める砦の防衛力はコールロア村を遥かに凌ぐんだぞ」

「そりゃあんな簡単に侵入される壁よりは安全じゃないと」


 ブゥン! ゴッ ビュオッ! ドガッ!


「黙ってろ」

「え?! 今の喧嘩、何……?! あっ、何でも無いっス……」

「ま確かにデカいが、後ろの森林の所為で遠近感が狂う錯覚があるのも確かだな」


 砦の背後、そこには盆地より遥かに広大で、砦よりも巨大な樹木が密集する森が、地平線の端から端までを埋め尽くしていた。


未開拓地帯(フロンティア)に接しているからな」

「未開拓地帯?」

「ああ。特にあの森は最終開発目標地、またの名を"神域(サンクチュアリ)"と呼ぶ」

「人間と縄張り争いをしている神様の暮らす領域だっけな」


 護衛任務の出発前日、コールロア村のシャイターン村長から教えられた。

 曰く、一匹の強大な力を持つ魔獣や精霊が土地に棲む動植物達から畏怖される事で神格化した結果、人類が信仰する神や他の神域をも敵対視し、外部から迷い込めば殺戮、時には領域を拡げる為に獣の"集団暴走(スタンピード)"で侵攻する危険地帯であると。


『この国も広義では神域の一つである。 by シャイターン』


「あの森を監視し、時に侵攻を防ぎ、時に侵攻する為の、東西南北にある四つの拠点の一つ、それがベイバード砦だ。詳しくは城主から聞いてくれ」

「その城主ってー、どんな人なの? 名前は?」


 ビアンカが未来の上司について尋ねると、グレイシャードは暫く考えてから口を開いた。


「名前は"ウォーレン=アイズマン"、アイズマン家の当主でスズランの兄だ。そして……………良く言えば部下思いのお人だ」

「何か妙な間と含みのある言い方だなー?」

「その内分かる。ガンタルト、先触れとして行ってくれ」

「了解」


 砦では周囲を整備して広大な土地に水田を開いて管理している。作物は米。

 神域からは二筋の川が流れて来ており、これを用水路として利用している。川は盆地の端で山を貫通するトンネルを通り、その先のナグルンや他の町々の生活用水として利用されるそうだ。

 現在は休耕期なので殺風景だが、その内に田植えの季節がやって来ることだろう。


「近くで見ると………ハァ〜、なんというかもうデェ…………ッカイ!」


 最年少のアレンが興奮を抑え切れずに御者席の上に立ち上がってはしゃいでいる。


「見りゃわかるよ大袈裟だな。頭上げ過ぎて落っこちるんじゃないよアレン」

「……あ! どうもすいませんありがとございます。おや、もうすぐ門に着きそうですね! ほら、お堀があんな近くに!」

「見りゃ分かるよ。それと足を滑らせて落っこちるんじゃないよ」

「ラーナさん、優しいですね」

「うるさいよ! 座ってな!」


 砦の周囲には幅30m程の堀が城壁に沿って設けられている。砦に入るには跳ね橋を渡す必要があり、手前にある出島の関所で誰何を受ける必要があったのだが、先触れとして先行していたガンタルトが段取りを整えてくれていたのですぐに跳ね橋が降りて来た。


 朝から走ったり冷や汗かいたりしていた連中、特に女性陣はやっと休めるとわかって気を緩めていた。


「疲れた〜、早く休みたい」

「お風呂あるかな?」

「水が豊富だしあるでしょ」

「実際の所知らない? ねーアンタ」

「勿論、疲労回復効果が高いので当然ありますな。職員には女性も少なく有りませんので、男女でしっかり部屋が別れていると記憶しているので、安心して入浴が出来るでしょうな」

「やったねー」

「コラ、サゾ! 私語を慎め!」

「申し訳ありません!」


 やがて架けられた跳ね橋を渡り城門へ向かう。

 門は縦横10m、最初から開いている鋼鉄の観音開きの門と跳ね橋に連動して開く吊り下げ式の格子木の門の二段構えになっているようだ。


「アレ、()(かね)使(つこ)てんなぁ」

「おや? わかるんですか?」

「あぁ、拙僧、こう見えて鍛冶屋の倅でしたので」

「見た目通りですね。少なくとも『元・傭兵』よりはしっくり来ます」

「誉め言葉と受け取って置きましょう」


 砦に入ると門から本部まで石畳が一直線に伸びており、道の両側には一つずつ質素な噴水が湧いている。

 そして道の中央には壮年の男性が純白のコートを着た部下を2人、自身の背後に控えさせて待ち構えている。

 宿泊馬車を曳く豚人(オーク)が一旦前へ進み出てから位置を180度回転させて出口を正面に向ける。そして中からグレイシャードの妹のグレーテル、続けてユウが出て来て歩き出した。


 ユウの後ろにアーサー、カール、ビアンカが並んで歩き、途中でユウの影の中からイェンがヌルリと出てきてそこに加わった。ユウの横にはグレイシャードが歩き、その後ろでガンタルトとグレーテルが並んで歩いた。

 やがて彼らは待ち構える男性の前で立ち止まった。


「ようこそ、久しいなグレイシャード」

「こちらこそお久しぶりですアイズマン卿」

「それで? 早速だがそこの坊やは一体何だ?」

「シャイターン翁の村で思い掛けず立派な原石を見つけました。それがこの方"ユウ=ブーム"殿で御座います」

「初めまして、"U=Boom"と申します。未熟ながら医者を志しております。どうぞよろしくお願いします」ぺこ

「ほう、医者か。こちらこそよろしく頼む。さて、到着したばかりで悪いが、昼の準備がまだなんだ。暫く私の部屋で話でもしようじゃないか」

「承知しました」

「……オイ、アーサー。貴様の所の連中はサゾ達と一緒で良いか?」

「そうしてくれると助かる」

「わかった」ビッ


 グレイシャードが出すハンドサインを確認したサゾ達が砦の職員と合流するのを見届け、ユウ達は砦の本部に入って行った。

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