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C.B.B.NEW FACE  作者: 怠慢兎
第一章・顔合わせ
41/83

41.日(´Σ `*)チビチビ…

 "ナグルン"なんて物騒な名前の町の町長さんは、話せば意外と融通の効く人物だった。荒くれ者共の様子を見るのに護衛もなく一人で居る辺り、この人物も町名に負けないくらい腕っ節に自信がありそうだった。

 挨拶のついでに心付けを多めに渡すと、握手をして別れを告げた。


「……ビアンカ程じゃないけど、とんでもねー馬鹿力だったな。そろそろ始めるぞー! ん? 何してんだカール」

「テメーを倒せば新団長なんだろ?」

「………"副団長"がややこしい事やってんじゃねー」


 本当はそんな役職を決めていなかったが、たった今決める事にした。


「え? 副団長?」

「俺達は実力主義だ。俺の下は実力的にお前だけなんだから煩わせるな」

「へー、初耳だがそこまで言うならしゃーねーなッ!」ズァ!


 ズドォッ!


「……ゴハッ!! ガハァッ………」

「気が済んだらビアンカと外で待ってろ。ビアンカァ!」

「ハイよー!」

「お前まで混じってたか……」

「イイじゃん別にー、それよりアタシはー?」

「ンー"突撃隊長"にしようか」

「なら良し! んじゃ、待ってるよー」バイバーイ

ちっこいの(マナちゃん)も連れてけよ。よしお前ら、噴水より前に出るな、もっと下がれ! マヌゥ、ナナラ! 後ろ行け! 植本! 何ビアンカについて行こうとしてる? お前もこっちに加われ! おや……」


 先程までのどこか舐めた態度が嘘のように形を潜めている。カールとのやり取りが相当効いているらしい。

 真面目に取り組んでくれるなら願ったりだ。


「さてと、それじゃあ………始め!」テクテク

「お!?」ズザッ


 『始め』の声に合わせてダッシュを仕掛けた数人が、予想に反してただ歩き出したアーサーに驚いてツンのめる。真後ろに居た連中は勢い余ってそのまま殴り掛かって来た。


 ボ゛ゴド゛ン!!


 その5人はあえなく地面に突っ伏した。


「今の見えたか?!」

「何かあったのか!?」

「わからん! がやっぱり只者じゃねえ!」

「お静かに」シー

「囲むぞ!」


 注意した所で静かになる筈もなく、続いてまた新たな5人が果敢に挑んで来る。男女ペアと3人のネコ科の獣人だ。


 ト゛゛゛゛゛オオオン!!!

 ドサドサッドサッ ドサドサッ


 今度の5人は2〜3メートル程フワッと浮き上がって落下し動かなくなった。


「「「・・・・・!!?!??!」」」

「まだ始まったばかりだぞー」スタスタ


 まだ10mも進んでいないのに、一気に戦意が喪失していくのが感じ取れた。そうなると次は追い抜く者が現れる。


「あんなの相手にしてられるか! 俺は先に行くぜ! ……ひえぇぇ?!!」ドサッ

「「「ッッッ!!??」」」


 一番最初に追い抜いた小柄な男が、何の前触れもなく転倒してしまう。


「今のまさか魔法か!?」

「いや! 魔力を発したように感じなかったぞ!?」

「どういうコトだよそりゃあ?!」


 そして誰も襲い掛かったり、追い抜こうとする者は居なくなった。倒れた小男の横を通り過ぎてから後続が様子を見に行くと、男は泡を吹いて気絶しているのを確認し、とうとう立ち止まってしまった。


「なんだよ、これしきで諦めんのかよ? なら結構、当初の予定通りに進むだけさ」ザッザッ


 ビュンッ

 パシッ


 後ろから投げつけられた石を、頭をズラして身体より前で掴み取る。


「うーん、まぁ石ころ程度なら武器には含まねーかなぁ」チラッ

 ズドォン!! ガッシ! スパァーン! ズザザッ


 タックルから掴みに来るのを、掌底で吹き飛ばす。

 挑んで来たのはリーサル植本だった。


「………命拾いしたな」

「もっと早くに仕掛けて来ると思ってたんだけどな?」

「……わたしはあの子と共に生きる運命だ。お前なんかに邪魔させはしない」

「あの子?」

「………」ズザッ!


 リーサル植本は後ろ足で砂埃を撒いてから先へと進んだ。


「あの姉ちゃん、おっかないや」

「流石の旦那も援護が無きゃ、やられてたかもっスよ?」

「アホ抜かせーバカもん」


 どうやら石を投げたのはマヌゥのようだ。

 マヌゥとナナラは動けなくなった連中を押し退けて、真っ直ぐ門に向かって歩き続ける。


「俺達はちゃんと旦那について行くつもりっスよ」

「合格はしたいけどね。うん、前に出たら死ぬ気で進もう」

「気配だけで泡吹かせるって、こりゃ相当気合い入れて挑まんとな」


 マヌゥとナナラは何が起きているのかちゃんと理解していた。特にナナラはその手の感覚に非常に敏感な為、緊張しているがそれ以上に引き締まった顔をしていた。


 やがて2人は同時に一歩を踏み出す。


「「ンッ!!?」」ビタッ

「立ち止まってどうした? 俺より先に門を通って行かないと合格にならんぞ?」


 マヌゥとナナラとアーサーとで並んで立ち止まる。この時2人は、無数の刃が眼前に突き付けられ、全身の皮膚を鋭い剣先で撫で回される感覚を幻視していた。


「……ふぅー! ああああああ!!!」

「冗談キツいぜ旦那。こんなんされちゃ、商人のおっちゃんには絶対合格出来っこないに決まってらあな」

「……ただの度胸試しって言っただろーが」ニヤニヤ


 しかし脂汗を流して耐える2人は急に、頭を上げ胸を張って笑い飛ばした。


「へへーん! 殺気飛ばしたくらいでへこたれる俺達じゃあねえよ! 行くぞナナラァ!」

「応!」


 参加者の中では下から数えた方が早い年齢の2人がどんどん先に進んで行く。

 それを見て触発されたのか、続々と追い抜いて行く者が現れた。中にはマヌゥに"絶対"とまで言われた商人も存外多かった。


「種明かししやがって。だからって手は抜かねーぞ?」


 追い抜いても殆どがアーサーの殺気に耐えられず卒倒して行くが、それでも気合いと根性で乗り越えて行き、そしてとうとうアーサーも門を潜ったのであった。

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