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C.B.B.NEW FACE  作者: 怠慢兎
第一章・顔合わせ
31/83

32.( ^ω^ )爆発すると思ったかい?

 煙を見つめていたアーサーが垂直に跳び上がり何かを頭上高くへ蹴り飛ばした。

 直後、炸裂する爆音と閃光。

 上()からの眩い光が地下工場全体を照らし出した。


「ぐあああああああああああああっちいいいい!!!!」

「目が……!?」

「チィッ……!」


 リチャードの両肩が弾け、そこから光が溢れ出ている。その光はほんの数秒で消えたが効果は抜群だった。


 ビアンカとカールの眼と耳が潰された。

 一方、グレイシャードはより近い位置に居たものの、フードとマスクのお陰で再起動に時間は掛からない。

 これに乗じて拘束されたまま逃げようとしたリチャードが、身体の反動を利用して器用に起き上がった所でグレイシャードに阻まれる。


「皮膚の下に爆薬か? 普通は考えついても…!?」


 ビュッブンッ、ズドオ!!

 ガッシャーーン!!!


 立ち上がる勢いままに繰り出した連続回し蹴りで、グレイシャードのガードをものともせずに吹き飛ばした。

 爛々と白熱する指でロープを焼き切るリチャード。


 入れ墨のように皮膚下や指の爪の間から()へ爆薬を注入して爆破させる"爆刺術"。

 薬剤を充填した部分は戸に挟んだように黒く変色してしまい、隠す為に手袋や服を着ていると威力と効果が半減してしまう。CBBの歴とした戦闘技術の一つである。


『だったら先に教えておけよ馬鹿野郎ー!!!』


 至近距離からの閃光爆弾によって鼓膜が破壊されてしまったので、チャットで悪態をつくビアンカ。

 そこから遠ざかる為に走り出すリチャードの背に鋼鉄の槍が迫る。


 キィンッ!

 ガランコロン……


「チッ………何者だテメェ」


 暗闇に目が慣れるよう、右目を閉じていて戦闘不能は免れたカール。咄嗟に投げ付けた槍は、突如現れた漆黒の影に遮られ叩き落とされたようだ。


 周囲の仄暗さの中で認識がバグったかのような一際真っ黒い塊が立っている。

 身に付けている物すべてが光をほぼ吸収する塗料に覆われ、分かることは全身の輪郭がフクロウのようにずんぐりとしていることだけだ。


(俺よりも黒いな、吸光塗料(ベンタブラック)ってヤツか)


 一挙手一投足に目を凝らして警戒するも、片目は見えず、両耳は鼓膜が破れて完全に機能しない状態では満足に闘う事は出来る筈もない。

 しかし……カール=B=ヌァラは生粋の戦士である。


「かかって来いや〜、真っ黒すけすけぇ〜」


 闘争心でアドレナリンの分泌を促し、瞳孔を開いて少しでも視覚を確保する。鋭敏化した皮膚感覚は音のような僅かな振動すら感じ取り、聴覚の代わりとして機能する。


 パシィッ!


 漆黒のシルエットに重なるよう投げ付けられたナイフを見極め左手で掴み取った。心臓狙いだ。

 同時に右足を前に踏み出し右手を振りかぶる。


「カァー!!」


 今度は顔面に飛んで来た針を歯で無理矢理弾き、右手首の暗器を投擲する。


 スッ…


 手応えは無かった。投げた棒手裏剣は、相手の鞄の中に消えたのだろう。

 皮膚聴覚では他の何かに当たったり呻き声や呼吸、衣擦れなどの音すら聴こえない。

 見えるのは右目だけだが両目は開いている。それでも死角に気付いて隙を突いたのか?


 すぐさま背後に左手のナイフを投げ捨てつつ、鞄から槍を取り出す。鞄から飛び出る穂先ごと身体を前に送り、そのまま槍を突き込んだ。

 突いてすぐ、やはり手応えが無いと判ると左回りに槍で薙ぎ払う。背後には誰も居なかった。


 その後ろ、漆黒のフクロウから手が出て、腕が伸び、上半身が姿を現した。


 キュッ スパ-ン!!!


「!?」


 カールの右後ろ脚蹴りがヒットした。

 当たったのは顔面だが、これまた漆黒のケブラーマスクに当たったようだ。ダメージは良くて脳震盪程度だろう。


「やっぱり忍者かこの野郎。一発目のアリャ苦無(クナイ)だろ。ウチにも一人、上忍がいるから解るんだよ手口がなぁー」


 上忍とは、忍者として多くの術を習得し、数々の依頼(クエスト)をクリアして、100人のプレイヤーに勝利した者に贈られる称号である。

 その位になると習得している術にも傾向が生まれ、その傾向を掴めば対策も練り易くなる。


「"幽霊遁"か? 陰に隠れて不意打ちを返り討たれてる様じゃあー、あの野郎(アーサー)には逆立ちしたって勝てねぇよ」

(ハンデ有りで五分五分! (くる)しいねぇー。 ん?)


 振り返ったカールは右肘に違和感を感じて見てみると、そこにまち針が一本刺さっていることに気付いた。


(蹴る瞬間に反撃してやがったか。服の防御を貫通するなら拳銃並の威力はあるな)


 夜の森で冷えそうなので一応着ていた特殊繊維の代物だが、その技術力にカールは素直に感心した。


(その上毒か……?)ピタ


 パール付の針を抜いて、自然に鞄に放り込もうと動作し掛けた一瞬、寒気を感じて辞めた。

 毒の効果ではなく、その行為に危険を漠然と感じたからである。


(ただの針じゃねえ、何だ一体…!?)


 だがその一瞬が命取りだった。

 即効性の神経毒が四肢の自由を奪い取り、堪らず持っていたまち針を床に落とした。

 その瞬間、


 ボオォン!!!


 床下から爆炎が飛び出してカールの全身を包んだ。

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