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C.B.B.NEW FACE  作者: 怠慢兎
第一章・顔合わせ
29/83

30.(•Д•)旧。o(コレどこにあったん?

 40分後、ビアンカが誰かを捕まえたと言うので合流する事にした。

 最初に合流したグレイシャードが見たのはグルグル巻きの芋虫だった。懐中電灯でその顔を照らして見ると、アーサーやグレイシャードと同年代であろう男だ。

 男は気絶している。


「ニオイを辿って来たんだが、お前が捕まえたのか?」

「そうだよ。その内アーサーとカールが合流しに来ると思う」


 合流に当たってチャットで呼び掛けはしたものの、当然ながらグレイシャードはチャットに参加できないので偶然最初に合流した。


「こいつの持ち物は?」

「この鞄」


 グレイシャードは渡された鞄の検分を始める。しかしすぐに諦めた。


「何なんだこれは? 中を照らして見ても闇に埋もれて何も見えやしない。普通の認識阻害(プロテクト)なんざどうにでも出来るつもりだったがコイツは何も分からん、しかも肩まで腕を入れても何にも触れる事すら出来ないとは理解不能だ」

「ふーん」

「………お前らはこの中身を認識して取り出す事が可能なのか?」

「あたしは中身の確認しか出来なかったよ。この人、相当()んでるみたい」

「ふぅん、では中には何があったんだ?」

「殆ど爆弾でいっぱい」


 それから暫くしてカールが、更に十数分後にアーサーが合流した。男についてカールは面識がなかったが、アーサーにとっては知り合いであった。


「こいつは『"破壊"のリッちゃん』だ。もう何年も姿を見てなかったけど、こんな所で会えるとは思わなかったぜ」

「ああ〜なんか聞いた事あるぜ。敵味方構わず派手に吹っ飛ばすのが大好きだってな。つーかコイツなのか? ビアンカにやられちまうっつーことは、戦闘は大した事ないんだろうな」

「知り合いなのはわかったが、どうするつもりだ? 被害状況は見ただけでも深刻だ。責任は取らせるぞ」

「まぁ古馴染みではあるがとどのつまり、パイナップル畑もリッちゃんの蒔いた種だろうからな。煮るなり焼くなり好きにすれば良いけど、話だけ聞こう」


 『破壊のリッちゃん』ことリチャードは、CBBプレイヤーの中ではサービス初期からの古参プレイヤーである。

 アーサーとの繋がりはフレンド登録をしているだけ、裏切りでアーサー・リッパースターを倒した実績を作ろうとしたり、上位プレイヤーにアーサーの位置情報を売ったり、挙句にハッキングで実際(リアル)の正体を暴こうとした事もあって良い関係とは決して言えない。

 流石にハッキング事件に際してアーサー達の本体(オリジナル)がリッちゃんの実家に凸して拉致ってお話した結果、和解が一応成立したそう。その後、(本体に負わされた)全治半年の怪我でリハビリ中に知り合った看護婦と結婚して子供が産まれてからは長らくCBBから距離を置いていたので、アーサーとの交流は実に5年ぶりである。


『何でキックとかブロックしねーんだ?』

『刺激が足りなかったからかな?』

『何で疑問形なんだ』


 目を覚ましたリッちゃんは、縛られ囲まれている事で観念した様子だったが、その中にアーサーがいる事に気付くと狼狽して命乞いを始めた。


「あ、アーサーさん!? おお・お、オレはただのここの職員で、新入りだけどちゃんと雇われてるんだ! ちゃんとカタギになって更生したんだ! だから命だけは! 昔の事はもう償ったじゃないですかー!!!」

「職員だと? 貴様の事なぞ聞いてないぞ」

「あひ?! 誰ですか?」

「コールロア村の保安官だ。留守にする事が多いがな」

「そう言えばパーカーを着てらっしゃる……あ、だったらお願いします! 助けて下さい! あぐっ!?」


 急に動いたので足で踏んで抑え付けると顎を地面に強かにぶつけてしまった。


「貴様が本当に村から派遣された職員であるならば、村まで護衛を一人付けて送ってやれる。だが貴様、コイツらと顔見知りだって? そんな奴を簡単に野放しにすることは出来ん」

「オイオイ、俺達は犯罪者でもなんでもねえよ?」

「黙れ。要注意集団には違いない。それで"助けて"とは何事か?」

「あの実は……」


 リッちゃんの話す内容を3行でまとめると、

 女だらけの強盗襲来

 全員最下層奥へ避難

 罠で迎撃も被害甚大

という事らしい。

 最初に迎撃に出た警備員はまともに戦うことも無く戦闘不能に追い込まれた。そこで出張ったリッちゃんが得意の罠で返り討ちにしたは良いものの、罪人を縛って連行する矢先に設備が引火してしまい、助けを呼ぼうにも停電で身動きが取れなくなっていた、という話だった。


「返り討ちと言っても死なない程度に吹っ飛ばして生け捕りにしています。こちら側の怪我人は手当てしていて、連中は持ってあと半日は生きているんじゃないでしょうか」

「生捕りか……話を聞く必要があるな。所でどうやって連行するつもりだったんだ? あっちのエレベーターは罠があっただろ?」

「え……確かに向こうは非常用で電源室に用が無い限り殆ど使うことの無い通路です。なので村と直通の搬入用エレベーターを通って向かうつもりでした」

「は? 直通だと?」

「何分機密だらけなので……、でも気を付け下さい。敵はまだどこかに潜んでいる筈です。現に恥ずかしながら不意を打たれて気絶する間際に女の影を見ましたから…………あの、そろそろコレ(・・)外してくれませんか?」


 身を捩って苦しそうに振る舞うリッちゃん。それを冷めた目で見下ろす4人。


「あのぅ……?」

「はぁ? 外せる訳ないだろ」

「えぇ?! 何故!」

「言っただろう。コイツらと顔見知りな奴を野放しにはできないとな」

「いやいや! 顔見知りなんてそこなアーサーさんだけで、他の方は全然……」

「それと、貴様を気絶させた女というのは…」

「あたしだよ!」(`・ω・´)ヌゥッ

「…………」

「……………何か言えよコラ!」ダンッ

「!」ビクッ

「おーおー凶暴だなぁ。強盗団の一味でもこんなじゃじゃ馬はいねぇだろうよ」



「不意打ちの腕もピカイチだ。イヤー強い女は凄いナー」ドクドク

「カールの褒めはイマイチだし、ビアンカも無闇に八つ当たりするんじゃない」

「へーい」ジンジン

「貴様らやっぱり野放しには出来んな……」


 グレイシャードは目を離しはしなかったが、カールが流血する瞬間は辛うじて、しかしビアンカにタンコブができる瞬間は目で捉えることが出来ず、アーサー達に対する警戒を一段と高くする事を心に決めた。

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