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C.B.B.NEW FACE  作者: 怠慢兎
第一章・顔合わせ
27/83

28.( ; x ; )籠もってる…

 坑道の内部は暗く、くり抜かれた通路の側面上方に張られた電線と所々に設置されている電球に、電気が通っている様子は無い。なので懐中電灯の明かりを頼りに進んでいる所だった。

 カールとのチャットでは、配電盤を修理して通電した途端に爆発が起きたと言う。電気が点く事は二度と無いだろう。


「止まれ」


 不意にグレイシャードが立ち止まる。正面には土砂で道が埋もれていた。


「この辺りで地質が変わっているな。もしかすればこの近くにサゾ達が閉じ込められている可能性が高い」


 天井にまで積み上がる土砂を登って調べると、丁度岩の天井が途切れ、その先の弱い地質の天井から崩れたようだ。土質も調べるが柔らかくてサラサラと解れる土だった。


「土くれかー……、ぎゅっと塊にしないと鞄には入れられねーなー……」

「掘るしかねぇな」

「そーだなー」

「待て、まだ調べる事がある」カポッ


 グレイシャードが自身のガスマスクのフィルターを別の種類に交換すると、土砂を()じ登り、天井と土砂の間に顔を突っ込んでくんくんし始めた。


「………モグラ?」

「たぶんガスの臭いを探ってるんじゃないか? 洞窟の奥で爆発すれば、注意しないといけないのが一酸化炭素ガスだからな」

「あ〜なるほど、じゃーつまり九官鳥か?」

「カナリアな」

「掘っても大丈夫そうだ。それにカールの匂いもあった。左の壁沿いに掘り返せ」カポッ


 言われて掘り進むと、爆発で崩れた影響で、扉の枠が大きく凹んだ鋼鉄の扉が現れた。扉の中央にはカールの仕業と思われる槍が貫通していた。


「お〜い、迎えに来たぞー」ガンガンガン!


 ビアンカの乱暴なノックに応えて槍が左右に振れ、ズコッと引き戻されるとカールの声が聞こえる。


「おうご苦労さん、じゃあ邪魔だから傍に退いてくれ」

「けー! 迎えに来てやったのに邪魔だなんてどぅわー!?」


 凄まじい音と共に鋼鉄の扉を蹴破ったカールがのっそり現れる。その後ろにはサゾが松葉杖を突いて立っている。


「応急処置はしたがよ、骨がイッちまってるからちゃんとした手当てが必要だ。医療班かユウの所へ連れて行ってくれ」

「その様だな、エスポール! サゾをキャンプまで連れて行け!」


 エスポールと呼ばれた男は頷くと、自分の鞄から折畳み式の背負子を出してサゾを括り付けると、ヌルッとした動作で坑道を引き返して行った。


「結局一言も喋らなかったな、アイツ」

「それより何で一緒に戻らないの? もう用はないでしょ?」

「帰れば良かろう、ここから先は機密だ」

「えー連れない事言うなよなー?」

「そうだぜ、折角落盤に遭遇して面白そうな感じになって来たってのに、"機密(それ)"聞いてここで帰りゃあ心残りだぜ」

「"機密だ"と言ってんだろ。アーサー、お前の所の躾はどうなって……何をしている?」


 グレイシャードが振り返ると、アーサーは土砂を更に掘り返して何かを探していた。やがてその何かを見つけると、それを放ってカールに渡した。


「何だ? ってうおぉ!?」

「はっはっは、こんな所にパイナップル畑があったみたいだぞ」

「パイナップル?」

「手榴弾だ。扉の傷が気になるから探せば、破片が大量に出てきてな、そいつは不発弾かと思ったらダミーのようだ」

「ケッ、コレ簡単にバラせるぞ。玩具混じりの手榴弾(パイナップル)畑か、幸か不幸か崩落で不発だったが、明らかに警告だな」

「ここで何が採れるか知っている者ならそんなもん仕掛けたりはしない。確実に外部の者が入り込んでいるな」

「あの子の事?」

「違う」

「何故だ?」


 はっきりと否定するアーサーにグレイシャードが訊いた。それに答える代わりにもう一つの手榴弾をカールに投げた。


「暗い中で投げ渡すな。チッ、こっちは本物かよ。あ? "五島戦争"でタンダードが商ってた物かよ、懐かしいなオイ」


 "五島戦争"とは8年前のイベントで、NPCの銃器武装を実装した最初のイベントでもあった。ビアンカとイェンはこれよりずっと後に生まれたので二人はイベント自体を知らない。


「あの子供がイェンより年下(・・)だとしたらこんなもん持ってる訳がねえ。それにタンダードは仲間だからな、身内以外には売ったりもしてねえ筈だ」

「敵の事はあんま覚えてねえけど、あの時あの餓鬼の身内(オリジナル)にでも会ったか?」

「お前がこの前蹴り殺した奴な。さっき思い出した」

「ふーん。いや、ちょっと待てよ、あんな敵味方入り乱れる戦場(フィールド)で敵の事憶えてたのかよ!?」

「まあな」

「他所の戦争(こと)は知らんが、あの子供が関係ないならまあ良い。そんな物仕掛けた馬鹿が他に居るなら確認に行くだけだ。進むぞ」


 一行は、他にまだ埋まっているかも知れない手榴弾に注意しながら掘り、奥へと進んだ。

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