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第二部 四話 ジサツオフ エピローグ

ヨミは勧請院さんではなかった。

私は夜のニュースでそれを知った。

東京で3件、大阪で1件の集団飛び降り自殺を引き起こしたヨミが西新宿に現れた。

今度はビルの上ではなく人が行き交う路上に、ビルとビルの間からフラフラと現れたのだという。


初めは誰も気付いていなかった。

誰かがヨミだ!と叫んでも、ほとんどの通行人は怪訝な顔をするだけだったという。

しかし間近にいた人から悲鳴があがり始め、通行人の一人が車道に飛び出して車に跳ねられた。

それでパニックになった通行人は我先にとヨミの近くから逃げ出した。

そうこうしているうちにもビルの上から人が落ちてきたり、歩道橋から車道に身を投げたり、中華料理屋の店主が包丁を片手に店から飛び出してその場で首を掻っ切ったりして、次々に自殺を始めた。

集団で飛び降り自殺をさせるだけでなく、ヨミはあらゆる手段で自殺させることができる。

そう認識した通行人はいっそうパニックになり、西新宿の路上は阿鼻叫喚の様相を呈したという。


最初に現場に駆けつけた哀れな警察官は若い巡査だった。

テレビで騒がれている謎の女ヨミが目の前にいて、ヨミの通ってきた道には死体が転がっている。

震える声で巡査はヨミを静止した。

しかしいくら「動くな!」と叫んでもヨミは止まらない。

巡査の呼びかけに反応することなく歩いてくる。

恐怖でパニック寸前の巡査の目と鼻の先に人が飛び降りてきた時、巡査は我を忘れてヨミに発砲した。

「ああああああ!!!!」と叫びながらパン!パン!パン!パン!と合計4発の銃弾を発射する巡査の映像がツイッターで拡散した。

彼は殺意があったと認めた。


ヨミが現れて大量の自殺者が出たこと。

若い警察官が明確な殺意を持ってヨミを射殺したこと。

ヨミの死亡が確認され、すぐに身元が特定されたこと。

全てが速報されテレビもネットも騒然となった。

ヨミの正体は一カ月ほど前に行方不明となり、捜索願が出ていた女性だった。


哀れな警察官は罪に問われることになるが、報道もネットも同情的な意見に溢れていた。

みんながみんな思ったからだ。

「もし自分が彼と同じ立場だったら、撃つでしょ?」と。


数十人の自殺者が出たヨミ騒動はヨミの死をもって決着することになる。

ただ一部のネットユーザーはヨミの映像を分析して、それまでのヨミと西新宿に現れたヨミの容姿が若干異なっていると主張している。


第二第三のヨミが現れた時、私達は天道という名を深く憎むことになるのだが、それはまた別の話だ。


第二部 完

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