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第一章 <一学期編>
8/22

青天の霹靂③

<ちょっと訂正です>

前々話(青天の霹靂①)で

『ゴールデンウイーク⇒GW』

に改稿しています。元々ホームルームをHRと表記しているのに、これだけカタカナなのは変な話ですよね。


このサブタイトルはもう少し続きます。お楽しみください。




 あっという間にGWに突入し、生産性のない休日を迎えた。学校からは期間に合わせた課題が出されているが、毎晩コツコツやれば終わらない量ではないし、逆に言えば課題をやる時間以外の全てが学校に縛られない自由時間なのである。

 一週間近くにも及ぶこの大型休暇なのだが、ハッキリ言ってやることが無い。特に趣味がある訳でもなく、目的無しに出掛けるというのも何か違う気がするし。取り敢えず課題をする準備だけでも整えていくことにする。


 学校鞄から筆箱と課題プリントを取り出し、取り敢えず取っ掛かりやすい数学の課題欄から目を通していく。つい最近習った部分の復習がメインらしく、恐らくこの五月末ぐらいから始まる中間考査に向けてなのだろう。

 理系科目は得意だ。答えを導出するまでの道筋が明確に分かるし、パズルピースを埋めていく様な、そんな感覚が味わえるので問題を解くことに苦痛を感じない。文系科目、特に国語や英語などの言語系は、解が一つにならない事にどうしても満足がいかない。何だ『六十字以上八十字以下で述べよ』って、曖昧過ぎるだろ。英語の『百字以内で要約せよ』も本当に曖昧過ぎる。こういう類は本当に苦手だ。



「……ん」



 プリントに意識が向いていると、ベッドの上で充電していたスマホが鳴っているのに気が付く。手に持って通知を確認すると、驚いた事に星条からメッセージが来ていた。



”えっと、急にゴメンね?

その、愛実ちゃんと美月ちゃんの事なんだけどね。どうしたらいいのかなって”



 メッセージの内容はこの間の件についてらしく、この休日も彼女なりに思い悩んでいるようだ。自分の身の回りの関係の(もつ)れだから悩むのは分からなくもないが、余り考えすぎも良くないと個人的には思う。いや、グループ意識の強い女子だからこそなのか。

 最初はどうして自分に相談を、と思ったりしたが、恐らく同じような文面を他の奴にも送っているのだろう。それこそ立石だったり海谷だったり、グループ内で冷静に考えてくれそうなこの二人には真っ先に送って、それから自分にも助言を、といった感じと推察する。

 スマホのロックを解除し、SNSアプリを開く。しかし、いざ返信をしようとするも指がまるで動かない。こういう時、どういう言葉を返すのが正しいのだろうか。



”河野と桝本は、いつかこうなるとは思ってたけど。

正直、仲直りは厳しいと思う。そうなれば嬉しいけど”



 思ったままの事を一度文章に起こし、送信するかどうかで立ち止まる。もう少しオブラートに包むべきだろうか、いや、しかしこれ以上包むと何も伝わらないのではないだろうか、と。

 あれこれ悩む内に数分が経過し、結局このまま送る事にした。この文面で星条が怒ったり傷ついたりしないとは思うが、手探りも良い所なので返信が来るまで妙に緊張してしまう。



”そっか……やっぱり優馬くんもそう思うんだね。”

”私は、二人と仲良くしたいんだけど、多分このままだと無理、なのかな……”



 彼女からのメッセージは二回に分けてすぐに返ってきた。これは、返信としては間違っていなかったという事で良いのだろうか。



「……まぁ、星条の立場はキツイよな」



 もし自分が星条の立場なら。ありもしないIFストーリーを考え、彼女にかけるに相応しい言葉を模索する。きっと今の彼女が欲しい言葉は慰めでも何でもない筈だ。



”星条が二人と仲良くしたいなら、それで良いと思う。

たとえ二人の仲が戻らなくても、それぞれと星条との関係が消える訳ではないし”



 頭に浮かんだままの言葉をスマホに打ち込んでいく。それが何の解決にもなっていない、ただの偽善的な文字列だと知っていても。

 送信してから少しの間、音という音が壁掛け時計の針ぐらいしかなく、一秒間隔で刻まれているそのリズムがどうも自分の心を焦らせているようにしか聞こえなかった。


 もしあのメッセージが問題に対しての解法でも、解消手段でもないと彼女が察してしまったら。通知音が流れるまでのこの静寂が早く終わって欲しいと願う反面、次の彼女の言葉を見るのが少し恐ろしいという二つの感情に挟まれながら、自分は少し遅れて手の中のスマホの振動に気が付いた。



”そう、だよね。私が二人とケンカしたんじゃないもんね。

うん、私は二人と仲良くしたいし、今までと同じように(・・・・・・・・・)接するよ”

”ありがとう優馬くん!! 相談して良かった!!”



 星条はあの文章の無意味さに気が付いたのだろうか。気が付いた上で、『今までと同じように』などというフレーズを選んだのだろうか。

……いや、きっと彼女は分かっていないのだろう。だけどそれで良い、彼女にとっては知らぬが仏であった方が、今回は上手く収まる筈。『零した水は掬えない事』を見なければ、これ以上悲しまずに済むのだから。



「……本当に、酷い奴だな」



 トーク履歴に残された、自分の文章に表情を歪めてしまう。一体どんなピエロ野郎が、こんな上っ面だけのワードを並べたのだろうか。これなら人工知能にでも書かせた方が、よっぽど感情が見え隠れするのではないか。

 ただ一言『お役に立てたなら良かった』とだけ返信し、アプリを閉じようとすると、ポコンと別の通知音が一つ届く。画面に表示されたその内容に、思わず固まっていた表情が緩んだ気がした。



”宿題ヤバそうだから明日勉強会しよ~。正午に俺ちゃんの家集合って事で!!”




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