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第一章 <一学期編>
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変わらない新学年と変わるもの④

なんて事の無い日常回ですね。まぁ、そんなにイベントばっかりの高校生活ってのも、想像し難いですが……




 新学期が始まり、文理分けの授業が始まってからそれなりの日数が経過した。

 あれから特別変化はしていないのだが、他クラス含めて多くの生徒が環境に馴染み始め、休み時間等で声を大きくし始めていた。ただ元に戻っただけなのだろうが、目に見えて分かる変化と言えばこれぐらいである。



「出来るだけ集団で行動するようにな。単独行動は控える様に」



 担任の言葉に、クラスメイトが各々の返事をする。何とも気の抜けた声ばかりだが、しっかり返答しているだけでもマシと言えよう。

 自分は当然声を出していない。どうせ自分が言おうが言わまいが担任には判別できないのだから、無駄な労力は消費しないに越した事は無い。異論は、まぁ認めるが。


 今日は二年生だけ校外学習で、都内の国立大学に見学に来ている。自称進学校あるあるの大学見学だが、我が校でもどうやらそれが行われるらしい。まだどの大学に進学するかなんて深く考えていない自分にとっては、こういう機会を貰えるのは割とありがたい。

 とはいえ、いきなり大学に来て「さぁ学べ!!」などと言われても一体何をどう学べばいいのやら。校舎の造りが綺麗だとか、通路を挟んで木が等間隔に並べられているその対称性の素晴らしさとか……これは建築学科志望大歓喜だな。普通科しかないこの学校にいるか知らないが。



「おーい優馬。愛実達があっちの方行こうってさ」

「あ、うん了解」



 ボーっと遠くの景色を眺めている間に女子達が行き先を決めていたらしく、海谷が手を振ってその事を知らせてくれる。東大寺も零善も既に集まっているようで、居ないのは自分だけのようだ。

 恐らく河野の決定なのだろうが、女子達が決めた目的地は大学内に聳え立つ情報センター。一面ガラス張りでカフェがある一階、オープンテラスのある二階など、学問に専念する大学に存在する建物としては少々華美なイメージを植え付けられる。



「へー、結構オシャレなんだね。アリかも」

「自由に使える空間があるのはありがたいね。集合場所とか休憩とかに使えそうだし」

「一也はまたマジメな事言って……」

「まぁでも? 毎日カフェで集合とかオシャレじゃね?」



 と、先行する三人組が視界に写るカフェの話で盛り上がっている。ただ零善、お前はここに通えるだけの学力を先に身につけてからだ。



「……でもさ、ここって大学内でも駅から遠いよね」

「うん、それにこの辺りって文系棟が多いみたいだから、理系は中々来れないかも」



 立石と東大寺が会話する通り、この洒落たカフェを使うには最寄駅からそれなりの距離を歩く必要があり、理系が基本的に授業を受ける場所から離れた場所に立地されているようだ。最初に渡された学内マップ付きのパンフレットがあって良かった、無ければ今頃「えっ、理系の自分でもこんなお洒落なカフェを使って良いんですか?」と勘違いして実際に突入して、意識高い系文系集団に囲まれて壮絶な一時を体験していたに違いない。あぁ、想像するだけで恐ろしいものだ。


 情報センターの中は人の数に比べて物静かで、何か作業をするのに適した環境が生み出されていた。一階がカフェやATMなどの公共スペース、二階が図書館の受付とオープンテラス、三階より上に図書スペースと無料でパソコンを借りられる情報室、そして情報系の授業を行う会議室等が置かれている。大学生として必要なものはこの一ヵ所に集められているようだ。



「すごい……何か、スマホみたいだね!」

「彩良、それどういう事?」

「あー……またいつもの彩良が出てしまった」



 各々が情報センターに感想を持っている中、いつもの如く同意の得難い感想を残す星条。恐らく調べれば何でもわかるし、金銭のやり取りもできる、ガラス張りの箱という所から連想したのだろう。だがな、星条。確かにスマホにガラスは使われているがメインは液晶だ。

 そんな星条に呆れる立石と桝本(ますもと)美月(みつき)。桝本もグループ女子の一人で、河野とはまた違った気の強さを持つ女子である。河野が女王様タイプなら、桝本はサバサバ系女子といった違いだろうか。


 その後も情報センター内を探索したが、特筆すべきものは無かった。普段パソコンを使わない人間にとっては情報室の凄さを理解できないし、大量の書物が置かれている図書フロアも、「本が大量に置いてあって凄い!!」以外の感想が思いつかない。これ以外の感想を用意できる方、大募集中です。

 あぁそう言えば。一階のカフェもお邪魔したのだが、どうも河野のお気に召さなかったらしく、「これス○バでいいじゃん」と一蹴して去って行ってしまった。幸い店員に聞かれなかったから良かったものの、どれだけ顔を引き攣らせたことか……



「んー、他見るものある?」



 情報センターから出た自分達は、次の目的地を探すべくパンフレットとにらめっこしていた。本来なら校舎等も見て回るべきなのだろうけど、どうも河野的には面白みがないらしく却下されていた。というかこのグループ、殆ど河野主体で動いてる。

 校舎の見学を拒否してしまえば、大学というのは見るものがほとんどなくなってしまう。他に考えられるものと言えば、食堂かグラウンドぐらいだろうか。



「うーん、時間も時間だからね。もう集合場所に戻っても良いかもね」

「なーんか思ってたより面白いの少ないのな。もっと感動すると思ってた」

「恭一お前なぁ……大学は学問を学びに来るところだぞ?」



 完全に一人だけ別の気分で見学に来ている零善はさておき、海谷の言う通り集合時間まで余り時間は残されておらず、今から見学しに行くにもそう遠くへは行けない。



「ま、大学がどんなのか見れたし、もう戻って良いんじゃない?」



 河野のその一言に言葉を返す者は居らず、こうして自分達の校外学習は幕を下ろしたのだった。





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