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第一章 <一学期編>
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変わらない新学年と変わるもの③

流石に今日はこれで最後かなぁ……結構なペースで書いている気がする。

と言っても登場人物紹介が続いているだけなので、何とも言えないですね、、、





 入学式を終えた翌日から、通常授業が始まった。朝のHRを終えるとすぐに移動教室が始まり、理系・文系それぞれに対応した授業が開始される。桐明高校は他校と異なり、理科社会だけでなく五教科全ての文理分けを二年の時から行う。よって二年からは殆ど顔を合わせないクラスメイトも出て来る、と言う訳だ。

 このシステムを知った時は「創立者の考えに合って無くないか?」と疑問を抱いたりしたが、それなりの大学進学率を出そうとすると、早期から文理分けを意識した授業が大事なのだという。勉強と友情に相関は無い、というのが今の学校側の意見なのかもしれない。



「和泉くん、移動しよう」

「ん」



 一日の内の殆ど全てを移動先の教室で過ごす事になるので、基本荷物をすべて持っての移動になる。同じく理系を選んだ東大寺と一緒に荷物を持って隣の教室へと向かうと、教室前の黒板に座席表が掲示されていた。

 大体一クラス四十後半ぐらいの人数が八行六列の教室に一斉に入って来る様子は、某ジブリ映画の滅びの呪文を唱えたくなる。あと少し教室に入るのが遅ければあの群衆に揉まれていたと考えると、ちょっとどころか相当面倒な事になっていた事は想像に難くない。東大寺には心の中で感謝しておこう。



「和泉くんは後ろの方の席だね。僕は前の方だから、誰かの邪魔にならないと良いけど……」

「まぁ、その時はその時だろ。あんまり気にしなくていいんじゃないか?」

「そうだね────あ、先生が来たみたい」



 東大寺の言う通り、ざわついていた教室も例の新任数学教師が入ってきた事で静まり返っていた。新しい先生を前に皆どこまでの態度を取って良いのか分からないのだろう、教師からの一喝が入って漸く授業スタートといった恒例の流れが起こらないというのは、最も身近な人間からすると相当な違和感を覚えてしまうものである。

 先生は教卓に出席簿と教材、チョークケースを置くと教室の一番奥に焦点を当て話し始めた。



「えー、昨日も話があった通り、今日から理系の数学を担当する山沢です。お……自分の方では数学Ⅱの方を中心に扱っていきますが、聞いたところだともう既にある程度進んでいるという事なので、その続きから授業していくつもりです。

授業中で分からない事があったら────」



 昨日と同じく自己紹介を短く済ませ、即座に授業の進め方についての説明に入っていく先生。昨日の時にはちゃんと聞いていなかったが、どうやら山沢先生というらしい。一応これからお世話になる先生な訳だし、しっかり名前は憶えておかないといけないな。



「────という感じです。ここまで何か質問があれば挙手してください、答えますが……」



 山沢先生の呼びかけに、手を挙げる者はいなかった。淡々と話を進めるこの先生に、皆どこまでふざけて良いのか攻めあぐねているのだろう。それに加え、普段と違って見知ったクラスメイトは三分の一程度しかいないので、恐らく変な第一印象をばら撒きたくない、そう言った所ではないだろうか。



「……無さそうですね。では早速ですが授業を始めましょう。軌跡と方程式の単元は終わっているとの事なので、指数対数から入っていきましょう。該当のページを開いてください────」



 結局山沢先生が口を開くまでの間に手を挙げる者は現れず、恒例行事が実施されないまま授業が開始されるのだった。














*────────────────────*





 あっさりと始まってしまった新任教師による授業だったが、授業は思いの外丁寧で分かりやすく、回りくどい話を抜きにしてピンポイントで重要な所を学んでいくような感じだった。宿題こそ出されたものの、あの授業を聞いた後だと不思議と解けそうな気分にさせられる、そんな感じだった。



「山沢先生、教えるの上手いね」

「ん、想定外だったな」

「最初は堅苦しい人なのかなと思ったけど、授業が始まったら意外とそんな事無くて、僕、あの人なら一年頑張っていけそうかなぁ」



 チャイムと共に一発目の授業が終わったすぐ後に、自分の所に駆け寄ってきて感想を述べる東大寺に適当な返事をしつつ、つい先刻の授業を思い出す。山沢先生は確かに教えるのは上手いし、重要な所を丁寧に話を進めてくれるので、自分としても文句はない。無いのだが。



(……何というか、”無駄が無さ過ぎる”んだよなぁ)



 それなりに慣れた先生だとクラス全体の雰囲気に合わせて小話を挟んだりして、全員が授業進度についていけるように調整したり、経験から多くの生徒が苦手そうな単元に入った場合には、独自に練習問題を多く用意してその場で練習させる、そういった小技を取り入れたりする。今日の授業を見る限りだと、山沢先生にはそれが全くない。適度に板書時間や演習時間を設けているのは確かなのだが、それはあくまで標準的な時間配分であって、クラスの雰囲気に合わせたものではなかった。そんな先生の進め方に、自分は心のどこかで引っかかりを覚えたのだ。



(……親近感? いや、そんなまさか)


「和泉くん?」

「ん? あぁ、あの先生の授業は分かりやすいし良いんじゃないかな」

「だよね。僕もそう思ったよ」



 自分と同じ意見なのがよっぽど嬉しいのか、満面の笑みを浮かべる東大寺に微笑していると、その東大寺の背後から誰かが近付いて来るのが彼の脇から見えた。



「あ、あのー」

「あ、彩良(さら)ちゃん。おはようー」

「あ、真くんおはよー。優馬くんも、おはよう」

「ん、お早う」



 大男の脇からちょこんと姿を見せたのは同じクラスの星条(せいじょう)彩良、同じく理系組の小柄な女子だった。自分と東大寺のこの接し方から分かる通り、いつもの八人グループの一人である。

 星条はグループ内では所謂”天然キャラ”扱いであり、偶に脈絡のない言動をして皆の頭の上にハテナを生み出している。不思議ちゃんとして扱われている彼女だが、実際は結構彼女なりに考えて言動している節があり、例えば星を見上げた時に「帰って洗濯しないとなぁ」と口にしたら、それは恐らく


星見(一年の時の彼女の体育教師)⇒体育⇒体育が曜日的に連続しているから洗濯する必要がある


という、彼女の中で二、三回変換された上での発言なのである。と言っても、こんな大変換言われなければ伝わる訳が無いので、彼女の不思議ちゃんキャラは当面払拭される事は無いだろう。可哀想に。



「で、どうかした?」



 下校時こそ同じグループだが、普段は休み時間に歓談するような中でもない彼女がわざわざ自分の所に来たという事から、何かしらの話があるのだろうと察し、話を促すと星条は手に持っていた問題集のとあるページを開いて見せた。



「あのね、さっき宿題で出されたここの問題なんだけどね、ざっと見たんだけど最後の問題だけ解き方が分からなくて」

「もう宿題見たのか、星条は真面目だな」

「えへへ、そんな事無いよ。でね、もし良かったら放課後にでも優馬くんに教えて貰いたいなって思って」

「放課後って……あー」



 問題を教えるだけなら何も自分じゃなくても良いだろうに、そう言いかけた所で俺は漸く彼女がここに来た理由を理解した。

 星条が普段勉強の頼りにしている立石は文系コースで、今日は彼女は部活動のある日。次に頼る河野も文系コースで、もう一人のあては勉強が得意ではない。海谷も文系で今日は部活の日、零善は……お察しの通り。消去法的に自分の所に回ってきたと言う訳か。



「ん、放課後で良ければ。見た感じだけだと多分解けそうだし」

「ホント? よかったぁ、ありがとね!!」



 特に断る理由も無いので承諾すると、星条は嬉しそうに問題集を抱えて自分の机に戻っていった。途中誰かの鞄に躓きそうになっていて、見ているこっちまで少し焦ってしまったが、何とか無事自分の机に辿り着けたようだ。



「彩良ちゃんって、僕が言うのも何だけど、危なっかしいよね……」

「……激しく同意だわ」



 言葉には何かしらの意図があっても、行動からやはり天然が滲み出てしまう彼女を見て、自分と東大寺は苦笑するのだった。




明日投稿するかは気分次第です。

時間があるときにちょこちょこ更新していると思いますので、良かったらブクマやコメントして貰えると嬉しかったりします~

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