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アンダー18  作者: FALSE
第一章 <一学期編>
19/22

運命を導く定理⑨

ちょっとした休憩回。

彼らのお昼休みです。




「いやぁお恥ずかしい所をお見せしました……」



 午前の競技はあっという間に終わり、昼休憩の時間がやって来た。大体四十分程の休憩時間が与えられ、その間に教師生徒含めた全員が自由に昼食を取る。休憩時間内であればドームの外に出てもいいので、近場のコンビニに昼食を買いに行く人もしばしばいるようだ。


 自分達のグループは全員弁当を持参しているようで、男子四人が河野達の近くの席に集まって昼食を取る事にした。弁当を置くような机がある訳でもないので、自然と各々が自分の膝に置いて箸を進める形になった。

 開口一番は星条で、やはり短距離走での事を気にしていたようだった。個人的には短距離走ぐらい、と思っているのだが、流石にそれを包まずに告げるのはストレートが過ぎるだろう。かと言って安直な言葉を投げかけても良いのだろうか、と思考を巡らしていると、彼女の隣にいた河野が一足先に言葉を発した。



「そんなの気にしても仕方ないでしょ。転んだところで大きく変わる訳でもないんだから」



 相変わらず河野は歯に衣着せぬ物言いをする。外部の人間がこの返答を聞けば厳しい言葉に聞こえてしまうかもしれないが、かれこれ一年以上の付き合いにもなる自分達からすれば、それが彼女なりの気遣いなのだと汲み取れる。



「愛実の言う事もそうだし、彩良が怪我しなくて良かったと私は思ってるよ」

「うぅ……梗佳ちゃんありがとう」



 一つ後ろの席に座る立石が彼女の無事を安堵するようなことを言うが、どちらかというと自分の方が心配される側だろ、とツッコみたくなってしまう。捻挫の所為で見学となってしまった彼女は、やはり普段より表情を陰らせてクラスメイトの応援をしていた。



「そういえば、梗佳の出場する分ってどうなったんだ?」



 立石が出場する筈だった種目は、確か自分と同じ借り物競争と部活対抗リレーの二つだった筈。後者はともかくとして、前者の借り物競争は同じクラスメイトで代理を立てる必要がある。当然男子が代理にはなれないので、女子の方でどう話が纏まったのか、というのが海谷の聞きたい部分なのだと思う。



「あぁそれはアタシが出る事になった。

元々200メートルしか走らないし、借り物競争なら最悪走らなくても良いからね」

「愛実が出るのか、意外だったな」

「何よ一也、アタシが代理なのがそんなに変なワケ?」

「い、いやそうじゃなくて、感心したんだよ」

「ふーん……」



 これは珍しい光景でもなくて、普段であれば墓穴を掘る様なことの無い海谷でも河野相手ではたじろぐ事が結構ある。それだけ河野の発言力が強いという事の表れでもあるが、海谷がそういう手のやり取りが不得手であるという風にも見て取れる。このグループに居なければきっと、彼のこんな姿は拝めなかっただろう。



「去年の借り物競争の時に思ったのは、変なお題が多かったな~って」

「あー、去年は彩良が借り物競争だったっけ。彩良は何だったの?」

「うーんとね、確か”違うメーカーのシャーペン三本”だったと思う」

「シャーペンって……何で体育大会に筆箱持って来てる前提なの」



 去年の体験者曰く、借り物競争は体力よりは”運”が必要な種目らしい。お題の物が見当たらなければ一旦その競技担当の運営生徒に言って、別のお題を引き直させて貰えるらしい。運が良ければすぐに見つかるお題を引けて、そうでなければ延々とお題を引き直す、というような事があるらしく、また似たようなお題も結構入ってるとか。



「優馬も借り物競争だったよな。頑張れよ」

「まぁ、程々には」

「和泉くんなら多分大丈夫だと思うよ」

「その自信はどこから出るんだ東大寺……」



 ハードル走で二位とそこそこの結果を残した東大寺に激励されるが、正直不安でしかない。もし達成困難なお題を引いてしまったら、恐らく想像もできない位に焦るだろう。

 ほんのわずか先の自分の状況を危惧していると、ふと視線が立石と交わる。すると彼女は自分に向かってポツリ呟いた。



「まぁ、和泉なら大丈夫でしょ」

「……何故皆してそういう事を……」

「ふふ、多分あんたに分かる日は来ないよ」

「えぇ……」



 立石のその言葉に自分以外の全員が首を縦に振っていた。一体自分についてどんな共通認識を持っているのだろうか。そんなに信頼を得るような何かが自分にあると思えないのだが、何時どのタイミングで発揮されているのか、全く見当もつかない。



「さて、彩良と真は終わったけど、他の全員は後半が本番だからな。

気を抜かずに頑張っていこうな」

「っへ~、ラストの俺ちゃんもしっかり活躍しなきゃね!!」




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