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アンダー18  作者: FALSE
第一章 <一学期編>
14/22

運命を導く定理④

ちょっとしたお話。でも、結構大事なお話。




 零善による独裁政権を味わったその翌日。週に一日だけの体育の授業は、勉強で心身共に疲弊した学生にとっては休憩時間の様に扱われる。授業内容もサッカーをしたりバレーをしたりと、勉強を一旦忘れられるようしっかり身体を動かすスポーツを中心にしている。

 とはいえ体育大会が差し迫っているここ最近では、授業内容もストレッチからのランニングであったりと、大きく体育大会に寄せられたものになっている。走る事自体は別に嫌いではないが、普段のスポーツとどうしても比べてしまいたくなる。



「はっ、はっ……和泉くんは、借り物競争、だっけ」

「あぁ、多分、一番楽だと、思ったからなっ……」

「へぇ、和泉くん、らしいね」

「だから、俺らしいって何だよ……」



 体育はクラスでは無く理系文系で分かれて行う為、隣にいるのは東大寺だけで、海谷や零善はここには居ない。いや、居たとしても海谷はもっと先を走っているだろうし、零善は逆に抜けるだけ手を抜いて走っていそうではあるが。

 因みに東大寺と自分の後ろには伸正がぴったりついて来ているのだが、見た所会話する余裕は無さそうである。今にも倒れるんじゃないかと、心配になる位には息を切らしているが、まぁもうあと数周でランニングも終了するので、ほんの数分の辛抱である。

 男子以外で言えば、女子は半分に分けられたもう片方のグラウンドでランニングをしている。先週まではダンスをしていたと思うのだが、これは完成したとみて良いのだろうか。



「────よな。あと、あの小さい子もイケる」

「星条さんだっけ、可愛いよな。あとおっぱいが、凄い」



 東大寺と短い会話を挟みながら走る事に集中していると、前を走る別のクラスの男子達からそんな下世話な話が聞こえて来る。どうやら男子達の視線の先では星条がランニングしていたらしい。



「あはは、彩良ちゃんの話、みたいだね」

「はっ、はっ……東大寺は、そういう話、苦手だよな」

「う、うん。そういうの、よく分からないし」



 東大寺はこの手の話はどうもダメらしい。誰が可愛いとか可愛くないとか、胸が大きいとか小さいとか、美人だとかエッチだとか、そういう事に対して自分の好みを持っていないようである。

 前に聞いたことがあるが、彼は中学の時もクラスのマスコット的な立ち位置だったらしく、男女から同じように接されていたらしい。恐らくそれの影響だろう、彼の中で男女の境が曖昧になっているせいで、どうしてもそういう”異性として見る”という行為が出来ないようだ。

 この手の話は零善が好きで、去年もそういった話を奴主動で会話していた記憶がある。その時も東大寺は答え辛そうにしていたし、その様子から零善も東大寺の前ではあまりそういう話をしなくなっていた。


 前を走る男子達が言う通り、星条は可愛い部類に入ると思う。どれぐらい可愛いのかというと、クラスの男子達の一部が自称ファンクラブを作る位である。確かロシア人とのクオーター、とか言ってた気がするが、その血筋の影響か見た目は整っている。それに加えて平均的な大きさよりは一回り大きな胸囲となれば、男子の恰好の的になるだろう。

 星条だけじゃない、立石も外見だけで言えば読者モデルにも引けを取らないだろうし、河野も気の強い部分さえ隠してしまえば、男に困る事の無いルックスと言えよう。桝本は可愛いと言われるようなタイプではないが、彼女の場合はその性格の良さで異性関係は上手くいきそうだと、個人的には思っている。



「はっ、はっ……和泉くん、どうかした?」

「ん、あぁいや、何でもない」



 自分のクラス、というよりはこの学校全てのクラスでの話になるが、暗黙の了解として『クラスメイトと付き合わない』というのがある。理由は単純明快で、三年間クラスの変わらないこの学校でクラスメイトと恋愛関係になれば、たちまちクラス中の話題になるし、別れた時もまた然りだから。そして、別れた後のクラスの気まずさの事を考えれば、自然とそういうルールが出来上がるのも当然と言えば当然である。

 ただ、クラスメイト同士で付き合おうとするからそういう気まずさを生み出す可能性がある訳で、そこに考えが至れば視線は自ずと他クラスに向く。前を走る他クラスの男子達は、その事も分かっているからこそ、他クラスの女子に目を向けているのかもしれない。



(……なんか、なぁ)



 別に男女関係なんて当事者たちの問題であって、本来部外者があれこれ口を挟むべきではない。恋愛相談というのも実際ただのマウント合戦だと思っているし、ましてや他人の異性の好みなど気にする必要すらない。だから走り終えてタオルを取りに行った例の男子達が星条の事をどう思おうが、自分には何ら関係ない筈。

 ランニングを終え、グラウンドの端に置いておいた水筒を取りに向かいながら、自分の中に生じる変な気分に首を傾げるのだった。




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