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アンダー18  作者: FALSE
第一章 <一学期編>
12/22

運命を導く定理②

……一体この作者は何時まで起きているのか。

とにかく書けてしまった物はそのまま即投稿します。




 中間テストが終了して数日が経過し、大体のテストが返却された。

 理系科目は人に見せても恥ずかしくない点数だったのだが、やはりそれ以外の科目が中々目を当てづらい結果になってしまった。英語だけはまだ辛うじて学年平均ぐらい取れているのだが、国語と社会に関してはもう思い出すのも嫌になるような感じである。出来ればこれで伝わって欲しい。伝われ。

 数学や理科、英語に関しては間違えた問題をやり直して再提出するというのが毎回のお決まりであり、国語と社会はそれが無い。つまり数学や英語が苦手で点数を取れてない人間は、この時期には再提出ラッシュに追われる事になる。



「あ~もう何でこんなにやり直し多いんだよ~!!」



 見ての通り隣で騒ぐ零善なんかは、まさしく再提出ラッシュに追われる模範例だろう。確か数学のテスト前に海谷に一日みっちり教えて貰っていた筈なんだが、どうやら恩を仇で返したようだ。

 その仇で返された張本人である海谷は、というと、今日は部活の為この場には居ない。居るのは他に東大寺と星条に立石の五人である。



「……立石は部活ないのか?」

「あー、私は今日は休み。体育大会の準備だったりで結構体力使ってるから、顧問が調整しててさ」

「なるほど、まぁ合理的だな」

「体育大会が終わったら次の行事って期末テストで、すぐ夏休みが来るでしょ。

その時に一応陸上の大会もあるから、大きなケガとかしないようにって顧問が言ってた」

「それは気を付けないとな」



 よっぽどの事がない限りは大丈夫でしょ、とこちらを見ずにそう言い切る立石。確かに彼女が何か大きなケガをした所は見た事が無いので、普段から十分に気を使っている事は分かるのだが、そういうフラグを立ててしまって良いのかと言ってやりたい思いもある。



「ちょ、優馬くん~。ここの問題教えて~!!」

「どれ……いや、どこからこんな式持って来たの……」

「いや~、確かこんな感じの事を一也くんから教えて貰ったような気がしたからさ、そのまま、ね?」

「それ海谷に言ったら呆れられるぞ……」

「あはは……時間も限られてるし、恭介くんも頑張ろう?」

「あーマジ彩良ちゃん天使!! よっしゃ俺ちゃん頑張るわ!!」



 星条の言葉一つでついさっきまで死んでいたこいつの顔が復活する。何とも正直な男だが、ここまで清々しい程に単純だと見ていてそんなに悪い気分にならないのだから不思議なものである。

 零善のやっている数学の再提出の期限が今日までなので、皆でこいつの数学のやり直し待ちをしている、というのが今の状態だ。今回の彼の数学の内容は両方とも設問数が少ない証明タイプが多かったようで、教える事は実はそんなに無かったりする。ただ、致命的に分かっていない彼を相手に一つ一つ説明していくのは結構骨が折れる作業で、それなりに数学の出来る他の三人の手を借りつつ、自分達以外のクラスメイトが居なくなる頃に漸く完成させることが出来た。



「いやいやホントあざっす!! もう皆さんには頭が上がんないっすわ!!」

「……何か褒められてるんだろうけど全然嬉しくないし。ほら、さっさと職員室行ってきな」

「梗佳ちゃん冷た~……ま、出してくるから皆は先に下駄箱に向かってて~。ついでに教室の鍵も返してくるわ」



 職員室はこの教室と同じ中央フロアの反対側に位置しているので、零善の言う通り自分達が先に下駄箱に向かっていても、割とすぐに追いつける距離だったりする。

 彼の言葉に頷いた後、自分達は特に何事も無く下駄箱に向かうのだった。







*────────────*





 体育大会が近付きつつあるある日の朝。大型連休の時から密かに続けている『ちょい早め登校』にも慣れてきて、通勤・通学ラッシュ時を割けて登校する日が続いていた。ちょっと早起きしているからか多少の眠気は残るものの、以前に比べて電車内が本当に楽になった。座ることは出来なくても、今となっては壁に凭れ掛かる事が出来るようになった。これが出来るだけで電車通学は本当に変わるものである。

 今日もまた何時ものように快適な登校を遂げ、正門を通って下駄箱に向かったその時。どこか聞き覚えのある声が微かに聞こえてきた。



(この声は……山沢先生?)



 声が聞こえてきた方を見るとそれは一年生が主に使う東棟に続く通路の方からで、東棟の一階には保健室と購買、それと情報室が確かあった筈。売店はこの時間には開いていないし、保健室は一番遠い位置にあるので、一番近い情報室から聞こえているのだと推測してみる。

 下駄箱でスリッパに履き替え、興味本位で声のする方へとすり足で寄っていく。近づくにつれ先生の声だという確証が得られていくのと同時に、どうやら先生は誰かと電話をしているという事も知ることが出来た。



(こんな朝の時間から一体誰に電話しているんだろ。学校に電話をする筈も無いし、左手に指輪が無かった所からも未婚者の筈……普段掴み所の無い先生の事を少し知れるチャンスかもしれない)



 ちょっとした好奇心がどんどん足を進ませ、ついには壁一枚隔てた先に先生がいる、という距離までやって来ることが出来た。ここまで距離を詰めると微かだが先生の会話の内容が聞こえて来る。



「……まぁ、思ってるよりは、な」

「……いやいや、マジで向いてないし苦手なんだって」

「……ああ、早く治してくれ。流石に生徒には()()()()()()()()()()()()()事はバレないけど、純粋に慣れない仕事を続けるのが疲れるからな」

「……ん、あぁ。じゃあまたな。連絡する」



────今、この人は何て言った?

入れ替わり? 一体誰が誰と?


 情報室の隙間から聞こえてきた言葉が、絶対そこから聞こえてくる筈のないフレーズだった事に、自分の思考回路は一瞬どころか数秒、下手したら十数秒近く固まってしまう。

 口調も含めて、本当にこの裏にいる人は自分の知っている山沢先生なのか、と疑ってしまうレベルには理解の追いつかない事が立て続けに起こっていた。そして、その鈍った思考回路は、()()()()()()()()()()()()()()()()事に気が付くにも時間を要してしまった。



「おいお前……さっきの会話、聞いたよな?」

「っ……」



────この日、生まれて初めて全身が凍り付くような感覚を味わった。






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