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Lily〜気高き花〜  作者: 愛菜
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密会

2020年12月24日 18時


予定時刻まであと30分。


正面の舞台に目をやると、漆黒のテーブルクロスで飾られた長机。

ネイビーとブラウンのリボンが正面にあしらってあり、向かって左側には一輪のカサブランカが飾られている。


木目の見える筈の床には、真っ赤な絨毯が敷かれており、私たち報道陣への連絡よりも前から計画されていた会見だと言うことが測り知れる。


煩わしいほどに、彼女への噂が聴こえてくる。


それもその筈、この会場には日本のメディアだけでも500人を超えている。

その上、Giglio Bianco が出店している各国のメディアもチラホラ…。


その大勢のメディアには、入場の際席順が配られた。

私の席は、A−13…最前列の真ん中だ。


なぜこの席に座れているかは理解に苦しむが、こんな好機もまたと無い。

両隣りは本社のあるイタリアの記者だ。

週刊誌の発行元などは、舞台から離れた場所に席を用意されている。

何かしら意図があるように感じられてならない




予定時刻まであと15分。


冒頭に記した友人が各記者へ資料を手渡し始めた。

資料を受け取ろうと手を出すと私の手にメモ書きを一緒に渡す。

周りを気にしながら、二つ折りのそれを開くと…


[5分程お時間を頂けませんか?リリー様がお呼びです。]


と綺麗な文字で書かれていた。

すぐに立ち上がりメモを握り締め出口へ向かう。

追ってきた彼女からのまさかの呼び出し…。

信じられない気持ちの方が大きかったが、彼女の右腕である友人の事は信頼している。


昔から口が固く、よくお互いに相談をした仲だ。


思考が友人との思い出に浸っている所で、本人が昔と違わない朗らかな笑みを浮かべ

「こちらです。」

と案内をしてくれた。


エレベータに乗り、スウィートのある28階までの道のりを進む。


「葵…なぜ俺が呼ばれたのかが判らない。答えられるなら、教えて欲しいんだが…。」


「貴方がリリー様を追っていたように、リリー様も貴方の事を見ておられたのよ。

信頼を置ける人物であるのか…そして、貴方と話してみたいと思わせる程に信頼を勝ち得たと言うだけの話。」


友人…葵に尋ねれば、俺は知らないところで彼女の信頼を得ていたと言うこと。

意味が分からない。

葵の友人だから?


「リリー様は、私の友人だからと信頼する訳では無いの。

それに、貴方はリリー様にもう随分前に出逢っているわ。

私が憧れるよりも前からね…。」


葵の言葉は嫉妬しているかのように聞こえた。


次の言葉を紡ごうとした時、エレベーターが到着した。

このフロアには1室しか無いようだ。

しがない記者の俺にはこんな豪奢な場所へ足を踏み入れた事がない。


葵の少し後ろを歩きながら、‘既に出逢っている’と言う言葉から過去の記憶を呼び起こそうと努力していた。


しかしながら、思い当たる人物がいない…

そして、お世辞にも普通と言えないヤンチャしていた学生時代に連絡の取れなくなった人が1人思い当たる。

けれど、あの人が日本に居るわけがない。

あの人は、別れの際に‘二度と日本の地を踏む事はないでしょう’と手紙に記していたのだから…。

あの人は有言実行。嘘だと思うこともこなしてきた。嘘などつかない。


重厚な扉が開かれると、豪奢で有りリラックス出来そうな大きなソファに姿勢良く座る女性が居た。

葵は扉を閉め、中には入ってこなかった。


女性は純白のマーメイドドレスを身につけ、ダークブラウンの長い髪をハーフアップにしている。


トレードマークのサングラスをかけているが、

この雰囲気知っているーーさんだ。

間違いない。


「ーーさん…。」


呼び掛けるとふわりと微笑みサングラスを外した彼女。


「久しぶりね。時間が限られているから単刀直入に聞くわ。

私の全てを話すから…本にして欲しいの。

貴方にメリットが無いなら、断ってくれて構わないわ。」



きっと鳩が豆鉄砲を喰らうとは、まさにこの事だ。


「え?今まで秘密にしていたのにいいんすか?

それも俺なんかn!!」


最後まで言い掛けて、彼女は俺の口に人差し指を当てた。


「‘なんか’ではないわ。貴方だからお願いしているのよ。」



彼女の言葉には昔から魔法が宿っていると思う。

私は二つ返事でお受けし、会見後彼女の自宅へ訪問することが決まった。


会見会場へ戻るとピッタリ5分しか経っていなかった。



予定時刻まであと5分。


舞台下の向かって左側に葵がスタンバイした。

ガヤガヤしていた会場がより一層騒がしくなる。


こんなに騒がしくて会見など行えるのだろうか?


俺は、会見の全てを残さなくてはいけない。

彼女との話を実現するために…。


ボイスレコーダーをオンにしパソコンの横へセットする。

一緒に来ているカメラマンにはこの後の予定をなんと話そうか…。


まあ、なるようになるよな。


だって彼女だもの。


如何様にもしてくれる。


彼女は、‘龍姫’であり‘龍妃’

‘守るべき存在’であり‘護ってくれる存在’

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