「三対一」
~~~フルカワ・ヒロ~~~
俺、レイン、アールVSカーラ。
三対一の戦いは、カーラの先手から始まった。
──キン!
一歩踏み込んできた──と思った瞬間、カーラの長剣が鞘走った。
長剣の抜きと鞘の引き、身体の回転も含めた超高速抜剣術。
音が鳴ったと同時に物が斬れ落ちることから『音鳴の剣』と称されるそれが、中央に立っていたアールに向かって真っ直ぐに放たれた。
「──くっ?」
アールはこれを、手にしていた戦鎚で受け止めた。
が、凄まじい剣圧でもってそのまま後ろへふっ飛ばされてしまった。
「……勇者様!」
「……わかってらあ!」
三対一でも怪しいのに、二体一じゃなおさら勝てない。
俺とレインはアールが戦場へ復帰するまでの間の時間稼ぎをすることに決めた。
「『曲走』!」
「『曲走』!」
俺が左へ、レインが右へ。左右二手に分かれて走り出した。
それぞれがカーラの斜め後方をとる。
カーラが直進してアールを狙うなら後ろから奇襲をかける。
俺とレインのどちらかに狙いを定めてくるようなら、互いが互いの援護につく。
「……いい連携だ」
俺たちの意図に気づいたのだろうカーラは、長剣を鞘に納めず前に走ると、大上段に振りかぶった。
膝をついた状態のアールにとどめを刺すつもりだ──
「……そっちで来たか!」
「……にゃろう! させるかよ!」
俺とアールはただちに『曲走』をキャンセルすると、すぐに次の技に入った。
「『閃光!』
「『疾走』!」
俺がカーラの右後背から小剣を構えて突進し、レインが左後背から風啼剣を構えて突っこんだ。
が──
「だが……まだ青い」
余裕たっぷりにつぶやいたかと思うと、カーラが左へステップを踏んだ。
大上段に振りかぶっていたはずの長剣はいつの間にか鞘の中にある。
このまま突っ込めば、レインが思い切りカウンターを食らう体勢──
「……げげっ!?」
「『風よ啼け!』」
レインが力ある言葉を発声したかと思うと、直後に発生した突風に乗って俺へと体当たりをしてきた。
──キン!
わずかに遅れて放たれたカーラの振り向きざまの一閃が、つい先ほどまでレインのいた空間を横薙ぎに薙いだ。
「……ぐえ!」
「ごめんね? 勇者様!」
下敷きになった俺の上からどくと、レインは即座に立ち上がり、風啼剣を構えた。
すかさず追い打ちをかけてきたカーラが、大上段に振りかぶった長剣を一閃。
これをレインは、十字に交差させた風啼剣で受け止めた。
「うぐぐぐぐぐぐ……っ!? ち、力強い……っ!?」
そのまま押し斬ろうというのだろう、カーラが思い切り力をこめ、レインがこれを顔を真っ赤にして耐えている。
「頑張れ! 負けるなレイン!」
小剣を拾った俺が援護に回ろうと走ると──
「『魔女の強打』!」
カーラの横合いから、アールが思い切り戦鎚で殴りつけた。
「……ほう、なかなかしぶとい!」
カーラは大きくバックステップを踏んでこれを躱すと、感心したような声を出した。
「だが、しょせんは付け焼き刃の連携。それほど長くはもつまい」
俺たち三人を均等に見据えるような位置に陣取ると、再び長剣を鞘に納めてわずかに身を沈めた。
「うええ、こいつマジかよ……」
「つっよ……」
「……化け物め」
俺たちは口々にボヤいた。
いやマジで、この人いったいなんなの?
一撃一撃がデカくて速くて、かつ後ろに目でもついてるぐらい隙が無いとかどうゆーことなの?
たぶんみんな、そんなことを思ってた。
だけど──
「……なあ、次どうする?」
「変わらず、でしょ。距離をとって三人で相互に連携をとる。一対一で叶わなくても、三対一なら勝てるよ、絶対」
「うむ、そうだな。まったくの絶望というわけではない。猛攻を凌ぎ、一度は退かせた。これはデカい」
だけど俺たちは、前向きにこれに対した。
決して諦めず、絶望せず、勝つことだけを考えた。




