「レインの告白」
~~~レイン・アスタード~~~
──んでさあ……わかるかよ!? その権利ってのにはさあ! 自由ってのにはさあ! 好きなコのために生きる権利と、死ぬ自由もあるんだよ! それは永久不変で! 誰にも取り上げられないもんなんだよ! いやいやいや、今まさに俺が具体的に誰を好きとか、そうゆーのがあるわけじゃないぜ!? あるわけじゃないんだけど……でも! このコは死なせたくないなとか、俺はともかくとしてこのコには生き延びて欲しいなとか、そうゆー気持ちはあるんだよ! ふつふつ湧いてくるんだよ! 動かしがたいものなんだよ!
勇者様のその言葉は、ボクにとって予想外のものだった。
初めて聞いた、そうゆー話。
誰が好きとか、そのためにどうしたいとか。
死の瀬戸際になって溢れ出て来た、勇者様の本音、勇者様の男の子な部分。
「へっへっへ……」
ボクは笑ってしまった。
顔が赤くなって、体が熱くなって、笑みがこぼれた。
「えっへっへっへ……」
おかしかったんだ。
と言っても、勇者様のことがじゃないよ?
おかしいのはボク自身のこと。
だって、ボクは思ったんだ。
勇者様が思う、自らを犠牲にしてでも生き延びて欲しいなって女の子。
それがボクだったらいいなって。
アールでなくて。
ベラさんでもなくて。
このボクだったらいいなって、思ったんだ。
「……あーあ、おっかしいね」
目の端に浮いた涙を拭いながら、ボクは言った。
「まさか、こんな状況で気づくなんて。もっといい雰囲気の時だったらよかったのに」
認めよう。
もう、認めるしかない。
「……あのね、勇者様。ボクはね?」
けれどまだ、恥ずかしいから──
誰にも聞こえないよう、小さな声でつぶやいた──
「キミのことが好きみたいだ」
つぶやくと、かっと体が熱くなった。
体の底から力が湧いてきて、居ても立っても居られなくなった。
だけどもちろん今は傷の治療に集中しなきゃだから、ボクは深呼吸して気持ちを静めた。
頭の中でカウントダウンを始め、自らの戦線復帰のタイミングを、ジャカとパヴァリアを刺すべき最適のタイミングを計り始めた。
──傷の回復まで、あと60秒。




