5 シロ
どうしてこうなってしまったんでしょう。
揺れる檻の中でこれまでの悲劇を嘆いた。
突然でした。
そいつらはシロ達親子を突然襲った。
こうしている今でもあの嫌な臭いを思い出して吐きそうになる。
母上から聞かれていた。
白狼族は一部の悪い人間に狙われやすいって。
強い魔力と美しい髪。
いろんな使われ方をするって、道具としてしか見てないって。、
でも、それまでずっと大丈夫だったし、その日も秘密の場所で母上に綺麗なお花を持って帰ってあげれると思ってたのに……
村までもう少しというところから見た村の風景は、いつもと違った。
いつもなら御飯を作る煙が上がっているハズの煙突からは、真っ赤に燃える炎が上がっていた。
近くまで走って、それをやっているのは人間だと気づいた。
村の大人達はどうなったのだろうか。
見つからないようにして家に戻ってきて、やっぱり家も燃えていて、家族の誰も見当たらなくて、何も考えられなくて一人で泣いた。
妹達は? 母上は? 父上は強いから大丈夫だよね?
どうしたらいいかわからなくてただただ泣いていら、いきなり頭にすごい衝撃を受けた。
「ヒュー、逃げてやがったか隠れてやがったか、目当てが見つかってよかったぜ」
「さすがだな。他にも収穫はあったし、そろそろずらかるぞ」
そんな声が聞こえて、意識は闇に沈んでいった。
気が付いたらどこかの港で船へ運び込まれるところでした。
檻に入れられて両手足を鎖で繋がれていた。
魔力が使えないような仕組みなのか、まぁシロには魔力なんてないんですけど。
目的が魔力を奪うことなのか、鎖自体がある程度余裕のある長さなのはありがたかった。
周りを見ると村の何人かが同じようにされていたが、それぞれ別の船へと運ばれてしまった。
家族の姿はなかった……と思う。
逃げることは出来たのかな、逃げていてほしいな。
涙が止まらなくて、気が付いたらまた眠っていた。
次に目を覚ましたのは船の揺れのせいでした。
化け物が出たといいながらドンドンと走る甲板からの足音が聞こえた。
何かの間違いで檻から逃げられないだろうか。
というか船が沈められたらどうしよう。
檻から出られなくてシロは死んでしまう……。
怖くて顔を埋めて泣いていると女の人の声が聞こえた。
「ごめんね。もうちょっと怖い思いするかもだけど、絶対助かるから」
その人の顔を見ようとしたけど、見えなかった。
それから島に上陸するのが見えた。
どうやって運ばれているのかわからなかったけど、湖が見える位置で置いてけぼりにされたみたいです。
次第に辺りは暗くなっていく。
あの人の言葉を信じるなら助かるんだろうけど、お腹が空きました……。
それから少しして、湖から大きい龍が現れたのが見えた。
父上にこういうのもいると聞いたことはあったけど、ほんとにいたんだ。
そんなことを思ってると、そいつの尻尾で檻を叩かれた。
まわりの木がなくなるぐらいに何度も何度も繰り返し叩かれたが檻は壊れなかった。
でも、怖くて怖くて仕方がなかった。
シロは白狼族なのに魔力が使えない。
檻が壊されてしまうとなんの抵抗も出来ずに殺されてしまうでしょう。
父上、母上、助けて……助けて……っ。
そんな思いを声にしたか頭で思っただけなのかは覚えていないけど、とにかく助けてほしかった。
そして、何度も繰り返された攻撃が突然止まった。
諦めてくれたのだろうかと思って顔を上げて、見なきゃよかったと後悔した。
今までバラバラに叩きつけていた尻尾を束にして一本の巨大な尻尾にしていた。
周りの景色が歪んで見えた。
魔力を使えないシロでもわかるぐらいに、あの尻尾全体にすごい魔力が籠ってる。
ある程度の耐久がある檻だったとしても、あんなので檻を叩かれたらまず耐えられない。
魔力のことをあまり知らないシロが見てもそう感じてしまうような魔力でした。
無慈悲な一撃が迫ってきて、もうダメだと思った。
「助けてよぉ……」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
自然と口にした言葉と別の声が聞こえたことに対してか、その人が攻撃を受け止めたことに対してか、とにかく──私は何が起こったのか理解出来なかった。
白くて大きいその人はまるで……。
「父……上……?」
ボーっとした頭でシロはそんなことを口走っていた。
その人は父上のように強かった。
ヤツマタの攻撃を受け止め、倒してしまった。
「すぐ戻ってくるから、ちょっと待っててくれないか」
その言葉に返事をしたら、その人は消えてしまった。
……一体なんだったのだろう。
今でも信じられません。
あれほど大きくて強い龍を一人で倒してしまうだなんて。
それに人間なのにシロを助けてくれて。
人間は酷いことをする種族なのに……。
シロの頭で頑張って考えてみるけど……ダメ、わからない。
ここにいる状況もだし、さっきの人が私を助けた理由も全然わからないです。
……ハッ、あの人にひどいことをされてしまうのでしょうか!?
い、いやでも助けてくれたんだしもしかしたらいい人間かもしれないから……そんなわけないか。
魔力もなく、体も貧相な自分を顧みてはぁとため息をつく。
というかシロが白狼族だから、それが目当てなんだろうな。
他にも考えてみるが、やっぱり人間がシロを助ける理由なんて他に見当たらないですし……。
またどこかに連れていかれるのでしょうか。
結局また船の中にいた時と変わらない気がしてきた。
途中女の人の声で大丈夫と聞こえた気がするけど、きっとあれも夢か何かだったのだろう。
あの時村を襲われて、シロの運命なんて決まっていたのかもしれない……
「お腹が減りました……」
足を抱え込むように座り、顔を埋める。
どうせだったらひどいことをされる前に死んでしまった方が楽なのではないか、そんなことをグルグルと考えていると自分の中の暗い感情がどんどん大きくなっていって……その人は戻ってきた。
大きいな体に白いコート。
さっきと同じ格好だったけど、手には荷物を抱えている。
……こっちを見ている。
一直線に、品定めをするようにシロを見ている。
途端に先ほどの考えが頭をよぎる。
ひどいことをされてしうのか……体が震える。
怖い……。
その人間がこちらに近づこうとして、どうしても口から出てしまう言葉を止めることが出来なかった。
父上を真似して、精一杯気丈に捲くし立てて睨みつけるが、涙が止まりそうになかったから背を向けるしかなかった。
もう嫌だ。
嫌だ……。
でも、また暗い底に沈んでいきそうな私にかかった声は予想外なもので、次々に檻の前にご馳走が並べられていった。
最後にお湯を入れたら戻ってくると言ってまたその人はいなくなってしまった。
ご馳走を残して!!
い、いい匂いが止まらないッ!
こ、これはシロに食べて良いということでしょうか。
幸いにも鎖が長いので手を伸ばせば余裕で届きそうですし。
いや待て。
きっと何かの罠に……あぁ、でもこの匂いはいけない。
いけない匂いですし……。
そっ、そうです! 仮にです!
仮に毒が入っていたとしても、多少の毒なら抵抗があるから耐えられるし、それにこんなにもおいしそうなものを放置するというのは、それは食べ物の神様に失礼なことですし!
そうっ、シロはそんな失礼なこと出来ない良い子ですし!
だ、だからこれは食べるしかないですしッ!!
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