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ぼくは力一杯戦った。視界が滲む。涙が止まらなかった。
敵はボス。戦い馴れた相手。何度も戦ったし、何度も勝ってきた。だからぼくはそう簡単には負けないよ。一対一ならね。
今、敵はたくさん。ぼくは独り。わかってるよ、勝てるわけないって。戦うなんてばかだって。
でもね。
ここはゴブリンの村。ぼくの村なんだ。
ぼくが負けなら、諦めたら、この村がなくなっちゃう。ゴブリンの村じゃなくなっちゃうんだ。
怖いよ。
勝てる気が全然しない。きっとぼくは負けちゃう。
負けちゃったら、どうなる?
ボスならきっとぼくを食べる。こんなにいるなら、ぼくは骨まで残らず食べられちゃうかな。
怖い。怖いよ。
ぼくは恐怖に震えた。涙が止まらない。
それでも、ぼくは戦い続けた。
出て行ってよ。ここはぼくの村。ぼくの住処なんだ。出て行ってよ。取らないで。
取らないで。 ここだけなんだ。ぼくのたったひとつの場所。
ここにだけ、ぼくの、顔も知らない親の匂いが、あるんだ。
大切な場所なんだ。




