⑳
痛いよ! 怖いよ! でも負けない!
ぶぃんぶぃんとうるさいよ! でも負けない!
ぼく、まだ死ねない!!
ぼくは歯を食い縛ってちくちく攻撃してくる敵に立ち向かう。
この敵は前にぼくを捕まえて来た空飛ぶやつ。
尖った口と硬そうな身体に、ぶぃんぶぃん動く羽がある。
こいつと戦うのはぼく初めて。
強いよ! はっきり言って、凄く強いよ!
とにかく硬くて、ぼくの攻撃が全然効かない。
だいたい、飛べるから届かない高い所に行っちゃうことが多くて、当たらない! ずるぅい~~!
その上、やつの攻撃は凄く痛い。尖った口も細長い手足も、急降下と共に突いて来る。速くて鋭くて、ぼくは避けるので精一杯。
どうしよう。恐いよ。
ぼく負けちゃうかも。
負けたらぼく死んじゃう? ――うん。こいつの目、ぼくは餌認定だね。恐い。
でもぼく、まだ死ねないんだ。
だから負けない。諦めない。
ぼくは痛む身体を必死に動かした。
どのくらい経ったかな。
武器を持つ手が汗や血で滑る。力の入らない足が縺れて倒れる。急いで立とうとするけど、立てない。慌てて武器を持ち直して振り上げる。けど、腕が上がらない。
ああ、もうだめかな。目ももうあまり見えない。耳もおかしいのか、ぶぃんぶぃんと羽の音も遠く聞こえる。
もうだめなのかな。
でもぼく、頑張ったよね。
もう諦めてもいいかな?
ぼくは静に目を閉じる。
つもりだったんだけど。
あれ? 羽の音が本当に遠くなってく!?
え? どんどん遠くに飛んでってるよ!?
どうなってるの???????
ぼくは薄暗い空を飛び去る敵を茫然と見送る。
あ、もう日が暮れちゃう。




