旅立ちの刻
この話のオススメ曲(読みながら聴く事をオススメします。)
kyo - God Ray
俺は、車に轢かれてあっけなく人生の幕を下ろした。 17歳で。
死後の世界は全く信じて居なかったのだが、どうやらあるらしい。
今、ギリシャによくある神殿みたいなとこに居る。
「・・・ん?」
自分の死を、簡単に受け入れる事が出来た自分にビックリだ。
・・・そこには看板があった。
『天国に行きたい方は右、地獄に行きたい方は左、夢世界に行きたい方は真っ直ぐ進んでください。』
こう書かれていたのだ。
自分は何となく天国と地獄については予想できているのだが、『夢世界』という物は、初めて聞いた。
その聞き慣れない単語に興味を示した俺は、神殿を真っ直ぐ抜け、進んだ。
その先には、大きな門があった。
その門は、先ほどの神殿よりも遥かに大きく、立派な物だった。
そこには、紫色の服を着た老人が立っていた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
俺は、挨拶を返した。
そして、老人は俺を怪しげな顔で見つめ、こう言った。
「夢世界に行きたいのか?」
「はい、少し興味があって...貴方は誰ですか?」
素直に言った。
「ああ、儂か。名をネイチャーと言ってな。夢人だ。」
「しかし若造、夢世界は大変だぞ。」
「何があるんですか?」
「ああ...」
老人は口をつぐんだ。
間。
「夢世界にはな、我ら夢世界に住む住人、夢人を大量に殺戮する兵器が入り込んでいてな。」
「その『夢人大量粛清兵器』に夢世界は潰されかけておるんじゃよ。」
「はぁ...ネイチャーさんは何故此処に?」
「私には実体は無いよ...君もだ。同じ死んだ身じゃ...儂も、『奴ら』に殺されて、この門に居る。」
「夢世界にはな、優しい王が居ってな。『界王』と言うんじゃが、当時は儂と良い仲でな。」
「ある日、二人で街に遊びに行った時にな、異形の化け物が襲ってきて、界王は喰われた。」
「儂は、命からがら逃げ切ったが、別の形をした化け物に殺された。」
「夢世界は...今...存亡を懸けた最終決戦に挑んでいるのじゃ...」
「儂には、どうにも出来んが、若造なら分からんな。」
「夢世界に行きたいのじゃろう?」
「はい。そう思っています。」
危険を承知の上、そう言った。
「あっちの世界に、安全に着く事が出来たら、あっちの『次代の界王』にこれをやってくれんか。」
老人は、焦げた玉を取り出した。
「これは、力を持った実力者、界王が持てる物だ。これがあれば、儂が先代の旧友だった事が分かるじゃろう。あっちの界王は17だったか...赤ん坊の頃に一回見たが、蒼い眼をした子だったな。渡してくれないか、頼む。この通りだ。」
老人は、深々と頭を下げた。
「分かりました。行ってきます。」
もう行く決心は出来た。
「君に、世界を救う力がある事を強く望む。」
老人は、その巨大な門を、玉の力で開き、こう言った。
「頼んだぞ。お前が救世主だ。」
「では、行ってきます。」
「ああ。」
不安より、期待のほうが大きかった。