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魔法は続く

 あれから何日も平凡な生活を送り、あれも夢だと言い聞かせてそれに慣れてしまっていた。


 何かこの頃子供たちが賑やかだ。4人が一緒になって遊んでいるのか、喧嘩しているのか、とても賑やかなのである。

 妻に尋ねると、こんなことが話題になっているらしい。


 2番目の姉のゆきえは絵が上手で家族を題材にしたマンガを描いている。

 兄のひでまさをモチーフにした未来のねずみ星から来たひでねっぴーが家族を巻き込んで騒動を起こすマンガだ。そのマンガのお兄ちゃんはいつも情けない主人公なのである。そのことは良く知っているが、そのマンガに自分が知らない不思議な事が起こっているらしい。


 ゆきえが描くマンガが未来を予言するという。全てではないが予言は当るらしい。ゆきえも全部を意識して描いているわけではなく、ある部分だけがどうしもそうなってしまい、ゆきえも良く分からないまま楽しいから描いて家中が賑やかになっている。


 その予言にもルールがあるそうだ。皆が良くはならなくて、その日、その日と誰をラッキーで誰をアンラッキーにしなければ効力がないので、それで子供たちが騒いでいるという。

 ほとんど喧嘩ばかりしてるひでまさがアンラッキーでそれに弟のとしなりが追随している。パパのラッキーは多くが日曜日で余り占いに関係ない日が割り当てられている。

 私も子供たちの輪に加わった。


 ゆきえが踊るようにマンガを見せびらかせて皆に報告した。


「今日はお兄ちゃんがアンラッキー!」

 それを見てお兄ちゃんが怒り出した。

「昨日あんなに頼んだじゃんか。今日はバトミントンの試合なんだからってさぁ。」

 それにゆきえが冷たく答えた。

「ちゃんとお兄ちゃんいるじゃん、洟垂らしてさ。でもお兄ちゃんは万年補欠なんだから試合に占い関係ないじゃん。だから今日はお兄ちゃんがアンラッキー!」

 お兄ちゃんもゆきえに描き直せと食い下がるが、ゆきえは聞かない。それをママがなだめて皆を納得させている。それがママの当り前のような役割で、いつもこういう具合であるようだ。


 私はゆきえのマンガを見て可笑しさを堪えられないでいた。洟垂れのお兄ちゃんが、ラケットを両手で抱えてポカンと口を開けている。


 そんなこんなで家族が揉めている中、ゆきえがもう煩いと言って大声でゆりを急かした。

「ゆり、早く言え。」

 それに応えてゆりが言葉を放った。


『止まれー!!!』


 ちょっとした時間だったが、皆が止まってマンガの絵だけが動き出した。時間が動き、マンガが子供たちの知らぬ間に予言したのを確認して大騒ぎになった。


 お兄ちゃんがバトミントンの試合に出ている。


 ゆきえはマンガが未来を予言したのを見て、マンガを右手で掲げて小躍りしながらくるくる回って喜んで叫んだ。

「今日はお兄ちゃんがラッキーじゃん。お兄ちゃんやったねー!わーい、わーい。」

 お兄ちゃんはビックリしてキョトンとしている。


 これが未来を予言するマンガのトリックであった。


 私はゆりを見て、間違いなくあの時のゆりであると確信し、今初めて胸を撫で下ろした。

 ゆりは未来の記憶を失くしてしまっているが、間違いなく10年未来を見て来た。そしてゆりには1人で未来にいた5年間の魔法の回数が隠されている。その魔法とゆりの体が知る未来がマンガの未来を動かしているのだろう。


 魔法に架からない私をゆりの体は感じている筈である。あの時のパパであると。

 忘れていたが腕時計の腕輪の欠片もポシェットの中にある筈である。


 ちなみに後で知った話になるが、お兄ちゃんのバトミントンのあの試合は、当日レギュラーの2人が発熱で急遽欠場になり、何とかお兄ちゃんに出番が回って来たが、一方的に負けたらしい。


 ゆりが私を見て大きく口を開けて笑った。

「エッヘッヘ・・・」


ー完ー



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