エピローグ 魔王なのにまるで勝てる気がしない人たち
ダメでした、2話投稿できませんでした、スイマセン。
と言うわけで、今日エピローグを投稿です。
第一章はこれにて完結です、第二章は何時になるのかは不明です。
他の作品とかあったりしますんで…イヤ、別に新作の事なんて考えていませんよ?
感想にBLっぽいとかあったんで『BLかぁ』とか考えていませんから。
そ、それでは皆様、第一章エピローグです、どうぞ。
魔獣大侵攻が終結して1週間の時が流れた。
戦いよりも事後処理の方に時間が掛かるとは思ってもいなかった俺は、王宮ではじめて着た礼服で応接室の中を行ったりきたりしていた。
王宮からの召集令をかけられ、更には金は出すから礼服で来いといわれたのだ。
どうやら俺は地竜を倒した功績で勲章が贈られるらしい、エルライドにも貰ったんだが、それとはまた違い王宮で王様直々にとの事だ。
だったら俺以外のダニエルとかフラウ爺さんとかも貰ってもいいと思ったんだが、辞退したらしい、俺が帰ってくるまで戦線の維持をしていただけで、大した役に立っていないから、というのが理由だそうだ。
あの2人はエルライドから貰った勲章、そして報酬だけで十分だそうだ、フラウ爺さんはあんまり嬉しくなさそうだったが、勲章はもう腐るほど貰っているらしい、置き場に困るとかどんだけだよ。
しかもアッキーは俺に功績を押し付けて俺の家で大人しくしている、その内ソラージュ王国を巡る旅に出るとか言っている辺り、武者修行でもするのだろう。
それにしても服がきつい、前世のスーツを彷彿とさせるこの礼服はいつも着ている黒装束と違って動き難いし息が詰まる、最悪だ。
「―――ユーリ殿、用意が整いました。
入来の御準備を」
「……はい」
案内の侍従が応接室にやってきた、どうやら時間のようだ。
こんな堅苦しい場所に来ない為にエルライドの裏でコソコソしていたかったんだがなぁ。
まぁ、これもエルライドについていく為の代償というやつなんだろう。
また面倒な事に巻き込まれる予感がしてならないが、諦めるしかないか。
■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■
魔獣大侵攻が起き、それが終息したとの報が来ると、周辺貴族たちはこぞって王都へとやってきていた。
彼らは終息した後に何があるかという事を予期していたのである。
すなわち、この魔獣大侵攻を終息させた一番の功労者を称える為の式典である。
本来王都にいない筈の貴族たちの殆どが参集している辺り、貴族としての資質の高い者ばかりである。
これが全てエルライドに次期王として望む貴族たちなのだと事前に報告を受けていたユーリはエルライドのカリスマ性にまるで自分の事のように喜んだ。
「ユーリ・ミツミネ殿のごにゅうらーい!!」
謁見の間から現れたのは、世に言う所のハーフエルフの少年だった。
『混血』という事を除けば将来は誰もが羨む美青年となっただろうユーリに一部の貴族たちが色めき立っていた、世の中には変態的な者が数多くいる事がこの場で証明されたようである。
緊張した様子もなく謁見の間を歩いていき、指定されていた箇所に跪いた。
内心で『王様の臣下じゃないのに跪かないといけないのかよ、ったりぃ』と口汚く面倒くさげに呟いているが、表情にもおくびにも出さず、ただ無表情を維持していた。
「国王陛下、ガイネス・ウル・ソラージュ陛下がおいでになります。
皆様、静粛に」
侍従長アドリスの声が謁見の間に響くと、それまで若干騒がしかった場が一気に静まった。
ガイネスがやってくると、侍従、配備されている近衛騎士以外の全ての者が跪いた。
ユーリはさっと見てみると、フラウがガイネスの隣に、その反対側には宰相アルザスが立っている。
どちらもガイネスに負けず劣らずの風格を備えていて、このソラージュ王国に長く使えているという自負があるのか、その両眼は衰えてなお炎のような強さが燈っていた。
そしていると思っていた第二王子であるエルライドの姿がない事に若干の驚きを感じたユーリは、あとで呼ばれているという事もあり、その時に聞く事にした。
ユーリは知らない事だが、この場にいられるのは成人した貴族以上の者、そして式典に呼ばれたユーリだけなのだ。
成人をしていないエルライドが参席出来ないのは当然であった。
「一同、面を上げよ」
ガイネスの言葉により、ユーリ以外の者たちが立ち上がって礼をする。
ユーリは自分が呼ばれるまで辛抱強く待つ。
跪くという慣れない行為に精神的な苦痛があると思ってもいなかったのか、次第にストレスが溜まっていくのを感じていたユーリは、『早く呼んでくれ』と祈り始めていた。
つらつらと貴族たちが今回の魔獣大侵攻が終息した事に喜びの挨拶をしていき、そして式典が始まる。
「ユーリ・ミツミネ、面を上げよ」
「はい」
今度はガイネスではなく、アルザスが功労者の名前を呼び、ユーリは短く答えた。
アルザスは能面の様な表情をしたユーリに一瞬驚いたが、まるで気付いていなかった顔をして言葉を続けた。
「此度の魔獣大侵攻で貴殿は過去討伐された例の少ない地竜を討伐された。
これは快挙である、よって貴殿に銀十字一等勲章を授与するものである」
「謹んで、お受けいたします」
粛々と答えたユーリは、急場で覚えた礼儀作法が間違っていないか何度も思い出しながら不自然にならないよう注意して勲章を受け取った。
銀十字の勲章は過去他国との戦争において比類なき武勲を打ち立てた者だけが手にする事の出来るソラージュ王国でも3本の指に入る栄誉ある勲章である。
他にも文化系、魔法系の勲章もあり、この銀十字は戦争系に属した勲章でもあった。
とはいえ、これは魔獣との戦争な為、この勲章しか適応するものがなかったという事もあり、人同士の戦争以外の銀十字の勲章はソラージュ王国でユーリが初となる快挙でもあった。
ユーリはエルライドから既に銀十字二等勲章を授与されているとあり、これが既に布石だったのだと思わず納得してしまうのであった。
開始して1時間程で式典は終わると、今度は別件で式は続いていく。
ユーリが討ち取った地竜の素材の買取である。
過去地竜が討伐された際、その素材を巡る小さな争いが起きたほどに、地竜という存在は希少価値の高い素材となったのだ。
特に心臓でもある魔核は魔道具である魔石に精製する事になる為、その需要は天文学的な価値となるだろう事は誰もが予想出来た。
「そなたは錬金術を嗜んでいるとエルライドから聞いている。
よってそなたの使いたい素材はいくらでも取ってからこちらに売ってもらっても構わない。
しかし、魔核についてはこちらで買い取らせてもらう」
ガイネスはユーリに現在魔導師が現在ソラージュ王国と合同で研究している魔道具に魔核を必要としているとあり、その為にもユーリの持つ地竜の魔核が必要なのだと語った。
ユーリとしては魔核も魔道具製作に必要だと断ってしまいたかったが、王国が、ガイネスがこれ以上に無いほどの譲歩をしているのだというエルライドの言葉に従う事にした。
「はい、では眼球を1つ、鱗を100枚、爪と牙を3本ずつ、そして肉を200人前ほど頂ければ、残りの素材は全て言い値でお売り致します」
眼球や鱗、爪や牙は錬金術に、そして肉に関しては竜種の肉は他の魔獣の肉と比べて格別の美味さを誇ると書物で読んだという事もあってか、大量に確保しようと考えたのである。
特に肉はエルライドやハロルドといった特別親しい者達に腕を振舞うと決めていたユーリは今からどんな料理にしようかと妄想を膨らませていた。
ガイネスはユーリの言葉を聞き入れると、アルザスが口を開いた。
「では、ユーリ殿には金貨3億枚―――3億コルドを支払う事とする。
異存は無いか?」
「―――っ!?」
アルザスの言葉にユーリを筆頭にその場にいた殆どの者たちが驚愕した。
3億コルドといえば、大領地の年間税収に匹敵するほどの金額だったのである。
過去の例からいえばこの倍以上の金額の値がついた事もあり、3億という金額はこれに限りそれほど高いというものではない。
ユーリが言い値でよいといったアルザスはこれ幸いとばかりに予定していた最高額をはるかに下回る金額で買い取ろうとしたのだ。
ユーリとしては3億という金額に前世の宝くじのイメージしか湧かなかったのか半ば呆然としていたが、返事をしていない事を思い出して慌てて口を声を上げた。
「はっ、はい、異存は―――」
「―――待つのだアルザスよ、それはちと安くはないか?」
異存なしと返事をしようとしたユーリに待ったをかけたのは、国王ガイネスであった。
まさかの人物にユーリをはじめアルザスさえも驚いていたが、フラウだけはしたり顔でニヤついている。
まるで予定通りだといわんばかりの表情に、ユーリは『ナニ考えてるんだよこいつら』と引き攣った表情を浮かべるしかなかった。
「へ、陛下、いったい何を…!?」
「だから、安いと言ったのだアルザスよ。
討伐された地竜の素材は頭部と両前足以外状態は良いと聞く。
過去討伐された地竜は何十日と戦い続けほぼ全身に傷付いていたというのに、3億コルド以上の値がついたのだぞ?
いくら言い値でよいと言われても限度と言うものがある。
最高額―――12億コルドにせよ」
「じゅっ!?」
「な、何を言うのです陛下!?
確かに12億コルドは最高額ですが、9億も浮いたのであれば他にもっと事業を立ち上げられます。
第一個人で12億など…いくら冒険者の武器が高価とはいえ、使い切れるものではありません!!」
アルザスの言葉にユーリは何度も頷いてしまった。
3億コルドという金額だけでも冒険者を引退して残りの人生を何も働かずに暮らしていけるというのに、この4倍、桁の増えた見た事も考えた事もない金額を持たされても、ユーリには使い切れる自信がなかった。
「へ、陛下…恐れながら申し上げます。
じ、自分にはそのような大金は必要ありません。
宰相閣下の指定された3億コルドもあれば充分で…」
緊張した面持ちでいらないと返したユーリにアルザスがうなずいていたが、ガイネスは頑として首を縦に振らない。
「だが、それだけの功績をそなたは打ち立てたのだぞ?
それを安い金額で以って応えるなど、我が国の沽券に関わるのだ、分かってくれぬか?」
『分かってたまるかよ、小市民にそんな大金持たせようとするんじゃねえよバカじゃねえのかアンタ』と内心罵倒したユーリは、どうやって大金を受け取る事を断ろうかと考えあぐね、以前エルライドと話したある出来事を思い出した。
スラムにいる孤児たちの受け入れ先を作る事である。
アマリア教でも孤児院はあるが、それでも各都市に1つあるかないかという数しかないし、受け入れられる数には限度というものがある。
国が関わろうにも財政的にも試算がつかない為、頓挫してしまっていた政策の1つであった。
「で、では陛下、これならどうでしょうか?」
ユーリは3億コルドは必ず受け取るとして、残りの9億コルドを国営事業として孤児院を設立運営の資金に当てて欲しいと嘆願したのである。
本来ならば国策に一冒険者が口を出すなど処断されて当然の処置であるが、英雄の言葉を無碍にする事はガイネスやアルザスには出来なかった。
更にいうとアルザスもこの孤児院設立に関わろうと考えていたともあって、ユーリの案にそれならばと頷いたのだ。
試算がつかないという理由ではあったが、まずは試験的に運営しなければならないのは当然であり、近々アマリア教からもアドバイザーを召喚して意見を聞く事が決定してしまったのだった。
だが、責任者は―――、
「じ、自分が孤児院の院長ですか!?」
孤児院の院長は、出資者でもあるユーリがなる事に決まってしまったのである。
考えが足りなかったユーリは『どうして自分が』と目を点にしてしまって固まっていたが、ガイネスたちは当然とばかりに納得していた。
試験的にとはいえ、国営事業に関わったユーリは孤児院との繋がりを作ったのである。
出資をしてそれで関係が切れる訳もなく、今後ユーリには出資された9億コルドもの大金の使い道を半月に一度王宮に報告する事となったのである。
英雄的冒険者との繋がりが出来たとその場にいた貴族、そしてガイネス達は内心で喜んでいたのを知らないユーリは、『どうしてこうなった』と自らの失敗にエルライドに教えられるまで気付けずにいるのだった。
■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■
どうしてこうなったんだ、俺は12億コルドなんて大金を受け取りたくないから残りの9億は慈善事業の孤児院設立の運営資金にしてくれっていっただけだったのに。
「どうしてこうなった?」
「おめでとうユーリ、院長センセーになったんだって?
その場でお祝い言えなくて残念だったよ」
エルライドがニヤニヤしながら待っていた、どこから情報が漏れているんだと思ったら、フラウ爺さんが当然とばかりにエルライドの執務室にいた。
あ…はぁ、そう、そういう事ですか。
「フラウ爺さん、まさか王様も一緒でグルだったの?」
そうとしか考えられない、あの時ニヤついていた理由がこれだったのかと思えば合点がつく。
別に孤児院じゃなくても、別の事業の事を俺が口にしたら、出資者として俺がその事業に関わるのは決定していたという訳で、孤児院に決まったのは俺が口に出したからという事だ。
と考えるとあの最小もグルなのか、演技派過ぎるぞあの人。
フラウ爺さんが紅茶を吹き出した、俺の言い回しがツボに入ったらしい、厳格な爺さんかと思えば笑い上戸な人だった、お茶目すぎる。
「まさか12歳で孤児院の院長になるだなんて…ユーリ、お前出世したなぁ」
「実家の治療院との提携を考えませんかユーリ様?
良心価格をお約束しますよ」
「孤児たちと一緒にいて見分けがつかなくなるから、なるべく従業員の仕事の邪魔はしてやるなよ?」
「ハロルドさん、なりたくなった訳じゃないから!!
あと守銭奴さんは黙ってくんない?
あとアッキー、お前俺と戦争したいのか?
決着つけてやろうかこの野郎!?」
魔王VS勇者ファイナルやっちゃうぞ、卑怯に勝ってやる、徹底的に。
この場にいるのはエルライド、隻眼、ハロルドさん、ノエル、アッキー、フラウ爺さん、そして俺だ。
前約束していた俺の事情を話す為、この式典が終わった後にエルライドの執務室に全員が集まる事となっていた。
今日、俺は真実を話す事になる。
前世の俺、『三峰・葵』の事を。
「さてと…それじゃあユーリと約束した事は覚えているよね?
話してもらおうか?」
エルライドが眩しい位の笑顔だ、隻眼の奴はいつも通りむっつりとした表情を崩さない。
ハロルドさんとノエル、あとフラウ爺さんは興味深げに俺を見ているが特に口を開こうとはしない。
アッキーに至ってはいつも通りだ、前世の頃から変わらずの態度だ、ムカつくが頼もしい困った奴である。
「ああ、分かった。
実は―――」
そこからは俺の独演場だった。
前世の俺の事をほぼ全て話し、精神を病んだ状態でこの世界に生まれてしまった事、その全てを話した。
「…そっか、前世の記憶か。
なるほどね、だからユーリと話していると年上の人と話している気がしたんだね」
全てを話し終えて、エルライドの第一声がそれであった。
「前世での剣術が今に活きていると…だから最初の一撃を避けられたのか」
隻眼の奴は見当違いな考えに至っている、生憎と俺の剣道は完全に残っていません、構えも纏めて全滅してるから。
「37歳児…いや、12歳児で充分だな。
肉体と精神の年齢が比例しない良い例だなこれは」
何やら哲学的な事を言ってるハロルドさんだが、最初の37歳児というのはちょっとショックだ、俺37歳でガキ扱いされた、卒業出来ると思っていたのに、ガキ扱い。
「輪廻転生…という奴ですか、アマリア教の否定している思想の1つですね。
ハーフエルフだというのにそんな面倒事を抱えて…ユーリ様はアマリア教と本当に相性が悪いのですね」
珍しく金銭的な事を一言も発しなかったノエルに全員が驚いていた、本人は釈然としないが、アンタホントに守銭奴なんだよ、自覚しろって。
「わしとしては前世と言われてものう…酒の席で肴になればいいんじゃないかね?」
フラウ爺さんに至ってはそれがどうしたと言わんばかりの表情で、酒のツマミにされた、扱いが雑だなおい。
「…なんだ、俺を見て。
今更な事を言わせるな、お前なんぞ悪友で充分だ、この残念系戦闘狂ショタめ」
悪態をつくのが生き甲斐なアッキーに関しては特に無し、俺だってお前なんぞ悪友で充分ですよ、腐れ縁でもいいくらいだ。
というか、全員の反応が予想外過ぎてなんと言うか…、
「『どうして』って顔をしているねユーリってば。
実はというとね、ユーリが来るちょっと前にアキラ君から聞いちゃっていたんだよ。
ユーリが前世で心を病んでこの世界に生まれ変わってきた事を。
前世でどんな暮らしをしていて、どういう風に生きてきたのかを、まぁ掻い摘んでだけどね。
地球…だっけ?
随分と文明の進んだ世界だってね、魔法じゃなくて科学が発達した世界。
その中でも水準の高い国で20年以上勉強してきたって…しかもその中でも知識量が特別多かったって言われてね、色々と納得した訳だ。
ラインハルト兄上の残した政策に答えられたのも、そういうのが理由だったんだって思い至ったんだ」
エルライドの言葉に思わずアッキーを睨んでしまった。
アッキーは肩をすくめるが一切口を開こうとしない、関係ないって顔しやがって、いつか引っ叩いてやる。
「…き、気持ち悪くないのか?」
恐る恐る、俺は皆の顔を伺うような表情をして尋ねてみた。
だって中身が見た目とまるで違うおかしな魂がこの中に入り込んでいるのにどうしてそんな顔をしていられるんだ。
別に生まれた時からこの体だったから、本来入る筈だった魂から横取りしたわけじゃない、それは自身を持って言える。
けど、異質な存在は普通嫌悪の対象であって、こうまで『何でもない』といった対応を取られると、肩透かしを食らったというかなんというか。
「だって、ユーリがおかしいのはいつもの事だし、今更前世の話されても、『ああだからユーリっておかしな行動を取るんだ』っていう程度しか思わなかったよ?」
「そうそう、37歳とかステータスを見たら分かったけど、エルフでいう所の37歳ってまだまだ子供だし、そう考えるとユーリの行動は子供特有…常識を知らないバカな子供としか見れないからな。
お義兄さんは特に不思議には思わなかったぞ?」
エルライドとハロルドさんから思わぬ言葉を貰ってしまった。
いや、っていうかおかしいのはいつもの事って…何気に酷くないか?
一世一代の告白をしたつもりなんだが、どうも皆苦笑いというか…アッキーだけが爆笑していたが。
おいこら、ナニ笑ってやがる悪友、僻地に転移させるぞ?
「いや、お前が普段どういう目で見られているのかと想像すると腹が痛くてな?
前世でもそうだったが、お前の行動は面白過ぎる、見ていて飽きねえよ」
「アキラ様、ユーリ様の面白話をお聞かせいただけますか?
もちろんお支払いは致します、銀貨5枚で如何でしょうか?」
「ちょっ、待て守銭奴、何そんな金出してまで俺の事知ろうとしてるのさ、弱み掴む気満々過ぎでしょ!?」
アッキーがノリノリで話し始めようとするのを止めるのが大変だった、混ぜたら危険だなこの2人は、監視しておかないと。
「わしはあちらの世界での戦術なんぞ教えて欲しいのう、今度わしのところにきて講義の一つでもしてくれんか?
美味い酒を用意してまっとるよ」
フラウ爺さんは比較的落ち着いてる、やはり年の功というのか何というか…勝てる気がしないわ。
いや、勝てる気がしないというのはこの場にいる全員だな、どいつもこいつも俺の予想超えてるし。
…そういえば隻眼には勝てそうだから、やっぱ訂正。
隻眼以外には勝てる気がしないな、これだ。
「……今、失礼な事を考えたな?」
「なに言ってるのさ隻眼、変な勘繰りするなよ。
別にお前の事なんて何も考えてないから、自意識過剰だよ?」
直感というか、隻眼は鋭いから困るな、面倒で鬱陶しい奴だ。
睨んでくる隻眼の視線を流して、俺は大きく溜息をついた。
俺の葛藤を返してくれ、さんざ悩んだのに、それがこれかよ。
「見当違いの葛藤とか、マジ滑稽だなユーリ」
「辛辣過ぎるよ悪友、優しくしてやろうって気にならないのか?
ほら、俺の顔は可愛くて評判なんだぞ、不本意だがな」
ニパーッと笑って見ると、はっとバカにしたような顔をされた、解せぬ。
「作り笑いって知ってる奴からしてみれば白けるよな、友人にそんな顔するなんてお前舐めてんの?」
手痛いしっぺ返しを食らった、俺の悪友マジ辛辣、止まる事を知りませんな。
「まぁ、ユーリには今後一層活躍してもらわないとね。
孤児院の事もあるけど、主に僕の起こす事業の手助けとか?」
「なにそれ、初耳なんですけど王子様?」
「あれ、ユーリは聞いてないの?
ユーリから買い取った魔核…精製した魔石だけど、僕が監修している魔道具に組み込んで新しい事業を起こすんだよ」
うっわ、なんか言い出したよこの子。
なに、新しい事業って…しかもあの魔石そういう事に使う気でいたのか。
何から何までエルライドの手のひらというか…俺のご主人様、俺より魔王やってないか?
「知らないし、っていうか魔道具って事はここにいないアドルフも関わってる訳?」
「そうだよ、最近彼がいないのはその最終調整って訳だ。
あとは精製した魔石を組み込めば完成するって言っていたから、近い内に試乗出来るかもね?」
「何に乗るのさ、あれだけでかい魔石を使うなんて、大型船にでも組み込む気か?」
「惜しいね、半分正解だ」
大型船に組み込むので半分って、どういう事だよ。
ダメだ、うちの王子様考えがとっぴ過ぎてついていけない。
何が言いたいのかもったいぶらずに言ってほしいです、ご主人様。
「船は船でも、この船は―――」
エルライドの顔が珍しく赤くなっている、興奮するほどその事業の事が楽しくてたまらないんだろう。
そんな顔をされてしまうとお手上げだ、俺も隻眼もエルライドには逆らえないし、逆らう気なんて更々ない。
ハロルドさんやノエルは楽しげに見ているし、フラウ爺さんは面白そうに紅茶を飲んでいた。
アッキーはと言えば何を考えているのか良く分からない顔をして俺やエルライドを見ている。
疲れる一日だ、今まで出一番緊張したかもしれない。
だが、肩の荷が下りて今は清々しい気持ちだ。
帝国との問題もあるが、俺はこの国がやはり気に入っている。
だから俺はこの国が…エルライドの目指している国が見てみたい。
父さんが作ろうとしていた国を、母さんと一緒に過ごしていた国を、もっと豊かにする為に。
前世の記憶を総動員してお手伝いさせてもらうとしよう。
幸い、大好きな人たちが俺にはたくさんいる。
空回りしてばっかりだが、心の底から楽しいと思える『今』がある事が楽しくて仕方ない。
異世界に転生してよかった、これからを楽しむ為、今日も楽しく生きていきますか。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
感想、評価などお待ちしています。




