表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/93

第17話 順調です?

次は18時投稿です。

メリクリでした。

 



 ラザニアの街を出て4日経った、順調に俺達は王都に向けて馬車を走らせていた。


 後方を隻眼に任せ、俺はハロルドさんが御者をしている隣で前方周辺を警戒していた。


 エルライドとアドルフは馬車の中で休ませていた、どうやら馬車酔いらしい、軟弱な奴らだ。


「いや、ユーリの御者が最初酷かった所為であの2人はああなってるんだぜ?」


「え、でもハロルドさんと隻眼は平気だよね?」


「いや、鍛えてるからな俺達は」


 なんと、俺の所為で2人はグロッキーになっていたらしい、ついでに隻眼も倒れればよかったのに、残念だ。


「……おい、何か言わなかったか?」


 ちっ、勘の良い奴だな隻眼は、黙って後ろを警戒してろよ。


「なにもー?

 ていうか、話しかけずに後ろ警戒してくれませんかー?」


 本当は空間感知で後ろもカバー出来ているが、隻眼には教えていない、真面目で堅物なあいつは自分だけ暇をしているのが嫌だからって勝手に後方を警戒すると言ってきたので無駄に使っているのだ。


「ぐっ…分かった、警戒をしておこう」


 はは、無駄な徒労ご苦労さん。


 4日経って成果と言えば何度か襲ってきた盗賊だったが、どれも記憶を読み込んでみたがただの盗賊だった、農作物が全滅して食うに困った村の人間が丸ごと盗賊へと変わったらしい。


 丸ごとというのがすごい、しかもそういった規模の村はいくつかあるようで、襲ってきた盗賊たちは一種のコミュニティを形成しているようだった。


 エルライドの言っていたこの国の病っていうのは、こういうのもあるんだろう、とはいえ、既に盗賊行為を成功させちまっている奴らを殺さない訳には行かない、未遂ならともかく、もうあいつらは犯罪者になっちまったからな。


 辛い顔をするエルライドをよそに、俺はなるべく闇魔法で苦しまないよう一瞬で殺した。


 好きで盗賊をしていた訳でない連中だったが、まあやった事の責任はとらないとな。


「にしても、ユーリの魔法はすごいな。

 座ってるだけで前方の警戒が出来てるんだからな」


 ハロルドさん達には俺のステータスを開示した。


 最初適正値が常識外れの75とか100とかの数値を叩き出しているのに驚いて、次いで称号を3つも持っていることに驚いて、そして見たこともない魔法を操っている事に驚いて、驚き祭りと化していた。


 ハロルドさんは非常識の理由が分かったとぼやき、アドルフは研究の為に協力して欲しいと誘ってきて、隻眼は俺があの時本気で戦ってこなかった事に歯噛みして、そしてエルライドはさすが2人の子供だと褒めていた、ふふん。


 とはいえ、俺はそこまで表立って動く気はない。


 協力するとエルライドとは約束したが、俺は表沙汰に協力出来る立場の人間じゃないからな。


 とりあえずはエルライドの通っている王立学院で隻眼の奴と護衛をする事だ。


 とはいっても四六時中じゃない、せいぜい週に7日くらいだ、他は休み、というか冒険者の依頼を受けて金を稼いでおく。


 金が無いに越した事はないからな。


「うん、どういう魔獣がいるのかも分かるから結構使ってるんだ。

 まぁ、ちょっと使い過ぎると頭が痛くなるから、多様はしないけどね」


「まあ、それだけすごい魔法だと魔力の消費量も馬鹿にならないだろうからな。

 残りの魔力量を考えながら使ってけよ」


「はーい」


 いやー、ハロルドさんが優しいぞ、まあいつもの事だけど。


 あと戦闘面について思ったけど、ハロルドさんがめっちゃ強い。


 何あの火魔法、前方の山賊の大半が焼けたぞ。


 ハロルドさんに断って称号のステータスを解析させてもらうと、あの『火撃』って称号、一時的に適正値を倍にする事が出来るらしい、なにそれチートじゃん。


 一時的に適正値70の火焔魔人が現れるって…なるべく怒らせないようにしよう、下手したら俺がローストにされる。


 あとで知ったが、アドルフがハロルドさんがその称号とは別に『過激』と言われていた事もあったと教えてくれた、しゃれのつもりで付けたんだろうが、洒落になってないぞマジで。


 適正値は俺の方が上だけど、火魔法限定で勝負したら勝てる気がしない。


 いや、魔力量は俺の方が上だからどうにかなるかも知れんが、やっぱり勝てる気がしない。


火撃(カゲキ)』で『過激(カゲキ)』とか、ホント笑えないからな。


 適正値が非常識で浮かれていた事もあったけど、調子に乗っていたようだった、反省しよう。


「あ、反応出た。

 後ろから馬に乗った奴らがこっちに来てるよ」


 後方2キロから馬に乗った集団15人が俺の空間感知に反応した。


 盗賊かぁ…馬に乗っているって事は、間違いなく慣れてるな。


 馬は貴重品だからな、1頭だけでも金貨10枚はするから、感知しただけでも金貨150枚以上の価値がこっちに向かってきているぞ。


「おい、今後方からって言ったな?

『前方だけしか感知出来ない』とかいっていた気がするが、あれは気のせいだったのか?」


 あ、隻眼が俺の言葉に気付いて睨んできた、目敏い奴だなもう。


「え、そんな事言ったか?

 俺は『前方は感知する』とは言ったけど、後方も感知しないとは言ってないぞ?」


「嘘をつくな嘘を!!」


「ユーリさすがに無理があるぞ、フィリップ殿に謝っておけ」


「ええー?」


 むぅ、さすがにダメだったか、ハロルドさんに窘められると仕方ない。


「ごめんねー隻眼、片目だから警戒するの大変だと思ったから、ちょっと気を利かせてみたんだ。

 …これでいい、ハロルドさん?」


「最後のが無ければなぁ…はぁ」


 何故か呆れられた、何でだ?


 隻眼も何故か睨んでくる、さっきと比べたらマシな言い訳になったと思ったんだけどなぁ。


「まぁいっか」


「それで済ませるのか!?」


「やかましいなぁ隻眼は。

 いいじゃん別に後方の感知していたって、隻眼より早く感知しただけだって。

 その内良い事あるって」


「それはそうだが…って、何度も隻眼隻眼と言うな!!

 俺だって好きで隻眼になった訳で無いわ!!」


 なんだかんだで隻眼は嫌いだが、弄ると面白い。


 それはそうと、そろそろだな。


「隻眼、こっちこい、場所交代だ。

 一々相手にするのも面倒だし、俺が魔法で終わらせる。

 隻眼はハロルドさんの横で前方の警戒だ、今度(・・・)は感知しないから、頑張れよ?

 ハロルドさん、速度このままで、とりあえず大きく揺れなきゃどんだけ走っても良いです」


「りょーかいだ、頑張れよ」


 俺は感知を切ると、馬車の後方へと向かった。


 隻眼と交代すると、擦れ違い様に睨まれた、意味が分からん。


 適材適所という素敵な言葉を知らないのか?


「あーけど馬か、最低でも金貨10枚だしやっぱり臨時収入も欲しいが…どうするか」


「ユ、ユーリ、馬に乗った盗賊はまずは生け捕りにしてくれないかな?

 更に後方に本隊がいる可能性もある、あれが全部だとは限らないからね」


 ぐったりしているエルライドから注文(オーダー)が入った。


 なるほど、それもあるのか、馬をあれだけ手に入れられる連中だ、15っていうと少し少ない気もするし本隊がいてもおかしくない。


「了解だ王子様、予定を変更するぜ。

 ハロルドさん、やっぱ予定変更です。

 見晴らしの良い所で止まってください、連中捕まえて情報吐かせますんで」


「りょーかいだー」


「俺も手伝おうか?」


「うるさい暇人、お前は前方警戒してろ」


 さっきも言っただろうが、俺が魔法でやるって。


 苦い顔をしている隻眼から視線を後方に戻した、あーいるいる、確かに15人、それと馬が15頭きっちりいるぞ。


 装備は…あれ、結構良いの使ってないかあれ、汚れてはいるけどどこか隻眼と似た騎士に見えなくも…、


「まぁ、殺さずに生かして捕らえないとな、まずはそれからだ」


 ずっと馬車に揺られていると腰が痛くなるし、良い運動になるだろう。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■



「おいキサマッ、そこの馬車に載せている積荷を寄越すがよい!!

 渡せば命だけは救ってやろう!!

 返答を寄越せ!!」


 ……え、なにこいつら、盗賊に見えて実は本物の騎士じゃねえの?


 言葉遣いが所々偉そうなんだけど…盗賊ってこんな感じだったっけ。


「……」


「どうしたっ、怖くて声も出せないのか!?

 はんっ、所詮は―――」


 んーなんて言うのかね、こういう茶番って……、


「ああ、喜劇(ファルス)だ」


 俺はこの茶番を催した連中に腹が立って仕方が無い。


 本当に、この国ってエルライドの言った様に『病』というのが蔓延しているようだな。


 汚くて汚くて、纏めて燃やして消毒したくなるよ。


「はぁ?

 キサマなにを…ぎゃあっ!!」


「とりあえず、駆けつけ一発カマイタチだ。

 遠慮するなよ、他もジャンジャン飲ませてやる」


 俺は馬を狙わずに偉そうにふんぞり返っている騎士の膝から下を切り落とした。


 当然だが自分が何十年と共に生きてきた身体を切り離されたんだ。


 涙も出るってもんだよな?


「あし…アシ、俺のアシがアあアあアアッ!?」


「キサマ、抵抗する気…がはぁっ!?」


「当然だ、襲いかかって来て無抵抗でいるなんてアホのする事だ。

 お前らは後ろに短剣握った奴が笑顔で近付いてきて、握手したいと思うのか?

 しないだろう、つまりそういう事だ」


 既にこの領域は俺が完全に支配した、馬が若干何かに怯えているが、恐らく偽装した騎士連中が暴れて伝染したんだろう、馬は繊細な生き物なんだから、もっと丁寧に扱えよな。


 大気中に散布した俺の魔力で全方位から風の魔法でタコ殴りにする、さっきはイラっとしたからカマイタチを使ったが、まぁ次は失敗しないさ、多分だがな。


 それにしてもこいつら、本当に自分達が盗賊だと思わせる気あったのか?


 …無いだろうな、普段の調子でやったんだろう、いかにもアホっぽいし。


 俺は落馬した盗賊モドキを一箇所に集めると、地魔法で一人ずつ首だけ残して埋めた。


 これで抵抗は出来ないだろう、モグラ叩きみたいでちょっと殴りたくなってきたが、我慢だぞ俺。


「よし、馬の方もちょっと興奮しているだけで逃げた奴はいないな?

 よしよし、闇魔法で強制的に眠らせずにすんだぜ」


 俺はエルライド達を呼び戻すと、ハロルドさん達が馬車に乗ってやってきた。


 遠目から見ていたのか、ハロルドさんがよくやったと言ってくれた。


「とりあえず王子様、こいつら拘束しておいたけど、どうする?

 強制的に記憶読み込んであとは捨てるだけで済むけど」


「……まず話をしてみよう、フィリップ、一緒に来てくれ。

 ユーリ、君もだ、君は『ムチ』役だ」


 言いたい事は分かった、つまりエルライドは『アメ』役って事か。


 さっきの戦闘で顔が強制的に整形されたブサイク達15人が口々に騒いでいる、うるさい奴らだ。


「キサマッ、よくもやってくれたな、この卑怯者めっ!!」


 どうして俺が罵られるんだよ、責任転嫁も甚だしい。


 とりあえずムチ役に徹しよう、まずは側頭部を蹴ってみよう、えい。


「犯罪者が卑怯とかいうなよな?

 じゃあ質問してやるが、15人がかりで5人を襲いかかるのって卑怯者のする事だと思うんだけどさ、犯罪者さんはどー思うかな?」


 今度は鼻を蹴り上げる、あ、気絶しちゃった。


「…ユーリ、やりすぎだ、1人話せなくなったじゃないか?」


「悪いな王子様、ちょっと加減が聞かなかった。

 残りの連中にはもっと手心加えるって、な?」


 ムチ役は難しいな、暴力を振るうだけじゃ役は務まらないらしい。


 もっとうまくムチを振るわないとな、精進精進。


「よしお前ら、さっきは悪かったな?

 でだ、俺のご主人様がお前らに質問があるみたいなんだよ。

 質問に答えたら…どうなるんだ?」


「台無しだな…」


 隻眼が何か言っているが、何も聞こえません。


「…少なくとも、この先にある街に連れて行って沙汰を待つ、といった所かな?

 盗賊行為は未遂だし、情状酌量の余地は…あるかもしれないな」


 エルライドがそういうと、山賊モドキ達の眼に希望とは言い難い光が浮かび上がったのを、俺は見逃さなかった。


 理由付けて潰すか、こいつがせっかく生かしてやろうとしてるのに、このクズ共尤もらしい嘘をつく気だ。


「俺達は…この辺りで活動している盗賊だ。

 獲物を探している途中、貴様らの乗った馬車を見つけ、こうして襲いかかったのだ」


「失敗したけどな、いいザマだぜおっさん、お似合いだ」


「ユーリ」


「はいよ、黙ってるって」


 ったく、甘いんだからエルライドは、それだからこいつ等がつけ上がる。


「次だ、お前達の乗っている馬は見た所かなりのものだ、どこで手にいれた?」


 エルライドの質問はいい点を突いてるな。


 盗賊が使っているまっていうのは精々が御者用の馬を奪った奴だ、確かに馬力はあるだろうが、馬への負担がありすぎてすぐに乗りこなすのはまず無理だろう。


 長い訓練をしないと、あれだけの戦列を組んでいられる訳が無い。


 盗賊を自称するなんて、ふざけているにもほどがある、真面目に騎士をやってる隻眼の奴もいい迷惑だな。


 それに馬の状態もいい、まるで最近まで徹底されて管理していた軍馬のようにしか見えない、これを御者用の馬と見るのは、これもまず無理があるな。


「しょ、商隊を何度も襲って手に入れたのだ、馬商人が質の良い馬を連れていて、我等が襲い手にいれたのだ」


 もう隠す気あるのかよこいつら、盗賊が使うような荒れた口調がまるで無い、ダイコン役者にも程があるぜ。


 エルライドは盗賊モドキをじっと見てなに考えている、他に何か聞くことがあるのか?


 俺の予想が正しけりゃ、こいつらは嘘でしか返さねえぞ。


「お前達は誰に雇われた?

 僕はこの国の第二王子、エルライド・ウル・ソラージュだぞ?

 お前達は僕を襲った事で反逆の意思ありと見做すが、本当に、お前達が自分の意思で僕達を襲った、そういう事で良いのだな?」


 うわ、ド直球でトドメさしとしてるよ、どうするんだろうこいつら、知らなかったで通す気か?


 盗賊だから身元不明で打ち首で済む…かもしれないけど、普通なら王族に手を出そうとした時点で一族郎党皆殺しなんじゃねえのか?


 貴族なら三親等が殺されるような法律がこの国にはあったはずだ、まあ根絶やしにするのと一緒だよな。


 騎士は…どうなるんだろうな、その領地の領主の采配で下手人は処刑されるだろうが、その身内は入るのかは、多分領主の采配次第か。


 とはいえ、どうせろくな答え返さないだろうし、いい加減動くか、読み込みさせてもらうぜ、その足りない頭の中をな。


「おーい王子様、もう十分だろ?

 もう俺がやっちまっても良いか?」


 答えなんぞ聞く気はねえ、エルライドの邪魔をした以上、ここの領地にもその内報復は必要だが、まずはこいつらだ。


「ユ、ユーリ、僕は彼らを…」


「ダメだぜそれ以上は、どんな理由があろうと、こいつらは手を出したんだ。

 王や王族が法を守らなきゃ、国として意味を為さねえのは理解してるだろう?

 こいつらは記憶を読み込んで状況が分かり次第首を刎ねて終わり、それで終いだ。

 上に言われたからって手を出したこいつ等が悪い、被害者が加害者に隙を見せてんじゃねえよ」


 俺は気絶している騎士の頭を掴むと、闇魔法『完全読込(パーフェクトリーディング)』を使った。


 やっぱり横文字の魔法はいいな、漢字の羅列も悪くないが、個人的にはこういうのが良い。


 記憶を読み込んでいって、どうやらこいつらの正体が本当に地方領主に仕えている騎士だと判明した、やっぱりか。


 となると、盗賊の仕業に見せかけてエルライドを襲って亡き者にしようとしたという事か、ここの領主は今の第一王子の陣営に属しているという事か。


 街に引き渡しても、処刑したとか言って裏で使い回すのが予想出来ちまったよ、胸糞悪い。


 壊す気で読み込んでいるから壊れた奴も多いが、仕方ないな、エルライドに手を出したんだから。


 情報は続々集まっていく、本当は洗脳でもして領主を殺すとかいう案も考えたが、エルライドの許可をもらわねえと難しいかな。


「…大体集まったな、こいつらは騎士爵位を持ってる連中で、借金で首が回らなかったのを領主の奴が借金返済を条件に王子様を殺せって言ったみたいだ。

 いやー、たかだが総合計200万コルドにもならない借金の為にこの国の王子を殺そうとするたぁ…騎士って言うのもずいぶん質が悪いんだな、どう思うよ隻眼の。

 こんな奴が自分と似たような位階にいるのって、恥ずかしくねえ?」


 試しに隻眼の奴に振ってみると、最初顔を赤くしてキレていたが、次第に落ち着いて諦めたのか溜息をついた。


「俺はこいつ等よりはマシな貴族の次男だからな、純粋な騎士爵位を陛下から授かったが、代々の騎士爵位を継いだという訳ではない。

 だからこいつ等がどれだけ苦労してきたのかは理解してやれない。

 だが、それでも、主君である陛下や王族の方々に剣を向けて欲しくはなかったと、そう思う」


 ありゃ、真面目に答えたよ、なんだよ詰まらない、『こんな奴らと一緒にするな』みたいな事でも言ってくれると思ったのに。


 まあ、これくらい真面目じゃねえとエルライドの護衛は出来ないか、少々堅物すぎるのは欠点だがな。


「らしいぜ騎士の皆さん?

 さて、お前らはここで終わりだ、来世があるのなら、もっとマシな生き方を探すんだな」


 俺は俺らしく生きる。


 自分で考えて、自分で決めて、自分で責任を取って、それで満足して死ぬ。


 どんな評価をされようと、俺の大切な存在以外の評価以外は認めない。


 俺は盗賊モドキ達の首をカマイタチで刎ねると、エルライドに馬車に乗ってくれと言った。


「この領地からはさっさと抜けた方が良いな、順調に進んではいるが、こういう連中は始末が悪い。

 馬も売ってもまた再利用されるだけだろうが、さっきは金に変えればいいとは言ったが撤回だ、殺した方がいいぜ」


 軍馬は育てるのに金がかかる、この馬達もそれだけ金をかけて育てられてきたはずだ。


 それを15体も一気に減らすんだ、返り討ちになっても馬くらいは返って来るだろうと皮算用していた連中の鼻っ柱を少しは殴ってやらないと気が済まねえ。


「…そうだな、ユーリ、やっておいてくれ、僕は馬車に戻る。

 …フィリップ」


「はっ」


 エルライドはそういうと、隻眼を連れて馬車に戻っていった。


 …なんだよ、せっかく助言してるのに、あんな顔しやがって。


 なんで辛い顔をするんだよ、傷付けられそうになったのはお前なんだぞ?


 …納得いかねぇ、そんなんで本当に無能な兄を殺せるのか?


 もっと強くなってくれよエルライド、そうじゃねえとお前の夢が見れねえよ。


 俺に夢を見せてくれよ、復讐ばっかりの俺をお前が言っていた父さんとお前の夢を見せてくれ。


 それに協力する事で、俺は少しはマシな生き方が出来ていると、そう思いたいんだ。


「……にしても、最近俺人殺し過ぎてるな、モヤモヤが薄れてきてるが…なんか気持ち悪いな」


 2つのファミリーを潰した頃からか、なんだか自分のやり方が酷く残忍になっている様な気がする。


 もっと注意しねえとな、こういう事をし過ぎれば心が更に病んでいくのが目に見えてる。


 最近焦っていたのか、情報が集まらなくてイライラしていたのもあるのかも。


 落ち着け俺、前にも決めたが、復讐は何時でも出来る、今はエルライドの夢を一緒に見ていくんだ。


「ん、お疲れユーリ。

 疲れたろう、少し休め」


 馬を始末して馬車に戻ると、ハロルドさんがそういって毛布を寄越してくれた。


 …大丈夫だ、俺は見境なく殺している訳じゃない、ちゃんと線引きは出来ている、そのはずだ。


 俺は礼を言って少し休む事にした。


 記憶を読み込み過ぎると情報量が多くて疲れてるんだ、この精神状態もきっとそう、このイライラは直に消える。


 その後は何事もなく馬車は進んでいき、不穏だった領地を抜けて、更に王都に目指して行った。






読んで頂き、ありがとうございました。

感想など、お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ