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第16話 野望と依頼と移動

次は12/26、0時投稿です。

メリクリマースマース。

ブックマーク20件、ありがとうゴザイマス。

 



 母さんが死んだあと、俺は身辺整理と評して母さんの持ち物を調べさせてもらった事があった。


 特に気になったのが大量にある日記の山だ。


 一体何十年毎日書き続けたのか分からないほどの日記帳が一箇所にあった。


 母さんには悪いとは思ったが、俺はその日記を読ませてもらった。


 そこには母さんと父さんの話も書かれていて、情報もそうだったが、俺は2人の馴れ初めというものを詳しく聞いた事がなかったので、思わず熟読してしまった。


 そこには母さんが俺に教えてくれた『物語』がより現実味を帯びて記されていた。


 俺の父、ソラージュ王国第一王子、ラインハルト・ウル・ソラージュ。


 そして俺の母、エルミナ神樹国第二皇女にして最高位の巫女、カリュラリシア・アサムド・オン・ハーシェルの愛の物語だった。


 そこで知ったのだ、本来結ばれる筈の無かった二国間の関係を。


 ガスターク帝国がどういった目的で母さんを求めたのか。


 あのヒューマン至上主義の帝国が、エルフの母さんを求めた真の目的が。


 そして、俺が一体どういう血筋を持って生まれてしまった、本来有り得ない存在なのかを。


 だが、俺にはそういう事には興味は無い、子供は親を選べないんだ、むしろ最高の親を引き当てた俺は世界でも稀に見るラッキーマンという訳だよ諸君。


 俺が感じ入ったのは両親の愛の深さとその覚悟だ、それ以外は2人の絆の邪魔にしかならないし、必要の無い要素だ。


 だから俺は、その絆を阻もうとした王国を許さないし、壊そうとした神樹国を許さないし、奪おうとした帝国を許さない。


 だから、俺の中に流れる血がなんであろうと知った事ではない。


 そんな物で俺は評価されてやらない、俺は父ライルと母カルラという種族の垣根を超えて愛し合った2人の結晶の、ユーリという存在だ。


 それが事実で、真実で、絶対だ。


 意見も認めない、口を開く事も認めない、思う事すら認めない。


 俺の邪魔をするのなら、たとえ地獄を何度潜ってもその首を刎ねてやる。


 それが、俺が全てを受け継いだと気付いたあの日に誓ったことだ。


 ちなみに、日記の量はかなりあったので、全部は読めなかった。


 また落ち着いたら読みたいと思う。



 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■



「何をいうのかと思いきや…殿下、さすがに冗談が過ぎます。

 自分はハーフエルフですよ、王族の血を継いでいる訳が無いでしょう?」


 雲上人にどういう言葉遣いをすればいいのかわからないので、なるべく丁寧な言葉で返した俺は、お坊ちゃん…自称叔父のエルライドの次の言葉を待った。


「ああ、もう腹の探り合いはしないから。

 ユーリおじさんはこのソラージュ王国第一皇子、ラインハルト・ウル・ソラージュと、母エルミナ神樹国第二皇女にして最高位の巫女、カリュラリシア・アサムド・オン・ハーシェルの間に生まれた子供。

 本来ならこの国の王族として生まれていた、高貴な生まれだ」


 やって…くれるなこいつ、腹黒王子め、何が腹の探り合いはしないだ、逃げ道強制的に潰そうとしてる奴がナニ言ってやがる、させる気がないの間違いだろう。


 どうするよ、ハロルドさん完全にショートしたぞ、試しにつついてみたけど反応が無い。


「何を根拠にそんな事を?

 自分の両親の名前はそんな長い名前じゃありませんでしたよ」


「ああ、こう言い直した方がいいかな?

 父親の名前はライル(・・・)、母親の名前はカルラ(・・・)だったっけ。

 どちらも自分の名前を少し弄っているだけで、冒険者をしているのはすぐにわかったよ。

 まあ、ラインハルトお兄様は8年以上前にこのラザニアの地を最後に消息を絶ったって聞いたし、カリュラリシアお義姉様の目撃情報もここ最近じゃ聞かない、おそらくはもう、どちらもこの世にはいらっしゃらないんだろうね、残念だよ。

 そして最近ユーリがこのラザニアの地に現れて冒険者になった…まぁ、こっちは調べるのに随分かかったよ。

 でねユーリ、僕は―――」


「―――だまれ」


 俺は無詠唱で転移して邪魔者(・・・)の背後に立ってナイフを突きつけた。


 こいつは危険だ、全てを知っている。


 俺は隻眼とヒゲに邪魔されないよう結界を張った、適正値100の魔法でもしばらくは持つぐらいの頑強さだ、それまでに済ませよう。


「なんてことしてくれやがったんだ、おかげで散々だ。

 せっかくここの生活が気に入っていたのに、てめえのせえで滅茶苦茶だよ、王子サマ」


 その内この街から出て行く気ではいたが、気分よく出て行きたかったんだ、それをこいつは。


 隻眼とヒゲは当然この情報を知ってる、しかもハロルドさんにまで知られた。


 最悪だよ、もう少し冒険者として生活してみたかったのに…父さんと母さんがやってきたことを、楽しんでやれると思ったのに。


「―――僕はね、この国の王になりたいんだ」


 別段驚いた様子も無く、エルライドは俺にだけ語りかけてきた。


 王だと、それが一体何の関係がある、俺は確かに真実高貴な生まれだろうが、それは絶対に表沙汰にされる訳が無い存在だ。


 外で隻眼が結界を壊そうとしているが、さっきの様にはいかない、どうせ指を銜えて見てるしかないんだ、せいぜい悔しがってろ。


「この国は病に侵されている。

 父は…陛下はもう長くないだろう、今王宮は2つの派閥に分かれている。

 僕と兄の派閥だよ、無能な兄が王となれば、病は更に酷くなり滅ぶだろう。

 僕はそれを止めたい。

 かつてラインハルト(・・・・・・)お兄様が目指していたような、平和な世を作りたいんだ。

 だからユーリ、僕に協力してくれないか?」


 ……父さんが、目指した?


 どういう事だ、時期的に考えても父さんとエルライドは年が離れすぎている。


 おそらく父さんが王宮から去ったあとに生まれたのがこいつのはずだ。


 それなのに何故、どうして父さんが目指していた事を知っている?


「ああ、ユーリの想像通り、僕とラインハルトお兄様とは会った事は無い。

 だけどね、かつて王宮にいた頃お兄様が手掛けようとしていた計画書や走り書きが残っていてね、僕はそれを読んで見知らぬ兄に憧れを抱いていた訳だよ。

 計画の緻密さとそれを実現する為の下準備、そして走り書きにはその準備の方法や想いの書き残しがあった、そしていつしかそれを実現させる事が僕の夢になっていたんだ。

 …どう、少しは興味が出てきたかな?」


 ナイフを突きつけられてるのに、エルライドはそれを気にせず振り返った。


 俺はエルライドが動いたのにナイフで突き殺そうとはせず、黙ったままだ。


「…ちなみに、どんなのがある?」


 試しに…試しに聞いてみるくらいならいいだろう、聞くのはタダだ、しかも状況的に俺が返り討ちになる事はまず無い。


 黒服に勝てないこいつが、影の鎧も纏っている常態の俺に傷一つ付けられる筈が無い。


「たとえば流通の改善かな?

 各領地の街や村を繋ぐ道を今以上に整地していくことで流通を加速させるんだ。

 あとこれは僕の考えた案なんだけど、魔導師ギルドが最近開発した魔獣妨害波装置を設置して安心して大量の物資を巡らせる事が可能になるんだ。

 これで一部の地域に消費しきれない量のある物資を他の地域に回すことが可能になる。

 …その、わかった?」


 …すごいな魔導師ギルドってところは、聞いた感じ魔法、魔道具関係の技術開発をしている研究よりの組織らしい。


 しかも魔獣を妨害ねぇ、名前的に魔獣の嫌いな魔力の波長を出して弱い魔獣を街道に近寄らせないようなものか、実用段階になっているのならたいしたもんだ。


 強い魔獣は基本森の奥深くとか山奥といった立ち寄らない場所位にしかいない、街道に出るのは弱い魔獣くらいだ。


 ということは、街道にそれを設置すれば、流通の安全確保に一役買うことが出来る訳か。


 利権が恐ろしい事になりそうだな、個人的に関わりたくないかも。


「……バカにするな、それ位余裕だ。

 要するに、血液を循環させる為に更に一工夫したっていう事だろうが。

 王都と近くの領地で試験して成果を出した所で朝議に出せば間違いなく通るだろうぜ。

 魔導師ギルドの利権が間違いなくとんでもない事になるが、それはそれで考えてるんだろ?」


 ふん、これでもその手の知識は前世で習得済みだ、鉄道網敷いて世界に喧嘩売った第三帝国凄かったんだぞ、散々な結果が待ってたが。


 その先を見越しているのなら、こいつは…いや、父さんは天才だ、さすが俺の父さんだな。


「すごいね、ちょっと話しただけですぐに理解するだなんて!!

 しかもその例え、よく理解していないと出てこない例えだよねそれ?」


「寄るな気持ち悪い」


 男に迫られる趣味は無い、可愛い顔していてもこいつは男だ。


 近くでよく見ると本当に可愛い顔立ちだな、まるで女みたいだ、匂いも甘いし、香水でも付けてるのだろう。


 ま、まぁそういう事はどうでもいいが、俺はエルライドをどうしたいのだろうか?


 話を1つ聞いただけでこれだ、他にも玉石混淆(ぎょくせきこんこう)で、それでも石はきっと原石だ、将来的に見れば間違いなく玉に化けるだろう。


 こいつは王の器だ、陳腐な言い方ではあるが、そうなんだろう。


 俺の今一番の目的は帝国への復讐だ、王国と神樹国には恨みこそあるものの、復讐に走るほどじゃない。


 それに恨みこそあるものの、父さんと母さんはそれぞれ国を愛していた。


 だから、2人の愛した国を壊す事は、俺には出来ないし、したくない。


 となると、消去法で恨みも重ねて復讐しなければならないのは帝国だ。


 だけど…だけど、それはいつでも可能だろう。


 俺には力がある、今の魔力量は2人から受け継いだ事もあってこの世界でも有数の魔法使いだ。


 いつでも復讐は出来る…だけど、それよりも、こいつの作る世界を、父さんが作ろうとしていた世界を見てみたくなった。


「……いいだろう、乗ってやる」


 俺は結界を解除した。


 途中からハロルドさんも結界を叩いていたが、残念ながらハロルドさんでもこれは無理だ。


 ヒゲに関しては結界の方ばかり見ていた、魔法使いだが研究者としての一面もあるのだろう、何とか解析しようと必死になってやがったな。


 解除したらまだ見足りないとばかりに睨んできたよ、ざまぁ見ろ。


「王子、ご無事ですか!?」


「本当かい!?

 じゃあ早速王都にいこう!!

 とりあえず邪魔な兄とその周りを一掃して改革だ!!」


 隻眼が俺を睨むが、両手を挙げて何もしていないアピールをしておいた、俺何もしてないぞ。


 ていうか物騒な奴だな、実の兄を消すって言ったぞ。


 さすが生まれながらの王族、やる事が|一般人(俺)とは一味違うわ。


「ユーリ君、先程の魔法をもう一度見せてくれないか?

 あれは私が今まで見たことのない魔法だ、是非とも研究を…」


 あんた副支部長だろうが、本職どっちにする気だよ。


「ユーリ君、副支部長は魔導師ギルドのギルド長を兼任しているんだよ。

 …それで、どういうことなのか教えてくれるかな?」


 ハロルドさんが新情報を提供してくれた、すごいなこのヒゲ、大組織のトップと副支部長って、どれだけ優秀なんだよって…今さっき実感したばっかりだったか。


 ていうか、ハロルドさんの表情がだんだんと険しくなっていく、鬼の形相一歩手前です、怖い。


「え、あ、その、いやぁ……えへ?」


「話してくれるよなぁ、ユーリクーン?」


 慣れない事するもんじゃないな、逆なでした所為で爽やかお兄さんから鬼へとクラスチェンジした。


 ハロルドさん怖い、正面に立たれると逃げたくなる位、怖いです。


「貴様、王子に刃を向けるとは何事か!!

 今度こそ成敗してくれる、そこに直れ!!」


「フィリップ、ユーリは協力者になってくれたんだからそんなこと許さないよ!?」


「ユーリ君、魔法を!!」


「ほらほらほらぁ、お兄さんとお話しようぜぇユーリー?」


 詰め寄ってくる4人の大合唱に、俺の意識は飛びかける、逃げたくなってきた。


 30分後、騒がしくなった会議室にラザニア支部のギルドマスターが部屋には入ってくるまで、騒ぎが止む事はなかった。



 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■



 |カオスな会議室が落ち着きを取り戻すまで時間がかかった。


 はじめてこの支部のギルドマスターとあったが、なんというか、すごい。


 あたまが、ぴかぴかだ。


「…おい坊主、ナニ人の頭を見ているんじゃい」


 しわがれてはいるがしっかりとした口調のヒューマンの爺さんが俺に話しかけてきた。


 ベジットと名乗った爺さんは俺をジロリと睨むが、俺は知らん顔でハロルドさんの後ろに隠れた、私は何も見ていません、冤罪です、被害妄想です、ハゲ。


「まったく、こんな問題児だったとは…副支部長もいい加減正気に戻って頂きたいものですな?

 いい加減話が進みませんぞ?

 あと王子と護衛の騎士殿も、口喧嘩はあとにして頂きたい」


 おお、淀みなくこの変人集団に注意するなんて、よくできた爺さんだ、やっぱりギルドって優秀な人材がたくさんいるんだな、こんな寂れた街にもいる所にはいるもんだ。


 ところで、問題児って誰の事だ?


「…ゴホン、申し訳ありませんでしたユーリ君。

 先程までの失態は見なかったことにしてもらいたい、ハロルド君も、巻き込んでしまって悪かったね」


「いえ、色々と興味深いお話を聞けたので、大変楽しかったです」


 …ハロルドさんの笑顔がまだちょっと怖いな、どこか隠れる所はないだろうか。


 ヒゲ、アドルフは俺のことをまだ諦め切れていないがぎるベジット爺さんに睨まれてようやく動きはじめた、どうやら立場的にはアドルフが上だが、爺さんには敵わない所があるようだ、もっと早く来てほしかったぜ。


「自分も別にいいです、それより、監査の方はもういいんですか?

 正直、この面談で本当に自分の疑惑が解けたとは思えないんですけど」


 確かに隻眼とは少し戦闘して実力は見せたが、それは戦闘面に対してだけだ。


 俺がやってきた依頼ってどちらかというと確かに討伐系が多かったが、ランク2って他にも上がる条件があったと思うんだがなあ。


「それについては本当は王子から話していただこうと思って席を移ったんだが…王子が別の話をし始めてこうなってしまったんだよ」


「あはは、ごめんねユーリ」


「王子、謝る必要はありません!!」


 そういうことか、あのグダグダはエルライド(こいつ)が原因か。


「王子が話すとまた脱線しそうなので、もう私が話させていただきますが…ユーリ君。

 君に依頼があります、それを達成する事で、君の疑惑を潔白とする事が、今回私達が来た理由なのです」


 そういうと、アドルフが依頼用紙を俺に渡してきた。


 内容は護衛依頼、目的地は…王都?


「なるほど、疑惑を潔白にして、かつ辺境にいる有望株を国の中央に持っていこうという算段ですか、さすが中央は考えていらっしゃいますね」


 ハロルドさんの推察というか真実を見極める眼がすごい、探偵みたいだ、犯人見つけたら直接殺しそうな眼をしているのがとても残念だが。


「それはあくまで表向きの理由です。

 聞いていたでしょう、先程の王子の計画を。

 王子には敵対する者が多くいる、今は1人でも多く味方が必要なのです。

 その為に、ユーリ君には中央(こちら)へと移籍していただきたいのですよ。

 まぁ、本人からも了承をいただきましたし、ハロルド君が文句を言う筋合いはないと思いますがね?」


 …こっわぁ、何この応酬は、俺も何か言った方がいいのか?


 えっと、そうそう、漫画でこういうのあったな、『私の為に争わないで』みたいな?


「ユーリは邪魔しない方がいいと思うよ、絶対こじれるから」


 なんかエルライドに先制された、酷いな俺に喋るなって言うのかよ。


 ハロルドさんとアドルフは笑顔を崩さずに会話の応酬をしている、この状況でお互い罵倒しない2人の語彙力がすごいな。


「…では、貴方もきますか、中央(こちら)に?

 ユーリ君の担当として、溜まっていたラザニア支部の依頼を効率よく解決していった貴方の能力は間違いなく中央でも通用します、どうですか?」


 するとアドルフが今度はハロルドさんも一緒に来ないかと誘ってきた、まぁ主任受付しているから優秀だろうから、問題はないだろな。


「……いいでしょう、引継ぎはすぐ出来ますし、その誘いに乗りましょう」


 熟考した後、ハロルドさんも俺と一緒に来る事になった、ちょっと安心したぞ。


 また新しい受付と一から関係構築するとか、面倒だからな。


 もう慣れ切ったハロルドさんの関係が一番楽だし、楽しいしな。


「…では、決まりですね。

 数日中にこのラザニアの地を出て中央、王都ケルンズへと向かいます。

 同行者は私、エルライド王子、フィリップ殿、ユーリ君、そしてハロルド君の5名です。

 そしてユーリ君は、この隊のリーダーとなってもらいます。

 どういったルートで王都へと向かうのか、問題が起きた時の対処、護衛をしながらの戦闘等を見させてもらいます、これは正式な依頼でもあります。

 次のランクの査定にも繋がる重要な依頼にもなりますので、心してかかってくださいね?」


 落ち着くとあっという間にやることが決まり、俺はこの4人を…隻眼は守らなくてもいい気はするが、守る立場の人間となった。


 面倒だとは思うが、まぁ自分から乗った船だ、満足させてもらうまで乗らせてもらうとしようか。


「王都までの道のりまでに物資を買い込んでおいて、装備の点検も各自でしてから出発するから、それじゃ解散」


 俺は先に会議室から出ると、受付の横にある大きな地図を見て王都までの道のりを紙に写してギルドを出ていった。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■



「じゃあユーリ君、元気でね?」


「中央で怖い思いしたらすぐ帰ってきてもいいからねぇ?」


「…がんばってね、応援してます」


「ど、どうもです…」


 3人娘と別れを済ませると、俺はラザニアの街から出た。


 ボルグの奴が『いつか王都にいってお前に会いに行くからな、待ってろよ』とかいっていたが、お前の為に待つ訳ないだろうがと突っ込んでおいて、ダンファールさんに拳骨されられていた。


 ダンファールさんには研ぎとか新しい武器について色々と世話になったから、丁寧に挨拶をしておいた、また来たらサービスしてくれると言質を取ったので、時間に余裕が出来たら遊びに行こう、


 空間転移すれば一発だ。


「んじゃいくとするか…そういえば、俺馬車初めてなんだよな。

 ハロルドさん、時間空いたら教えてくれない?」


「いいぞ別に、ユーリはすぐにコツを覚えそうだから、時間もかからないだろうしな。

 前もって準備しておいた物資や装備の点検については間違いなく加点対象だから、あとは護衛の配慮が出来れば間違いなく依頼は完璧だからな」


 ハロルドさんはもう完全にタメ口になった、好感度が更に上がりましたデスネ、絶対おかしなフラグが立ったぞ、友人、もしくは親友ルートだよな?


 嬉しいけど少し不安になってきた。


「こらそこ、基準をばらさない!!

 まったく、もしかして私は誘う相手を間違えたのでしょうかね」


「まあいいじゃないかピースマン副支部長、僕らに頼もしい味方が2人も出来たんだしさ。

 特にユーリはすごいね、ハーフの常識ってなんだったんだろうって思うし」


「王子、あいつは…あの方は重用し過ぎると危険です、王子にとって諸刃の刃となる可能性があります。

 周りに注意してください、あと会う時は私も同行します」


 アドルフとハロルドさんの関係はまぁ悪くはないのだろう、中央に誘った事だし、腹痛の種になる気はするが、がんばれよ副支部長さん。


 あとエルライドと隻眼だが、まぁ色々と思うところはあるけど現状維持だ、前向きに検討はしよう。


 だが隻眼、お前はむかつくんで邪魔だ、護衛は俺で十分だからすっこんでろ。


 ったく、妙に過保護だし、お前は母親かってんだ、胸糞悪い。


 ……ん?


 どうして胸糞悪いんだ?


 エルライド(あいつ)とは協力関係になっているだけで、別に護衛はある程度いた方がいいよな?


「まあいっか、考えても仕方ないし、行くとするか」


 俺達5人はラザニアの地を出て行った。


 次はいつになるかは分からないが、多分きっと来るだろう。


 寂れてはいるが、決して嫌いにはなれかった、この街に。





読んで頂き、ありがとうございました。

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