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第15話 暗躍と監査

次は21時投稿です。

シングルベールです。

 



 ラザニアの街に来て半年経った。


 あれから俺は冒険者の活動を控えていた。


 いや、むしろ今のペースが普通らしい、ようやく落ち着いたとハロルドさんと3人娘達が安心していた。


 俺は冒険者としての活動に重きを置き過ぎている、だから元の立ち位置に戻ろうと考えた。


 そう、情報収集だ。


 冒険者の仕事ばかりしていて、情報収集の時間が少なくなっていた。


 さすがにこれはまずいと思ったので、ゆっくりとだが依頼の数を減らしていき、不審に思われないペースにして情報収集をしていった。


 で、俺がどうやって情報収集をするのかといえば、もちろん闇魔法だ。


 もちろん手当たり次第にする気はない、試しに何度か魔獣に使ってみたら、加減を間違えて頭がパーどころか精神が壊れて動かなくなった。


 今ではそんな失敗はしなくなったけど、万が一と言うこともある、無関係の奴に使って運悪く壊したら罪悪感が俺を苛み続けるだろう、そんなのはごめんだ。


 というわけで、やるとすればその手の連中、つまり罪悪感を抱かない連中にかける事にした。


 その手の連中、つまり後ろ暗い事をしている連中にだ。


 やる事はいたって簡単、スラムに入って10歩も歩けば俺みたいなカモにあっさり引っかかる。


 あとはそいつの記憶を根こそぎ読み込んで、芋蔓式に一番上に辿り着けばいい。


 ついでにスラムも掃除してあげよう、廃れずに済むかもしれないぞ、ラザニアの街よ。


 ラザニアの街のスラム化はじわじわと進んでいるらしく、領主も手を(こまね)いているらしい、やっているようには見えないがな。


 2時間ほどかけて俺は虱潰(しらみつぶ)しにスラムを歩き回っていく、消毒中です、二次被害にお気をつけください。


 50人からもう数えなくなったがなんだかどうでもいい奴ばっかり引き当ててるな、一向に上に辿り着ける気がしない。


 歓楽街で豪遊した記憶やスリに成功した奴から上前をはねてやったとか、正直いらない記憶(もの)ばかり増えていく。


 特に歓楽街の記憶持ちは自分が借金背負って奴隷落ち寸前なのに借金重ねて歓楽街行って女抱いているんだが、借金を踏み倒す気なのか?


 かなり弱かったんだが、取立て屋に勝てるのかちょっと心配になったぞ。


「…おいガキ、ここに何の用だ?

 ここはブッツさんの家だ、ガキの来るところじゃねえ、失せろ」


 もうスラムを歩き回り始めて、どこから抜け出せば良いのか分からず迷い始めてきた頃、ガラが悪いが装備の整ったゴロツキが2人話しかけてきた。


 早速解析してみた。




 ――――――――――――――――

 名前:ビーシ

 種族:ヒューマン

 称号

 疾風

 性別:男

 年齢:26

 魔法適正値

 火:10

 地:10

 水:15

 風:35

 無:10



 名前:アズカ

 種族:ヒューマン

 性別:男

 年齢:30

 魔法適正値

 火:20

 地:10

 水:20

 風:20

 無:25

 ――――――――――――――――




 へぇ、片方は称号持ちだ、強い…と考えても良いんだよな?


 ハロルドさんと違って風魔法系の称号か、適正値もそれ相応だし、もう片方は特に強そうには見えない、ムキムキだから前衛なのかな。


 とりあえず、称号持ちから潰そう。


「えっと、すいません、ボク(・・)道が分からなくなっちゃって…ここってどこなんですか?」


 バカな相手ならこれで少しは喋ってくれるだろう、最低限の情報が知れればこいつらは用済みだ。


 あとはさっき言っていた『ブッツさん』なる人物とお話すればいい。


「ああ?

 ったく、ただの迷子かよ…いいかガキ、ここはブッツファミリーのアジトだ。

 なんも知らねえガキが来るところじゃねえんだよ、分かったらさっさと行け」


 称号持ち、ビーシという男が指差す建物は、確かに他のスラムの建物と違って頑丈に見える、討ち入りを警戒しているのだろう、門番に称号持ってる奴を置いている位だ、それなりに大きな組織と見てもいいか。


 それにしてもファミリーか…つまり、殺してもいい連中って事だな?


「切り裂け、烈風!!」


 不意打ち上等、まずは称号持ちを殺す。


 お互い風魔法が得意なんだし、同じ属性同士の魔法使いがどう対処するか、拝見させて貰うとするぜ。


「がはっ!!」


 ……と思ったが、称号持ちは不意打ちに対応出来ずに全身を切り裂かれて死んだ、死にやがった。


 不意打ちしたのがまずかったか…、今度から襲いますって言ってやった方がいいか?


「討ち入りだああああああああっ!!」


「あ、声出すなよ、バレるだろ?」


 俺は無詠唱でカマイタチを残りのムキムキ門番に放つと、避ける事も出来ずに首を刎ねた。


 ちっ、建物からワラワラ出てきやがる、巣を突いた蜂の巣だな。


「てめぇ、どこのファミリーのもんだぁああああっ!!」


 無所属ですよ、強いて言うなら冒険者か?


 とりあえず片っ端から半殺しにしてから記憶を読み込んで行く、さっきは称号持ちがいたから殺したが、殺したら記憶読み込めないからな、注意しないと。


「……そこそこ、か?

 役人と繋がっているとか言われても、顔がバレなければ良いよな?」


 どうやらこのファミリーは一部の役人と繋がりがあるようだが、これは俺の求めている記憶じゃないからいらない。


 …やっぱ男なんだなぁ、どいつもこいつも歓楽街にいって遊んでやがるよ、借金はないみたいだが。


 歓楽街ねぇ…あいにくぴくりともしねえから行っても仕方ないしなぁ。


 はぁ、似たような記憶ばっかりで余計沈んできた、気分を変えないと。


「おじゃましまーす。

 ブッツさん、いらっしゃいますかー?」


 知らない家に入ったらまず挨拶、これは大切だな。


「てめぇ、部下達はどうした!!」


 お、なんだか綺麗な服を着た小太りのおっさんが出てきた、幹部かな?


「ああ、あいつらなら全身から血を噴いて半死半生って所かな?

 手当てしないと間違いなく出血多量で死ぬだろうな。

 まあ良いだろ、お前もあいつらのあとを追うんだからな?」


 逃げられないように背後を空間魔法で見えない壁で塞いでおっさんを殴りつけた…うわ、手袋が油で汚れた、きたねえ!!


「それじゃあおっさん、ちょっと拝見させてもらうぜ?」


 俺は記憶を読み込むが、どうやらこのおっさんはファミリーの行く末を案じているようで色々と模索中だったようだ。


 役人と繋がりを作ったがいつ裏切られるか分からない部下達、隣の領地から勢力を拡大しようと現れた新興勢力『ロッソファミリー』との攻防、出て来る出てくる…いらないのばっかりだがが、1つだけ気になる情報があった。


「別の勢力、ロッソファミリーかぁ。

 なぁおっさん、このロッソファミリーってどこにあるの…って、ありゃ」


 あーらら、おっさん壊れちまってるよ。


 まぁ、記憶を見た限り悪い事いっぱいしてるし、死んで当然かな、生きる意志も無くなるレベルで壊れてるし、捨てるか。


 ていうか、ステータスを見てみたらこのおっさんがブッツさんでした、よくこんな奴がスラムの主気取ってられたよな、ラザニアの街は大丈夫か?


 さて困ったぞ、次の獲物(ロッソファミリー)が見つかったからおっさんに聞こうと思っていたのに、先に壊れちまうし、これじゃあどこに行けばいいのか…、


「おい、みてみろよ、ブッツファミリーの連中がみんな死んでやがるぜ!!」


「どこのどいつかしらねえが、よくやってくれたもんだぜ。

 これでこのラザニアの街は俺達ロッソファミリーのもんだ、手前ら、頭に連絡しろ!!」


 外から声が聞こえてきた………いいねえ、いい、実に都合がいい。


 まさか獲物がホイホイ来てくれるとは思わなかった。


 ていうか、あいつらもう死んだのかよ、根性ないな。


「―――とりあえず…半殺しにしてから情報を貰うかな」


 きょうは、らざにあのまちにすくうあくのそしきをいっぱいつぶしました。


 いいことをしたので、ぐっすりねむれそうです。





 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■




「監査…ですか?

 それって、俺のです?」


 スラム掃除から1週間後、俺はハロルドさんに王都からギルドの監査が入るといわれた。


 しかも、もう来ているのだという、抜き打ちすぎるぞ冒険者ギルド。


「他にいないだろうね。

 ……どうやら王都の副支部長が来ている、かなりすごい魔法使いだから、ユーリ君は気を付けてね」


 ハロルドさん、最後の言葉が気になります、何に気を付けるんですか?


 ていうか、ハロルドさんレベルの人が言う『すごい魔法使い』って俺大丈夫か?


 ……いや、これでも称号持ちを殺せたこともあるし、何とか…なるか?


 辺境とあってか、副支部長という人が来るのには2週間という時間がかかったらしい。


 護衛の冒険者もいて、そっちもかなりの実力者らしい。


 そういえば、2階からすごい気迫垂れ流してる人がいるけど、そいつらのことか?


「じゃあ行こうか、担当をしている俺も一緒に呼ばれているんだよ」


 あぁ、ハロルドさんまで呼ばれていたのか、なんか迷惑かけてすいません。


 2階へと上がると、一番奥にある会議室へと案内された。


 やだなぁお偉いさんと会うなんて、緊張してくるぞ。


 何かとちっちまいそうで、ハラハラしてくる。


「失礼します、ユーリ、ハロルド、出頭しました」


「入れ」


 年を食った感じの声が許可を出したので、ハロルドさんが先に入って行く。


 気配は3つだけど、一際魔力の強い存在がいる、これが副支部長か。


 残りは魔力こそ殆ど感じないが…1人は強いな、サムズさんと同じ、いや、それ以上の戦闘能力はある気がする。


 もう1人は微妙だ、どちらかといえば魔法使いと思えばいいのか…戦闘になっても支障はないだろう。


 ハロルドさんが入った所で俺も入ろうとすると、いきなり斬りかかられた、びっくり。


「ちっ…こんな部屋で何をっ!!」


「問答無用だ、かかってこい」


 俺に斬りかかってきたのは眼帯を付けたヒューマンだ、強いぞこいつ、近接戦闘じゃ間違いなく俺より…いや、こいつ本当にヒューマンか、バカ力過ぎる!!


「副支部長、一体何の真似ですかこれは!!」


 ハロルドさんはイスに座っているヒューマンのヒゲ男にいきり立っている、そうだそうだ、言っちゃってくださいハロルドさん、なるべく早く!!


 気配を探るが、襲いかかってくるのは隻眼野郎ただ1人だ、金髪の色が濃い、貴族出身者の冒険者か…てことは身体強化に特化した剣士か。


 ここで魔法を使えば間違いなくこいつを撃退する事は可能だ、だけどそんな事をしたら副支部長どころかこの場にいる全員に俺の異常性がバレちまう。


 両手に黒塗りのナイフで攻撃を防ぐが、一撃が重い、手首がイカれるぞくそったれ。


 ていうかハロルドさんもっと離れて危ないから。


 だがおかしい、こいつには戦意はあっても殺意までは感じない、となると俺の力を試してる?


 ありえるな、突発的な戦闘にも対応出来るか抜き打ちで試す位の事はしてくるだろうな。


 けど、この場合俺は一体どこまでやればいいのやら、下手すれば俺死ぬぞこれ?


 仕方ない、相手は殺すつもりがないのなら、こっちは殺す気で…、


「―――そこまで!!

 双方剣を納めよ!!」


 …助かった、ギリギリバレずに済んだな。


 ていうか、この声どこかで…?


「フィリップ、剣を収めてくれ、彼が警戒したままだ。

 ユーリ、だったね、君も剣を収めてほしい、もうこれ以上君に危害を加えたりしないから」


 ………うーん、どこかで会った様な気がするが…思い出せないな。


 思い出せないって事は、それほど重要な思い出じゃないんだろう、最近記憶読み捲くっていたからそこで見たのかもしれないしな。


 俺は手に持ったナイフを収めると、フィリップと呼ばれた剣士と距離をとって席に座った。


 もうこいつとは戦いたくない、強いし。


 やるならもう絶対に魔法で背後から不意打ちする。


「申し訳ありません、王子。

 この者の衣装が奴らと同じでしたので、つい…」


 奴ら…これって黒服、暗殺者達の服だけど、この隻眼知ってるのか?


 …ていうか、王子って言ったか今?


 そういえば、随分前に自称王子の可愛い顔したお坊ちゃんを結果的に助けた気が…それにこの隻眼も、あの時黒服にやられていた死に損ないの騎士か、生きてたのかよ。


「エルライド王子、話をさせていただいてもよろしいですかな?」


 ヒゲ男、副支部長がエルライドと呼ばれた冒険者の少年に声をかけた。


「ああ、ピースマン副支部長。

 時間を取らせてもらってありがとう、感謝するよ」


 ステータスを覗き見したい気もするが、凄腕の魔法使いって話だし…やめておくか。


「はじめましてだねユーリ君。

 私はこのソラージュ王国冒険者ギルドの副支部長をしているアドルフ・ピースマンという。

 どうかよろしく」


「これはご丁寧に、はじめましてピースマン副支部長。

 自分はユーリ・ミツミネ、ランク2の冒険者です」


 強いなこの人も、魔法使いの腕前はかなりの物って言うハロルドさんの言葉は嘘じゃないみたいだ。


 こっそりステータス見てやろう思ったんだが、思わない事が起きた。


 こいつらのステータスが見れない、何一つ。


 考えられるのは魔道具だが…そういう魔道具もあるとは知らなかったな、まぁ警戒するのはこの副支部長と隻眼の剣士だから、態々ステータスを見る必要も無いか。


「僕はソラージュ王国第二王子エルライド・ウル・ソラージュという。

 こっちは護衛のフィリップだ、よろしく」


「………ふん」


 お坊ちゃんと隻眼が挨拶するが、隻眼の野郎はロクに挨拶もしてこねえ、礼儀のなってない奴だ。


「ハロルド・シュルリーカと申します、ソラージュ王国ラザニア支部で主任受付をしています」


 そして最後にハロルドさんが挨拶したけど…え、ハロルドさんて主任だったの?


 ていう事はあの3人娘達の上司…苦労してるんだなぁハロルドさん。


「それで、先程の襲撃は何だったのか、ご説明願いますか?

 突然襲い掛かられたのです、聞く権利は有していると思いますが、如何でしょうか殿下?」


 おお、ハロルドさんが自称…いや、本当に王子様だったのか、あのお坊ちゃん達を睨み付けているよ。


 ていうか、この2人は一体何をしにきたんだ、権力者がこんなに集まってくるなんて、嫌な予感しかしねえぞ。


「それについては謝罪しよう、何せ監査対象の実力を計る為に役を勝っていただいたのだからね。

 突発的な戦闘も難なくこなして見せるのが冒険者というもの、彼の実力に関しては十分ランク2の実力どころか、それ以上の実力を備えているようだ。

 答えとしては、これで十分ではないかな?」


 アドルフは監査の為にやったのだと答え、ハロルドさんはそれ以上何も聞こうとしなかった。


「さてユーリ君、監査をするにあたってまず事実確認をさせてもらいたいのだが、いいかね?」


 アドルフは俺に冒険者ギルドに登録した時の情報を尋ねられ、聞かれた通りに答えた。


 嘘はついてないぞ嘘は、ホントの事を殆ど書いていないだけだ。


「どうぞ、ちなみに答えたいのだけ答えるのもいいんですか?」


「その分君が不利になっても構わないのならしたまえ。

 さて、最初の質問だが…君は本当にハーフエルフかな?」


 簡単にあしらわれた、バレるかもなこの調子だと、冒険者ギルドを抜けないといけなくなるかも知れねえわ。


 アドルフに下手な嘘は通じないと見ていい、目が完全に観察者の目で見てやがる。


「はい、ヒューマンの父とエルフの母から自分の目は受け継いでいます」


「父母の名前は言えるかね?」


「言いたくありません」


「その理由は?」


「この監査に必要なんですか、それ?」


「ハロルド君、何かユーリ君に聞いているかな?」


「いえ、そのような話はした事がありませんでした」


 ハロルドさんにも質問が飛び火する、余計な事は言っていない筈だから心配は無いけど、なんだこれは。


 質問の意図が不明だ、とりあえず隠すところは隠しておこう、いやな予感がジワジワ来ている。


「では次の質問だ、君は意図的にステータスを偽装している、そうだね?」


「いいえ、解析された通りの適正値だと思います」


「しかし、君のステータスからは魔力を感じる、何かしようとしたことは間違いないが?」


 おいおいおい、なんだよアドルフさん、そこまで気付いてるのかよ、偽装の事まで気付いてるのか。


 勘弁してくれよ、俺は基本正直者なんだ、嘘つくと誤魔化しが利かねえんだよ。


「はい、自分のステータスに何か具体的に分からないかと思い解析をした事が何度かあります。

 ですが、それ以上の事はしていません」


「では次の質問だ、君の戦い方は誰に学んだ?」


「母からです」


「君の母親は暗殺者だったのかい?」


「知りません」


「その服はどこで手にいれたのかな?」


「ラザニアの街から国境付近の森に落ちていたので拾いました、湖の近くだったと思います」


「ハロルド君、何か知っているか?」


「ユーリ君はこの街に来た頃からこの黒服を好んで着ていました、何着あるかは聞いていません」


「では最後の質問だ、君はこのラザニアの街に来るまでどこに住んでいた?

 これだけは答えてくれないか?」


「言いたくありません」


「その理由は?」


「この監査に必要な質問ですか、それは?」


「必要だ、答えてくれないか」


 なんなんだこのアドルフとかいう奴は、どう考えれば俺のやった事に気付けるんだ?


 頭が斜め上の方向にいき過ぎて会話になっていない、だけどこいつは俺が一体誰なのか気付いてる。


 一体誰の血を継いでいるのかを。


 くそ、前世で凄腕の検察官に尋問されている被告人の気分だ、100%有罪って分かっていて更に情報を吐き出させようとしていやがる、頭の切れが恐ろしいくらいに速いしイカレてる。


 絶対に勝てる札を用意してここに来てるんだ、手札がロクに無い俺じゃあ勝ち目がない。


 情報源は隣の王子様か…参ったな、やっぱり殺しておけばよかったかも。


「……エルブレア山の洞窟に住んでいました。

 もうありません」


「そこで8年ほど暮らしていたと」


「っ!?」


 こいつ、全部知って!?


 やばい、今のは絶対に表情が崩れたのがバレた。


 追求されると分かっててが無意識にナイフの柄を握っていた俺はこの場から逃げる事だけを考えた。


「……というわけで殿下、あとの依頼についてはお任せします」


 ……え、何で?


 追求せずに引き下がっただと、何を考えてるんだこのヒゲ。


 だめだ、戦闘での化かし合いならともかく、テーブルについた化かし合いなんて俺には出来ない。


 そんなのが出来るのなら、俺は前世で『うそつき君』呼ばわりされていない、もっとうまく立ち回っていた。


 腹黒どころか中に暗黒物質(ダークマター)詰まってるんじゃねえの?


 ヒゲが席を立つと横にずれてお坊ちゃんが今度は俺の前に座った。


 段々と思い出したが、やっぱり以前会ってるな、名前は聞いていなかったけど、隻眼を治療する為に解毒用の小瓶を売った記憶が蘇ってきた。


 あぁ、あの時の金貨100枚のお坊ちゃんだよ、思い出したぞ。


 どうしようか、逃げるタイミングを完全に逸したんだが、このまま話を聞いても良いのか?


 聞いたが最後、というパターンもあるしここは…、


「それじゃあ改めまして、はじめましてユーリ。

 叔父のエルライドです」


 あ、終わったわこれ。


 あーあ、ハロルドさん完全に固まっちゃったよ。





読んで頂き、ありがとうございました。

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