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第10話 そして継承

次は12/24、0時投稿です。


 

 ついに、その日がやってきた。


 朝食中に、母さんが倒れたのだ。


 覚悟はしていたけど、していたけど、俺は母さんの手を握った。


「母さん、本当に、助ける事は出来ないの?」


「そうねぇ…帝国に古くから伝わる『暗黒の毒』と呼ばれているものらしいけど、詳しい解毒方法は分からないそうよ。

 正直、助かったとされる数少ない生還者と同じように処置しても、人によっては死ぬ人もいるの。

 貴女が以前助けたという騎士の子も、もしかしたらあれから生き残ったかもしれないし、症状が悪化するかもしれない。

 正直、母さんでもあの薬の解毒薬を作るのは難しいわ。

 ライルの時は材料もそうだったけど、時間も足りなかったしね」


 母さんほどの錬金術師でも、あの恐ろしい毒を解毒する薬を作る事は難しいらしい。


 俺はその時あの黒服達と安易に戦った自分に恐怖した。


 いくら風の鎧で身を守っていたとはいえ、あまりにもあの黒服達に脅威と認識していなかったのだ。


 化かし合いに勝ち、黒服は殺せたが、見様によっては薄氷の上での戦いだったという事になる。


「…いつか、この毒をこの世から無くしてみせるよ」


 宣戦布告である、俺はいつか父さんや母さんにこんな目に遭わせた帝国を叩き潰してみせる。


 今は難しいだろう、なにしろ帝国の国力はここいらではトップである。


 そんな相手に単騎で挑むのだ、何か策を考えないと戦争にならないだろう。


「そう…じゃあ、力がいるわね、ユーリ。

 帝国に負けない…力、どんな理不尽にも打ち勝つ……力。

 あなたをまもるための…ちから、が」


 母さんの声がかすれ始めたので、強く握る。


 そんな母さんがベットから起き上がると、俺の手を握り返した。


「いいユーリ、これからする事はエルフ族の、いえ、全ての種族でも【禁術】とされるものよ。

 あの国で巫女をしていた私は、この術を継承するために生きてきていたの。

 帝国はその禁術に気付いて私と婚姻を結ぼうとしたけど……国から逃げちゃったから、もうこの事を知っているのは世界に私だけなの」


 母さんがいうには、この【魔核昇華】と呼ばれる禁術は対象を【魔核】という存在に変換し、その身に【魔核】の力を吸収するのだそうだ。


 ちょ、ちょっと待って、それってまさかっ…!?


「……そう、8年前、ライルが死んですぐに私はライルを魔核にして、あなたに吸収させたの。

 ユーリ、あなたが本来低かった魔法適正値がどうして上昇したのか、その理由がこれよ。

 ライルの最期の願い、あなたが将来危ない橋に渡ろうとした時、力がないと命に関わるわ。

 だから、この禁術を使って、適正値を強制的に引き上げようとしたのよ」


 ……そっか、だから母さんは、想いが受け継がれたとか、愛された証だとか言った訳か。


 単なる比喩ではなく、本当にそのままの意味で伝えていたのである。


「今から、その術を教えるわ。

 …この術は文字にしてはダメよ、絶対に一度で覚えなさい」


「わかった、タイミングは?」


 母さんが言うには、母さんが死んで5分以内には術を発動させないと、術が出来上がっても力を吸収するのは難しいのだという。


 そして俺は、母さんにその術を覚えた。


 この術は、かつて【魔王】と呼ばれた存在が力ある存在を魔核にして力を得ようと言う恐ろしい目的の元に編み出した恐るべき秘術であった。


 母さん達エルフはその時の恐怖を脈々と受け継いできて、いつか魔王の再来とも言える存在が現れた時、世界最強の存在にそれまで受け継いできた力を引き渡すのである。


「…母さん」


 俺は、目を開けるのも大変だろう母さんに呼びかけた。


「…なあに、ユーリ?」


 優しい声だ、この世で一番安心する、大好きな声だ。


「……ありがとう」


 俺は、こみ上げてくる感情に押されながら、母さんに話しかけた。


「いつも優しくしてくれて、怒ってくれてありがとう。

 熱を出した時、看病してくれてありがとう。

 修行をつけてくれてありがとう。

 一緒に料理を作ってくれてありがとう

 一緒に寝てくれてありがとう。

 たくさん笑わしてくれてありがとう。

 俺を育ててくれてありがとう。

 俺を嫌わないでくれてありがとう。

 俺を大好きでいてくれてありがとう。

 俺を愛してくれてありがとう。

 俺を……俺を生んでくれて、本当に…本当にありがとうっ!!」


「……まぁ、ようやく、素直になってくれたわね」


 世界一綺麗な笑顔で、母さんが笑ってくれている。


 けど、反対に俺の顔は涙が溢れ始めて、良く見えない。


 慌てて俺は涙を拭って、今この瞬間を忘れずに母さんを見ていた。


「俺は母さんと一緒にいて幸せだった。

 これから皆からどんな酷い目に遭わされても、どれだけ辛い思いをしても、俺は母さんと一緒に生きてきたこの10年間を一生忘れない。

 俺は母さんと一緒にいて嬉しかった。

 俺は母さんと一緒にいて楽しかった。

 だから…だから、俺は、うっ、うぅ…」


 声が出ない、もっと、もっと言いたい事がたくさんあるのに。


 母さんが笑っているのに、俺が泣いている所為で母さんが困っている。


「もう、ユーリったら、泣き方がライルそっくりね。

 感情が溢れて言葉が出てこない所とか、本当にそっくりよ。

 ほら…泣かないの、泣いちゃダメよ」


 母さんが俺を抱きしめてくれた、動くのももう辛いだろうに。


 最期まで、迷惑をかけて、ごめん。


「あやまらないで、私は母親らしい事なんてロクに出来なかった女よ?

 だから、今母親らしいことが出来て、私は嬉しいのよ、だから、あやまらない…で」


 母さんはそういうと、疲れたのか横になった。


 ああ……これは、8年前の、父さんと一緒だ。


 母さん、もう、お別れなんだね。


「かあさん……かあさんっ、大好きです、世界で一番大好きです!!

 こんな根暗で気味の悪い俺を大好きになってくれてありがとうっ!!

 俺、この10年間幸せだった、前世含めて、今までで一番幸せだ!!

 だいすきだよかあさん、あいしてるっ、いやだよ、いかないで……」


「だいじょうぶよユーリ…わたしは、ライルといっしょに、あなたのなかでいき…つづけるわ。

 だから…わらって?」


 笑う…大丈夫だよ、母さん、俺、今ちゃんと笑うから。


 安心して眠れるように…俺、泣かないから。


 だから…俺は―――、


「…あいしているわ、ユーリ」


 わらって、みおくるんだ。




 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■





 まどろんでいる中、何かの声が聞こえる。

 人じゃない、どこか無機質で…そう、前世で聞いた事のある合成音のような、生きていない乾いた女の声だ。

 これは…そうだ、父さんの時と一緒の…。






 ―――――――――――――――――――

 固体名ユーリが魔核吸収しました

 存在核が上昇します

 魔法適正値が上昇します



 条件を満たしました

 特異魔法【空間魔法】を獲得しました

 魔法適正値が上昇します



 条件を満たしました

 称号【秘術継承者】を獲得しました

 魔法適正値が上昇します



 条件を満たしました

 称号【灰銀の魔王】を獲得しました

 特異魔法【闇魔法】を獲得しました

 魔法適正値が上昇します



 名前:ユーリ

 種族:ハーフエルフ

 称号

 受け継ぎし者

 秘術継承者

 灰銀の魔王

 性別:男

 年齢:10

 魔法適正値

 火:75

 地:75

 水:100

 風:100

 無:75

 樹:100

 闇:100

 空間:100

 ――――――――――――――――






読んで頂き、ありがとうございました。

感想など、お待ちしています。

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