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第二話:女神と憂い
幾千幾万にも分かれた“零”の、その全てを生み終えた女神。
無事に使命を果たしたにも関わらず、その心は晴れなかった。
何故なら、生み出したその世界には、あまりにも“変化”がなかったからだ。
この世界には、あらゆるものを司る神がいる。
当然、時を司る神も複数おり、時間というものが確かに存在する。
けれど、どれほどの時の流れも変化をもたらすことはなく、ただ粛々と循環を繰り返すのみ。
これでは、全てがまだ胎内にあった頃と、何ら変わらないのではないか?
これで本当に、使命を果たせたといえるのだろうか?
これが“零”の望んだ世界なのか?
…日に日に疑問は膨らんでいった。
そんなある日、ふと世界の外側で、しかし“始まりの神”の内側であるところに、女神は一つの存在を感じ取る。
それは“零”と女神が世界を形作るのを、そっと見守っていた“無”である。
女神は呼びかける。
『最後の一つとして、この世界にどうか来てください。』
“無”はそれに応じ、女神の子となり世界に生み出された。
そして女神は、黄泉の国へ旅立っていった。