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プロローグ
宇宙の闇の真ん中で、全てが“彼女”に呑み込まれてゆく。
嗚呼、悲しみなど最早、湧いてこない。
そして、悲しむ必要はない。
全ては、生まれる前にかえるだけなのだから…
結局、この手は何も掴むことはなかった。
貴方も、そして、この世界も…
貴方の手だけを掴めば良かったのか?
それとも、貴方の代わりになれば良かったのか?
この期に及んでも、どうすれば良かったのかなど、分からない。
我は、貴方の想いに思い至ることが出来ず、また、彼女の願いを叶えることも出来なかった。
けれど、我は魔王。
この世界に、神に対する者として君臨せし魔王である。
いっそ我も呑み込まれ、貴方と一つになってしまいたいという誘惑にもかられるが…
それでは、貴方の存在も想いも、無に帰してしまう。
一度、完全に無に帰してしまえば、その後、再び貴方と同じ名の神が生まれようと、それは貴方とは全くの別者だ。
なれば、運命の果てたる黄泉の女王の御手であろうと、振り払うまでーー