第8話:家族
第八話です。今回はシリアスが入っています。最初はシリアスを入れるかかなり悩みましたが入れることにしました。悩みながら書いたので…おかしな点が多々あるかもしれません。おかしな点がありましたら、ご報告してくれると嬉しいです。
やっと全部の用事を終わらせた俺はようやく帰宅することができた。今日はいろいろとありすぎた…。早く寝たい…。
「二人ともおかえり〜。」
「おかえり、二人とも。」
雪華と父さんが出迎えてくれた。
「ただいま。夏輝さん、雪華。」
「夏輝さん」は父さんのことだ。
「た、ただいま。」
あれ?二人とも俺の姿を見てどうして驚かないんだ?二人とも始めて俺の姿を見るはずなのに。
「みんな、少し家族会議を開こうか。もちろん春人のことについてだ。」
父さんがそう言った。
マジかよ、今は精神的にも体力的にも疲れてるから明日にしてほしいけどな。
「春人、もちろんお前も参加するんだぞ。」
「父さん、今日はもう疲れたから明日にしてくれないか?」
「いや、今日する。大丈夫だ、あまり長い時間話すつもりはない。手短に終わらせるつもりだ。」
「えぇ〜、明日でいいだろ。」
「お前のためにやるんだ。」
「…分かったよ。」
正直、無視しようと思ったが、さすがにそこまでできなかった。
「さて…春人が女の子になってしまった件だが。」
「…そういえば、父さんと雪華はいつの間に俺の性別が変わったことを知ったんだ?」
俺が寝ている間に雪華は外出してたし、父さんは仕事に行っていた。だからこの二人は俺が帰ってきて、はじめて知って驚くはずだ。
だけど、その様子は全くない。
「帰ってきたら、母さんが置き手紙と写真を残してたんだ。」
「私が最初に見つけたんだよ。びっくりしたよ。はるちゃん可愛くなったね♪」
「…うるさい。」
「雪華、今の春人は疲れてる。あまり春人の神経を逆撫でするようなことは言 うな。」
「はぁ〜い♪」
雪華の野郎…呑気でいいよな。人の苦労を知らないで。性別が変わるのがどんだけ大変なのか知ってほしいよ。
「話を戻すが…春人が女の子になってしまった件だが、このことは家族だけの秘密にしよう。」
えっ?家族だけの秘密?
「今日、俺が行く高校の校長先生に俺が性別変わったこと話しちゃったよ?」
「あぁ、知ってる。あの人なら大丈夫だ。」
あの人なら大丈夫…?どういう根拠でそういえるんだ?
「とりあえず…春人が性転換したことは家族とあの人だけの秘密だ。無闇に他の人に言うなよ。」
「わかってるわよ。」
「わかった♪」
「あぁ。」
母さん、雪華、俺の順で返事をした。
「そしてもう一つ言っておかなければいけないことがある。秋子…母さんのことだ。」
秋子とは母さんの名前だ。
母さんのこと?
「えぇ、そうよ。春人、雪華…あなた達にね、言わないといけないことがあるの。私の過去のことを…。」
「母さんの…過去?」
「えぇ…そうよ、春人。」母さんの体が震えている。一体何を言うんだ?それ以前に母さんの過去と俺が性転換したことに一体何の関係が…
「大丈夫か、秋子?無理しなくてもいいんだぞ?」
「大丈夫です、夏輝さん…私…言います。この子達…特に春人のためには…。」
俺の…ため…?
「春人…雪華…よく聞いてね…。私はね…昔…秋斗という名前の…『男』だったのよ…。」
………えっ?今なんて言った?母さんが…昔は男だった…?
「母さんが…昔は男の子だった?どういうことなの?母さんは昔、性転換手術でもしたの?」
雪華が母さんに質問した。
「いいえ、違うわ。私もね…春人と同じように突然性別が変わってしまったのよ。」
嘘…だろ…!?
どういうことだ…母さんも俺と同じように…突然性別が変わった…だと…!?
「母さんが…はるちゃんと同じように…?本当なの、父さん?」
雪華が父さんに質問をする。こういう時に気になることをすぐ質問する雪華に感謝した。今の俺は混乱していて、頭の中で状況を整理するので精一杯だ。
「あぁ、秋子が言っていることは全て本当のことだ。俺と秋子…いや秋斗は小学生からの幼馴染みだったからな。」
「…小学生から?母さんと父さんは高校で出会ったんじゃないの…?」
今度は俺が質問をした。
「昔俺と秋子が一緒の高校だったことを聞いたんだな。あぁ…それは違う。俺と秋斗は小学生から中学生までずっと友達で親友だった。」
「でも…ある日突然…私は男から女に変わった。それは高校生になる前に起こったわ…。」
俺と全く同じだ。母さんも昔俺と同じことが…。
「そして、私は両親にそのことを伝えた。だけど…両親は私が…秋斗だって信じてくれなかった…。」
「………えっ…?」
「私を秋斗ではなく別の人物と思うのはしょうがないわ…。春人と同じで全く面影がなかったから…。そして私は家を追い出された…。知らない人が勝手に家に入ったって思われて…。」
「嘘だろ…!?じゃあ…男の方の母さんはどうなったんだよ!?その後母さんはどうしたんだよ!?」
「男の方の私…秋斗は行方不明となり…その後目撃情報も何も手掛かりはない状態続いた…。そして…秋斗は…結局見つからず…死亡したということになったわ…。」
「っ!?」
死亡…?生きているのに…死亡…?そんな…酷すぎる…辛すぎるよ…
「母さんは…家から追い出された後はどうなったの?」
雪華が母さんに質問する
「家を追い出された後は…ずっと…外に居たわ…。帰る場所がなくなったから…。私はこのまま死ぬ…そう思った…。」
「………。」
「………。」
俺も雪華も黙って母さんの話を聞いていた。
「でもね…そんな私を…夏輝さんが助けてくれたのよ…。」
「父さんが…?」
「あぁ。何故か助けなきゃ、ってすぐ思ったんだ。そして話したんだ…目の前にいる女性と…。そして俺はこの女性は秋斗ということをすぐ信じることが出来た。秋斗と似ているところがたくさんあったし…秋斗と俺しか知らないことも知ってたことあるけど…それ以前にすぐこの女性は絶対に秋斗だと感じたんだ…。」
「その後…夏輝さんの家でお世話になったわ。夏輝さんは高校の時に一人暮らしを始めていたから、夏輝さんの家族には知らせずに二人で過ごしたわ。」
母さんと父さんにそんな過去が……母さんはそんな辛くて悲しいことに耐えてきたんだ…。
「今の私があるのも全て夏輝さんが支えてくれたから…。大変なこともたくさんあったけど…なんとか乗り越えてきたわ。高校に行けたのはあの当時あの高校の教師だった校長先生が奨学金を出してくれたから行けたのよ…。」
そうか…だから、高校の校長先生に俺のことを話したのか…。母さんと同じことが起こったから…。
「……。」
「………。」
俺は何も答えることができず、雪華は泣いてしまっていた。それくらい…衝撃が強い過去だったからだ。
「だから…あの頃からずっと夏輝さんと先生には感謝してる。そして、ずっと支えてくれた夏輝さんのことを好きになって、その後結婚した。」
「あぁ、俺が一生こいつを傍にいて守ると心に誓ってな。先生にも凄く感謝している。」
凄いや…凄すぎるよ…父さんも…母さんも…どうしてそんなに強いんだ…。
でも…なんで…そんなことを俺に…?
「なんで…そんなことを俺に話すんだ…?」
「ふふっ、相変わらず鈍い子だね♪それはね…私の過去と同じような目にあってほしくないからよ。」
「っ!?」
そうか…だから母さんは俺のことをすぐ信じてくれたのか…。母さんは…全部俺のために…。
「ありがと…母さん…父さん…」
俺は泣いた。思いっきり泣いた。父さんと母さんに感謝しながら。
「春人…辛くなったら母さんに相談しなさい♪」
「父さんも協力してやるからな。母さんの時の経験を生かしてな。」
「えっと…私もできることがあったら協力するよ♪はるちゃん♪」
「母さん…父さん…雪華…本当に…ありがと…」
三人は俺を抱きしめた。
俺はさらに涙が出た。
その日の夜…四人の家族の絆がさらに深まった。
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