夜の静かな公園で
動かなくなった女を見下ろす。
手に残る、嫌な感触。
抵抗して引っ掻かれた傷。
「ねぇ、殺しちゃったの?」
後ろから声をかけられ、現実に引き戻される。
振り返ると、小学生くらいの子どもがいた。
人がいたなんて気づかなかった。
手足は細く、目が大きい。
現場を見られてしまった。
「聞いているんだけれど」
子どもは声変わりしたばかりの少年。
平静を装って、答えるしかないようだ。
「君、早く家に帰りない。親御さんも心配しているだろう」
午後十一時半を過ぎている。
未成年が出歩いていい時間ではない。
「帰る家なんてないもの。ぼくの質問に答えてよ」
家出中なのか。
「この女の人は、倒れているんだ」
「見ればわかる。バカにしないでよ」
「俺は殺していない」
「誤魔化さないでよ。一緒にいたのに」
子どもは女を指差す。
女とのやりとりを見られていたのか。
顔から血の気が引く感覚がする。
喉が渇く。
「いつから見ていた?」
「二人が言い争っているところからだよ」
女は外で何人もの男を作っていた。
自分は、都合のいい奴隷のような扱い。
お金も絞られて、身も心も擦り減らされた。
女から離れようとしたら、泣いて縋ってくる。
挙げ句には、死ぬまで付きまとってやるなんて言われ、女の首を絞めていた。
それを、子どもは見ている。
ようやく女から解放されたというのに。
今度は違う鎖が絡みつく。
見られた以上、始末するしかない。
少年の細い首を両手で掴んだ。
「悪いな。君には死んでもらう」
少年がこちらの手首を掴む。
「ぼくを殺すつもり?」
殺されそうになっているのに、少年は冷静だ。
なにかが剥がれる音がする。
少年の細い腕の皮膚が剥がれて地面に落ちた。
よく見ると、鱗の形をしている。
少年の顔を見て、息を呑んだ。
顔の皮膚も剥がれている。
両手を少年の首から離し、尻餅をつく。
「ばっ、化け物!」
「ひどいなぁ」
少年の顔や腕の皮膚は剥がれ続けている。
鱗の一枚一枚となって。
少年が距離を詰めてきた。
逃げたいのに体が動かない。
助けを呼びたいのに声が出ない。
大きい目に見下ろされる。
「人間って、自分勝手だよな」
低く重く、少年は呟く。
最後に見たのは、鱗だ。
早朝。
公園でランニングしていた二十歳前後の青年が警察に通報した。
首を絞められ、死亡した女性が発見される。
近くで死亡した男性も発見された。
口の中に大量の鱗が詰め込まれて。




