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第一話 海羅勇は頷きをやめない

「ハァ……、所長? 何でゲームしているんですか?」


 私は呆れ果てため息をついていた。

 何に呆れているかって? それは勿論目の前にいる所長海羅勇という男に呆れている。彼は探偵事務所の所長でありながらその責務を放置している。

 なんていえば良いんだろうか? ……管理人? の方が合っているかも。


 というわけでは私は今探偵事務所の2階にある所長室のソファに横たわってゲームをしている所長にそう言ったわけだけど。この人は聞いちゃいないので……。


「ッ! あいだダダダ! ちょっと佐久間ちゃん、暴力はいけないって」


「気持ち悪い声出さないでください、所長。ついでに謝ってください」


 私は横たわっている所長のほっぺたをつねった。そしてそのまま持ち上げた。一応歳上だけど舐め腐っている態度をしているし別に良いでしょ? 的な感じでやってみた。


 まあ案の定怒っているって感じではないかな? んー、もう少し強くした方が良いかな?


「おい佐久間ちゃん、もっと強くした方がとか思っていないだろうね?」


 所長は私の方を笑いながら見ている。気持ち悪い。ただ単純にその笑顔が気持ち悪い。


「所長気持ち悪いです、謝ってください」


「そうか……でも僕は謝らないよ?」


「…………。まあ謝るのは良いですけど、私死にかけたんですよ? 心配とか無かったんですか?」


 私は目の光を消して低いトーンで所長にそう問いかけた。あのデスターという女性がいなかったら私は死んでいたかもしれない。……あっ、そういえば所長に聞こうって思ってたんだっけ。

  

 冷静に考えてみると知ってるわけなさそうだな〜、って思うけど。

 

「心配はノー」


「そうですね、分かっていました。そうですね……、話は変わりますが、所長はデスターという人間を知っていますか?」


 私は首を傾げて無垢な感じで言ってみた。絶対気持ち悪い反応をする。


「ふっ……ふふ、可愛いね〜佐久間ちゃん。知らないよ〜」


「げっ……。気持ち悪いだけではなく知らないなんて、無能ですね」


 言い過ぎたかもしれない。けどこれは生で見なければ分からない気持ち悪さなの。本当に。言葉だけでは表せない……なんて言うんだろう、……ホントに痴漢をしてくるおっさんみたいな……いや? 違うかな? もっと独特な何かが……。


 まあ気持ち悪いと言うのはよしとしよう。なんていうのかな? これだけの嫌う点が所長にあっても信頼できてなんだかんだこの探偵事務所にいるのは所長が強いからなんだよね。


 所長だけじゃなくて他の探偵たちも。私はそこまでだけど。


 私の能力は光の増幅で太陽とかライトとかがある場所じゃないと本領発揮できない。だから路地裏に入った時能力使えなかったんだけど……本当になんで私の能力こんな地味で弱いんだろう……。他のメンバーは強いのに。


 所長の能力がその最たる例だしね。 

 所長の能力は攻撃を反射する能力で、それは相手の攻撃の威力によって反射威力も変動する。しかも反射する度に反射威力も増大していく。正直言って強いよね、最強かもしれない。あと複雑な条件無しに反射できるのも強い。ホントに。


 で、他のメンバーの能力とかでも桜巧(さくらたくみ)っていう15歳の男の子がいるんだけど、巧もアクセルっていう移動速度とか攻撃速度とかを音速レベルまで上げることができるっていう……。銃の弾とか剣撃とか色々な物に対応しているのも良い点だね。


 こうやって思い返して見るとやっぱり私の能力が劣って見える。しかも何が嫌かって、私の能力って光の増幅だから目眩ましにしか使えないっていうね。


 私ももっと戦闘系の能力が欲しかった……。


 と、自分話はやめておいて。所長はソファから降りる気はなさそうだし……どうしようかな?


「佐久間ちゃん? もし暇なら信吾(しんご)の用事に付き合ってくれないかな?」


「信吾さんにですか? なんで私が」


 信吾さん……葛城信吾、探偵事務所のナンバー2で能力はフォトンフレア、事務所の中で説明が面倒くさい能力筆頭。だから正直説明は本人に聞きたい、他人がするもんじゃないというかなんというか……。


 金髪でなんかヤクザって感じの服を着ている人。とても背が高くて、筋肉凄くて、怖そうだけど優しい、そしてカッコいい。昔の私なら惚れていたかも、アイドルを推す感じで。


 所長も同じ金髪なのに何故……。まあ見た目はイケメンなんだけど。


「まあ用は本人から聞きます。行ってきます」


「うん、行ってらっしゃー」


 私は所長が言い切る前にドアを開けて外に出てすぐに閉めた。


「……。行こうか」


 私は事務所の階段を降りて1階のリビングに向かった。そしてそこには丁度信吾さんがいた。相変わらずカッコいいな〜、って感想が出てくる。それくらいにカッコいい。


「お、来たか。上の会話デカすぎて聞こえてたぞ」


 声もまたベテランって感じがして渋いし、カッコいい。改めてなんでこの人この探偵事務所にいるんだろう? と思ってしまう。


「お久しぶりです、信吾さん。とてと会いたかったです」


 信吾さんと会うのは結構久しぶりだった。大体半年くらい会ってなかったから。こう久しぶりに会うとお兄さん感もあるというか……まあ私の感想なんて誰も聞きたくないだろうし早く要件を聞こう。


「信吾さん、要件ってなんなんですか? 私気になるんですけど」


「あー、そういえば言ってなかったか。要件は最近起きてる事件に絡んでる女のことだ」


「女?」


 それってもしかして……。


「それってもしかして、デスターって女の人ですか?」


 私は恐る恐るではあるけど信吾さんに聞いた。すると、それは合っていたようで、信吾さんは笑った。


「ああ、そうだ。お前良く知ってたな? 何処で知ったんだ?」


「えーっと、助けてもらったんです。私」


「助けてもらっただぁ? 嘘だろ? アイツが?」


 私は困惑した。アイツって……急に知り合いみたいな反応を……、私は「知り合いなんですか?」と問う。


「それがだな……」


 信吾さんは言葉を詰まらせた。

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