己のことは棚にあげて言う・・・それが私である。
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/14(土)投稿予定です。
「はははっ、君のお父上は本当に信心深い方だね。」
ドゥルー神父は普段のやりとりが想像できたのか笑いが止まらない。
そんな彼を見て、ブスッとアイリスは膨れっ面になった。
「神父様、笑いすぎだっての。」
「あぁ、ごめんごめん。でも、想像ができてしまってね。前のミサの時なんか祈りの間に眠りこけててゲンコツを食らっていたからね。」
「あぁ、あれも痛かったなぁ。」
あの時の事を思い出しアイリスは可愛い顔を歪める。何せ村中の人間に丸聞こえの鉄拳制裁とお説教をくらい大恥をかいた。
「まぁそれだけ真剣に神のために祈って下さるというのは嬉しい事です。」
そう言って微笑む神父に対し、アイリスは心の中では不思議そうにしている。
信心深い父のことは褒めるがそれだけで全く逆のアイリスのことを叱ることはない。
神父だったらもう少し説教してもいいじゃないのか?と逆にアイリスの方がそう思ってしまう。
まぁ、だからといって説教なんかされたくはないが。
「正直私は信仰心の度合いは個人の心のままにであれば良いと思っているんですよ。」
思っていることを見透かしたようにドゥルーは話す。
「どのような人でも生きる。それこそが神は誰もが等しく見守っていることなんですから。それに貴女はそんな風にふざけていても結局はきちんとお祈りしているじゃないですか。それで十分ですよ。」
まぁ渋々だけどねと心の中で呟く。それに別に神が嫌いというわけではない。
前世は仏や神に手を合わせる心は一応育んでいたし・・・でも、だからといって憂いの元凶である場所に近づきたくはないんだよなぁ。
「けれど、確かにそろそろアイリスも儀式は行うべきだと私も思うけどね。」
複雑な心境でいる中ドゥルーの声が聞こえ、思わず小さく呻いた。
「やっぱりしないとダメかドゥルー神父。」
「そうだね・・・君がなんで避けたがるのかきっと理由は何かあるんだろうけどこれは絶対に避けて通れないね。」
キッパリと言われ、アイリスは大きく落胆し項垂れる。
「でも、もしかしたら神が何かしら良い方向へ導いて行くれるかもしれないよ?」
「そうかなぁ・・。」
「えぇ、それに何があっても君ならなんとかしちゃうんじゃないですか?」
そこまで言われてアイリスは上を見上げ、しばらくそのまま空を見ていたが観念したように大きくため息を吐いた。
ドゥルー神父の言葉に観念したわけである。
「・・・わかったよ、今日受けるけどいい?ドゥルー神父。」
「えぇ、いいですよ勿論。」
結果が変わるかわ分からない・・・だけど、このままのらりくらりと躱した所で結局はしなくてはいけないのなら今村の人間が誰もいない今日の方がいいだろうという判断だった。
「そうそう、実は今日もう1人儀式を受ける子がいるんだよ。」
「え?」
なんだって?
「あぁ、来たみたいだ。」
そう言っていると一つの馬車がやってくるのが見えた。
え?どう見ても貴族の馬車じゃん。
見た目の派手さからどんな人物なのか理解したアイリスは呆然とその場所を見やる。
速度を落として2人の前に止まったその馬車の扉が魔法の力で開くと誰から顔を出した。
立っていたのは派手な服装の女の子だった。
へぇさすが貴族のお嬢様だな・・・結構可愛いーーー。
「叔父様!誰よその汚らしい女!」
「口悪りぃなこのお嬢様。」
開口一番に出てきた卑下する言葉にアイリスもまた暴言でそのまま返した。
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