自己最高新記録で教会に到着!
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/7(土)投稿予定です。
異例の脱兎の如くな速さで村をかけ抜け山の上にそびえ立つ教会へとアイリスはやって来た。
くそっ!親父があまりにも怖くてつい教会まで一直線しちまった・・・。
「おや?アイリスではないですか?」
ゼーハーっと肩で息をするアイリスをいち早く見つけたのはこの村の教会を管理している神父であった。
初老な年齢でもある彼ではなるが、歳若く見え神父だというに何処か色気のある人物だ。
でもだからって彼自身が爛れた人ではないと言うことをアイリスも村の人間誰もが理解している。
彼は博識で逆に男女関係などを自分から意識的に遠ざけているからだ。
「あ!ドゥルーのおっちゃん!あ!いやドゥルー神父こんちわ!」
「はい、こんにちは。そんなに急いでどうしたんです?・・・まさか!誰か急患ですか!?」
アイリスの異様な様子にドゥルーはそう思い至り焦りを見せたが、アイリスはこれを否定し首を横に振る。
「違うんだよー、親父の鉄拳制裁が怖くて急いで来たんだよ。」
「あぁ、なんだ。そう言う事なんですね。」
自分の考えたことが当たらなかったことにドゥルーは心底ホッとする。
この笑みで何人の淑女を籠絡させたんだろうな・・・と心の中で思っていながらアイリスはハーッと最後の大きな深呼吸をした。
「それより神父様、今日はどうしたんだよ?確かこの時間って祈祷の時間で教会の警備員になっているのに?」
「ふふっ、それって貴女で言うにぃとということですか?」
「そう!それ!」
ちょうど一年前ある日、アイリスはふと教会に立ち寄った時に神父が礼拝堂ではなくその横の小さな部屋で祈祷している姿が窓から見えたので、つい好奇心でここに立ち寄ったのだ。
そのそも教会まで来た理由が、まぁ剣術で少しヘマをして両親を誤魔化すため教会の山に自制する傷に効く薬草を取りに行ったためだったーーーーまぁ、そんなことは置いといてだ。
静かにジッと祈祷している彼を見て、やべーな全然動かねぇ、もはや石化状態かなど、窓からジッと見ていると心底驚いたというか、何処かしら少し青白い顔をさせていた神父と目があった。
やっぱり人間だったと思いつつも慌てふためく神父を見ていて場違いにもアイリスは前世の家の中にいる人のイメージと合致してしまったのである。
そう思った瞬間にはついポロリと「まさか教会に自宅警備員がいた。」なんて言葉を漏らしていた。
ちょうど窓も開いていたためかその言葉を聞いたドゥルーは驚くのをやめ、アイリスに「そのジタクケイビインというのは?」と問われ、教えたのがきっかけで神父とは仲良くなった、というわけである。
まぁそれだけだじゃなく、見た目と中身のギャップが伴う者同士仲良くなったっていうのが大きいけど。
「それはそうと、そろそろ儀式を行う気になったんですか?」
「げ。」
言われてアイリスは露骨に嫌な顔をする。
神聖なる神の儀式にこんな顔をすれば普通は怒るのだろうが、神父は何も咎めず寧ろ声を立てて笑っていた。
「なるほど、その態度だったからお父上に怒られたんですね。」
「察しが良過ぎじゃね、ドゥルー神父。」
苦虫を噛んだような顔でアイリスはこれまた嫌そうに返事をした。
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