教会で能力ゲット!したくないんだよなぁ・・・
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は5/30(土)投稿予定です。
「まぁいいや・・・それより姉貴今日はちゃんと行けよ?」
「え?どこに?」
弟の言葉に父親とハグをしていたアイリスはキョトンとした顔で弟を見つめる。
所謂あざとい顔で、である。
そんな調子の姉の様子にラーグは若干苛立ちを覚えたのは仕方ないと自分に言い聞かせる。
「何処にって・・・教会だよ教会!」
「あぁ!あー・・・教会ね。」
「姉貴だけだよ洗礼の儀が終わってないの。いい加減教会に行って洗礼をもらわないと。」
洗礼とはこの世界で生まれた子供達が12歳の歳を迎えると教会で洗礼を受け何かしらの能力を授かることができる。
身体能力、魔法、技術ーーー。
多岐にわたるその洗礼後の能力を持って子供達は将来の職業などを決めるので人生の岐路でもあるその儀式を誰もが心待ちにし、12歳になれば我先にと受けたがる。
だが、アイリスはその洗礼の儀式を受ける資格を持ってから早3ヶ月も経っていた。
両親にさっきのように毎週行っている洗礼の儀式の日に姉について話しをするが、心配するどころかどこか楽観視して行きたい時に行くだろう、なんてお気楽な返事が返って来るだけで当てにならない。
のらりくらりと教会に行こうとしない姉の様子に、とうとうラーグは心配しこうして声をかけるようになったがそれでもアイリスは何故か行く気がない。
「洗礼の儀を受けたら今の弓の扱いとか身体能力が上がるかもしれないのに、なんでそんなに行くの避けてんだよ。」
「まぁ・・・避けているって言えば避けてるけど・・・。」
そんな簡単な話しじゃないんだよなぁとアイリスは心の中で愚痴る。
アイリスという少女が乙女ゲームの主人公になった理由が12歳の時、そうまさに教会の洗礼を受けたからである。
主人公アイリスは教会で祈りを捧げた時例の能力が授かる。そのせいで彼女は貴族の学舎の門をくぐり、そのせいで面倒な同年代の貴族の人間と関わることになった。
その原因の一端である洗礼の儀式を受けないといけないってなると気が引けるんだよなぁ・・・。
「え?マジで避けてんの?何で?」
アイリスの呟いた言葉にラーグは信じられないものを見る目で自分を見ていることに気がつき、アイリスもまた困惑する。
「いやぁ・・・例えばだよ?自分の期待している能力が授かれなかったら、なんか嫌じゃん。それこそ後で面倒が起こりそうな能力とかだったらどうすんの?」
「とうとう神様の授かりものを面倒なものとか言い出した・・・。」
「いや、授かり物が面倒というわけじゃなくてな・・・」
教会信者でもあるこの国の民、そのうちの1人でもある弟にドン引きされる。
アイリスはきっと正直に話したところで理解してもらえないだろうしどうしたもんかなと思っていると後ろから肩を叩かれた。
振り返って見上げると父が若干怖い顔して立っていた。
やべっ・・・この顔怒ってるわ。
何度かこの顔を見てたことがあるアイリスがやばいと思っていると、父がゆっくりと口を開けた。
「アイリス、まさか本当にそんなことを思っている・・・ってことはないよな?」
「お、親父これにはわけが・・・。」
弁解しようと口を開いたアイリスだったが、先にユーグがクワッと口を開けた。
「お前には考えがあるからと思い今まで何もいわなかったが、そんな風に思っているならお父さんも遠慮しない。アイリス。今すぐ・・・今すぐ!教会に行ってきなさい!!」
有無を言わせない口調で言われたアイリスはしくじったと思いながらも父にこれ以上怒られるのは嫌で「今すぐ行ってきます!」と言いながら走って出て行った。
だって、親父の鉄拳は痛ってえんだもん!
叩かれていないがその事を思い出し、アイリスはブルリと身体を震わせながら走るスピードを早めたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。