自分も同性だけど、女のヒステリックな声をどうやって出しているのか今だに謎。
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は10/18(土)投稿予定です。
上司という名の公爵に協力の言質を取ったことで取り敢えず私は波風立たせないように静かに行動した。
別にちょっかいかけてもいいが、それだと公爵様の要望には応えられないだろう。
公爵家にかかっていた魅了を解除した途端、温厚な目だった目の色が瞬時に変わったので恐らくは本来の嫌悪と憎悪を認識したに違いない。
地獄の苦しみを与えないことには怒りを鎮めることは出来そうにないという。
彼にはその滲ませた怒りを隠すように魔法で認識魔法をかけ、数人、信頼のおける従者やメイド達に公爵と同じそれを施す。
何故認識魔法をかけたかって?
皆一同正気を取り戻した後の怒りは半端なかった、とだけ教えておこう。
魅了魔法は要は自分の好感度を持って魅了をかける、つまり普通の好感度が親愛になるという増幅魔法なので今好感度がゼロどころかマイナスになっている彼らには彼女の魔法は2度と効かないだろう。
という事で、大きなバックとサポーターを味方につけた私は今日も今日とて夫人と一緒に過ごした。
『イヤァァ!!お願いもうやめてぇ!!』
もう、五月蝿いな・・・。
ある夜、夫人療養の部屋に姿を見せないよう認識阻害魔法をかけ、今日も夫人のベッドがよく見える椅子に座りながら誰にも聞こえてはいない自分のみ聞いているその金切り声に、アイリスは心底嫌そうな顔をした。でもこれも通る道だと自分に言い聞かせながら自分の頭の中に語りかける。
ーこれで何回目?イヤイヤだけ言っていないで少しは現実に目を向けなよ。ー
早くも1週間過ぎたアイリスはこのような夫人とのやり取りを幾度となくしている。
正直私がノイローゼになりそう・・・。
エグエグ泣いている夫人にはぁとため息を吐く。
ー泣いたって、あんたをあの女が殺そうとしている事実変わんないだろ?見てみなよ。ー
そう言ってアイリスは目の前光景に指差す。
そこには胸を抑え、病床で苦しむ夫人の姿である。
『そんな、あの子がそんな私をっ』
チラリと夫人は自分の姿のそれを見やる。頬は以前よりも痩け痩せ細った哀れな女性が自分がたどり着くはずだった未来だと信じたくはなかった。
ー見てみなよ、あいつ。私が魔法で隠れていることに気が付かないでダミー人形見て笑っているけど?ー
そしてもう1人の人物、例の女が心配そうに声をかけてがはいるが表情は笑ったままだ。苦しむ夫人をしっかりと見て、彼女は人呼んでくると言って部屋を出ていく。勿論、その後に誰かが駆けつけくる事はない。
何度も反復させて見せる光景に夫人は時空の中で何度も涙を流す。
髪の毛数本で作り出した夫人は勿論本物ではないしそこに夫人の記憶も感情も思考もない、だからこうして私が近くで操っているわけだ。だが作られた素である遺伝子は夫人本物なのであれは夫人のあの時の肉体に近い状態のモノだ。故に例の薬を服用させ続けた事であのように弱っている、それを洗脳された夫人に見せないと洗脳は解けない。
お陰で少しは現実を見るようになってはきているけど、最初なんて全否定で金切り声で私を許さないとか叫んでたもんな?まぁそれだけ体調が良くなってきている証拠でもあるんだろうけど。
『貴方・・・コーデリアちゃん・・・』
家族の名を呼んでいる夫人にそろそろ限界かとアイリスは重たい腰を上げた。
はいはい、公爵様に慰めてもらってくださいよ連れていくから。
ため息をつきながら部屋を後にしいつものように公爵の部屋へ向かう、そのルーティンを今日も送るはずだった。
・・・が。
・・・げ、鉢合わせかよ。
もう直ぐ公爵の部屋に着くところで何とそこで例の女とばったり廊下で出くわしてしまったのである。
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