嫌な人間は自信の無い人間を上手く付け入るんだよな。
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/27(土)投稿予定です。
アイリスはすいすいと、公爵家の屋敷の一番奥、陽当たりの良い廊下を歩いていく。
その間何度もメイド達とすれ違うが誰にも気が付かれる事なくアイリスは通り過ぎる。
すごいな、自分の認識をここまで感知させないなんて。
魔法ではなく自分のステータスである存在値をほぼ0にした、その結果がこれである。
腕力をどうにかしたいと思ってのステータス改ざん方法を編み出したわけだけどまさかどんなものでも変えれるってヤバいな、人間業じゃない。
まぁだからといってどうするわけでもないけど、増長は出来ないし・・・まぁこれで便利なのは魔法関連の検知されないことかな。
魔法だとすぐに探知機の魔石が反応するからとまたメイド達とすれ違ったアイリスはある物をじっと見る。
通り過ぎるまでメイド達の胸元に輝く反応しない魔石を横目で見ながらアイリスはメイド全員に高価な魔石を支給している公爵家の財力にびびる。
あれ一つでどれだけの価値があるか。前に自慢していたメイドの話によるとどうやらあれも退職金の一つになるらしく誰もが大事にしているので正真正銘肌身離さず持っているというわけだ。
人の心理をうまいこと使って歩く探知機を作り出した事に素直にすげぇなと思っていると、どうやら目的地についたらしくアイリスは立ち止まる。
陽当たりの良い庭へ出た先の邸の離れの扉の前にたったアイリスはノックしてから入る。
「・・・今日はもう、来ないでって・・・言ったでしょ」
入るや否やベッドに横になって蹲っている人が目に入る。
くぐもった声で辛そうに息をするその女性は、アイリスをメイドだと思い冷たくあしらったが、アイリスは気にせず彼女のサイドテーブルに置いてある薬を飲んだ後の広げてある紙の包みを見た。
「これを渡したのはマナー講師の先生ですか?」
「?誰・・・?」
聞いたことのない声に女性は驚いてゆっくりとだが振り返ってアイリスの方を見る。
「初めまして公爵夫人、アイリスと言います。」
ペコリとお辞儀をして夫人を見たが、やってきたアイリスに対し困惑しているようだった。
無理もない、今まで挨拶もできずこの初対面。困惑しない方がおかしいだろう。
まぁでも単刀直入に言うしかないか、何せこの人の身体は限界だ。
細い身体に青白く、以前は美しい人だと思わせる髪の質も悪く顔も頬こけた顔。
辛うじて血色良く見えるよう女心でしたのであろう化粧を施しているが、薄っすらとしたそれも浮いて見えるほどだった。
「このままこれを飲むと死ぬよ、それでも良いの?」
突然言い放ったアイリスの言葉に最初理解してなかったようだったが、理解するや否や夫人は怖い顔を見せた。
「何ですって?貴女、私の友人が私を殺そうとしていると言うの?」
声は小さいが覇気の持った声色で夫人はアイリスを睨んだ。
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