嘘だろ、お前ら正気か?
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は8/31(日)投稿予定です。
不機嫌で渋々、ほんとーに渋々に小さく頷いたコーデリアの了承を得たアイリスは、公爵家のひとつロンマンディリ家へと居候することとなった。
王都で一夜夜を明かした後数日かけて移動し、初めて見た公爵家の圧倒的な財力の象徴を物語る屋敷を前にして圧倒する。公爵から保護対象であることは伏せ後見人として預かったと使用人達に紹介してもらい、それから講師となる家庭教師も紹介してもらう。
様々な座学の講師に自分が治安維持の生業もしていたのを話すと剣術も教えてくれる事になり、内心自分時間無いなと思っていると、最後にマナー講師の先生を紹介してもらった。
「マティアと言いますわ。2年間しっかり教えますか頑張ってついて来て下さいね。」
にこりと微笑みそういって来たマティア夫人を見て、アイリスは一瞬だけ目を細める。
こいつ、悪どい女じゃん。
微笑む笑みの奥底に侮蔑と敵意が潜んでいるのをアイリスは感じ取る。
能力値が大幅に上がってから相手のこういう奥底に潜む本心も理解できる様になっていたアイリスはポーカーフェイスのままもしかしたら案外ここも面倒くさい場所なのかもしれないと思っていると、ふと気になり公爵に声をかける。
「あの、出来れば奥様にもご挨拶したいんだ・・・ですけど。」
「あぁ、妻は昔から病弱でね、最近は寝たきりなんだよ。」
どうにかして治したいとは思っているんだがと悲しげに話す公爵に、だからコーデリアは屋敷に帰った途端急ぐ様に中へ入って行ったのかと納得しつつ、公爵に相打ちしていると急にマティア夫人が大袈裟に涙を流し始めた。
「お労しいです、旦那様。私も微力ながら奥様の手助けできる様に力になりますわ。」
「そうかい、それはありがとう夫人。妻の友人として彼女の力になってあげてくれ。」
公爵の遠回しな言い方にマティア夫人はひくりと口元が引き攣るのをアイリスは見逃さなかった。
「では、私はこの後お嬢様の勉強を見なければなりませんので。」
そう言って数人メイドを連れて出て行くのを見送る。
あのメイド達も同じムジナか・・・、いや、1人は違うか。
彼女の退出を皮切りに側近の従者と騎士隊長を残して出て行ったのを確認して、アイリスは防音魔法を展開する。
分かっていたのか公爵は驚くこともなくこちらを朗らかに見ていた。
「あの、公爵様、あの女ヤバいと思うんだけど放って置いていいの?どう見ても女として公爵様見てるんだけど。」
急に砕けたもに言いに従者や騎士団長はギョッとしたが公爵は何も注意する事なく、やはり分かってしまうかと小さくため息をした。
「君からみてもそうなら早急に対処すべきなんだろうね。しかし証拠がない、彼女は巧妙でねなかなか尻尾を出さないんだよ。こちらから追い出すようなヘマはしない、彼女を信じている妻や娘は彼女を追い出すのを反対しているしね。」
妻の容態が良くならないのも彼女のせいだと思っているんだがと付け加えたのでアイリスはギョッとする。
「まさか毒盛られてんの?」
「いや、毒の検出はない。彼女の持ってくるものは薬だ、毒性はなく無害なものだと結果は出ていた。しかし、妻が薬を飲めば体調を崩しやすい状態になる。毒ではない、でも何かしている事は分かっているんだ。」
と、アイリスは何か分かりそうかと声を上げた。
「公爵様、だから私をここに連れて来たんですね。」
「おや、もうバレてしまったのか。」
隠さずに公爵はそう言ってのけた。
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