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魔法薬師シェリー=グリーンのパン屋めぐり  作者: 光延ミトジ
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10/26

第10話:耽溺の手前にて:Sideヴァン


 ヴァン=クラムから見たシェリー=グリーンは、苦しみの渦中から抜け出しきれていない女だ。


 詳細な過去を聞いたわけではないが、搾取と言っても過言ではない、散々な結婚生活を送っていたらしい。心身共に影響が出てしまう日々を三年も過ごし、夫が愛人と隠し子をつれてきたところで、ようやく『逃げる』という選択肢がすぐ隣にあったことに気付いたそうだ。


 その話を聞いたヴァンは、気付くのに時間がかかりすぎだと思った。だがよくよく考えてみれば、子供の頃から知る相手との生活だ。少しずつ植え付けられる常識や価値観の中で、抑圧され、支配されながら育った少女が、女性と呼ばれる年齢に達してから『逃げる』という選択肢を見つけるのは、なかなか難しいことなのかもしれない。


 彼女はそんな生活から逃げて今がある、と思っている。けれどヴァンから見れば、シェリーは逃げきれてはいない。足枷に繋がった鎖は未だ、どこかの町にいる、なんとかという家に繋がっているのだろう。


「クロックムッシュ、綺麗に焼けてるわ。半分に切るわね」

「ああ」


 その会話をしたあと、ヴァンの前に出されたクロックムッシュは半分と言わず、三分の二以上もあった。彼女の皿のクロックムッシュは、ヴァンやライルなら大きなひと口で食べられる程度の大きさだ。小食で、もしかすると食への関心が薄いのかと考えたこともあるが、根本にあるのはそういうことではないだろう。


 献身が染みついているのだ。見返りを求めない奉仕精神――言葉を選ばないなら、奴隷根性を捨て切れていない。しかもそれに気付いていないときた。なんとも哀れで、酷くもどかしく、彼女をそんな目に遭わせていた義理の家族に怒りを覚える……のと同時に、こうはなるまいと己を省みる。


 よその家のことをどうこう言えるような人格者でも、まともな父親でもない。息子に冒険者としてのあれこれは教え込んでいるが、情操教育とでもいうのか、他人との付き合い方はまともに教えてやれていなかった。ヴァン自身がここ十数年、ロクな人付き合いをしていないということもある。だが、しないということと、できないというのは違うのだ。


 彼女と同居をはじめてから、わずかにではあるが他人を前にした時の息子――ライルの反応はマシになってきている。自分よりも少し年上の異性という、十代の少年にとって関わる難易度が高い相手との同居は、いい意味の劇薬となったようだ。


 シェリーは、人を見る目があるグローリアス夫人が家を貸すと認めた人間である。出会ってすぐの頃から、息子と彼女が一緒にいても、なんの心配も懸念もなかった。


 切り分けたことでホワイトソースとチーズがこぼれるクロックムッシュを頬張りながら、それとなくライルの様子を窺う。目つきが悪く見えてしまう三白眼を見開き、キラキラ輝かせながらクロックムッシュにかぶりついていた。パンを咀嚼し、シェリーが作ったトマトスープを飲み、またクロックムッシュをパクパクと食べている。


「う、まい……!」


 片手にスプーンを、もう片手に歯型のついたクロックムッシュを持ったライルは感動で震えており、そんな少年を、シェリーが優しい眼差しで見つめていた。ヴァンとシェリーの関係を知らない息子は、彼女を姉のように慕っている。まだ会話はたどたどしく、動きにぎこちなさこそあるものの、同じ空間で生活する違和感はとっくになくなっているようだ。


 冒険者として活動しているとはいえ、ライルの交友関係は非常に狭い。父親であるヴァンを除けば、せいぜいパーティを組んでいる同年代の少年ふたりと、引率の冒険者ひとりくらいだろう。


 子供の頃から冒険者を目指す少年少女には、一人前になるまでに、およそふたつの道がある。ひとつは大人の冒険者について回り、教えを乞う弟子の形で成長していく道だ。ヴァンが冒険者を休業するようになった三年ほど前まで、ライルはその道を辿っていた。


 もうひとつは、同年代の子供同士で三人から四人のパーティを組み、依頼をこなしつつ経験を積んでいく道だ。この場合、口は出さないが見守る大人の冒険者がひとりないしふたりつき、基本的に依頼の報酬は折半となる。ヴァンは休業を決めた時、知人の冒険者であるミィンにライルを任せ、同年代の子供のいるパーティに息子を入れてもらった。


 パーティ内での人づき合いはあまり心配していなかった。ライルは口下手なだけで気弱な性格ではない。どれだけ喋れるかよりも、どれだけ動けるかのほうが重視される冒険者の世界で、歳の割りに腕の立つ息子は、それなりに上手くやっているようだ。


 スープの大きなベーコンを咀嚼した息子が、ふと思い出したように「そうだ」と声を漏らした。


「オヤジ、ミィンさんが近いうちに来るって言ってたぞ」

「あ? なんで?」

「なんか、相談あるって。魔獣がかっせーかしてる? とかなんとか?」

「……は?」


 ライルはなんでもないように言うと、クロックムッシュの最後のひと欠片を口に放り込み、今度は三角形のパンにかぶりついた。サーモンとチーズが入っているらしい。ライルは「う、うまい!」と再び目を輝かせている。


 ヴァンはそんな息子を半目で見ると、呆れたように息を吐いた。


「おい、コラ、バカ息子」

「な!? バカ息子!? なんだ急に!?」

「そういう話は帰ってきてすぐしねえか」

「ぐぬぅ……」


 かぶりついていたパンを口から離して唸っているところを見る限り、自分が悪いと思ってはいるのだろう。ミィンからの言伝をすっかり忘れていたようだ。


「魔獣の活性化って、それ『魔獣の氾濫』が近いってこと?」


 それまで黙って食事をしていたシェリーが口を開いた。


「ド三流の冒険者の見立てだったら一蹴すりゃいいが、ミィンの見立てなら、まず間違いなく起こるだろうな」


 魔獣の氾濫――スタンピード。


 暴走した魔獣が種族を越えて群れを成し、大挙する現象のことだ。自我を完全に失った魔獣は通常時よりも力が増幅し、国から正規兵が派遣されるほどの災害である。各所の冒険者ギルドにも当該地域の領主などにより鎮圧を目的とした緊急クエストが発注され、Bランク以上の冒険者たちは優先して受注することが推奨されていた。


 魔獣の氾濫はめったに起きることではない。数年に一度、国のどこかで不意に発生し、予測するのは難しかった。だが魔獣が活性化し、普通の獣が消え、土地の空気が澱んでいくのを、ある程度の実力者は気付き、それを魔獣の氾濫の前兆として捉える。


 ミィンはヴァンよりも少し若い、三十代の冒険者だ。物腰柔らかでどこかの騎士のような雰囲気の優男だが、冒険者歴は二十年を超えるベテランである。そんな男が魔獣の活性化を感じたというのなら、気のせいだろうと一蹴できる話ではない。


 冒険者であるライルよりも、シェリーは真剣な顔をしていた。


「けどま、今すぐってこたぁなさそうだ。そういう状況なら、コイツに伝言頼まねえで、本人がすぐ俺ンとこ来るだろうしな」

「そう……」

「何か気になることでもあるのか?」

「魔獣の氾濫が起こるなら、その前に魔力回復薬を用意しておいたほうがいいわよね」

「まあ、需要は増えるだろうな。ひと儲けできるぞ」


 魔法による戦闘が増えれば、消費した魔力を回復する薬はいくらでも売れる。ヴァンも休業する前、魔獣の氾濫の鎮圧依頼を請けた時、魔力回復薬には随分と世話になった。商業ギルドも魔法薬の販売店も、個人経営の魔法薬師も、ここぞとばかりに値上げしていたが、それでも売れに売れていたのを覚えている。


 魔獣の氾濫の鎮圧の成功報酬は出来高払いだ。高めの魔力回復薬を買ってでも、戦闘を続行して魔獣を討伐したほうが、最終的な利益は多い。


「普段より高値でも売れる。稼ぎ時だ」


 ヴァンが二ッと笑って言えば、シェリーは苦笑した。


「お金儲けをしたいわけじゃないわ」

「ああ? バカ言うな。金なんざな、あって困るもんじゃねえ。稼げる時に稼いでおかねえと、いつ必要になるかわかんねえだろ?」

「それはそうかもしれないけど……」


 言葉を濁しながら、彼女が一瞬ライルを見たのを、見逃さない。


「コイツがどうかしたか?」

「むぐ!?」


 話についていけなくなったのか、食欲に負けたのか、息子はもういくつ目なのかもわからない三角パンを食べていた。頬袋などあるはずもないのに、ライルの頬はぷっくりと膨らんでいる。


 シェリーはなんでわかったのかと言わんばかりに目をまたたかせ、それから、眉尻を下げて困ったように微笑んだ。


「ライルくん、もうすぐBランクに上がるかもしれないんでしょう? 上がらなくても、師匠のミィンさんは、彼にも魔獣の氾濫の予兆があることを隠そうとしていないし……その時が来たら、緊急クエストを請けるのよね……?」


 彼女に問われたライルは、口の中の夕飯を飲み込み、興奮した様子で頷いた。


「う……うんっ……おれ、魔獣の討伐行く……!」

「ええ、そうだと思ったわ」


 シェリーの青灰色の目がやわく細められる。


「だから、いっぱい持って行ってほしくて。魔力回復薬も、それ以外の魔法薬も」


 ライルのことが心配なのだと、言葉を聞かずともわかった。怪我をせず、戦果を挙げておいでと言っているのだ。もっとも、情緒が同年代の平均よりも未成熟な息子は、わかっているのかいないのか、明るい顔でスプーンを高くつきあげた。


「ぁ、ありがと……っ! 魔法薬、いっぱい、持ってく……!」

「おい、スプーンで遊ぶな」

「遊んでねえ!」

「じゃあ黙って食え」

「食うよ!」


 言うが早いか、ライルはスープの中のベーコンの塊を口に入れる。ライルが美味しそうに頬張る様子を見るシェリーを、ヴァンは見ていた。


 出会って一年が過ぎても判断しきれない。彼女のそれが生まれ持った優しさなのか、虐げられる内に染みついた献身なのか。後者であるのなら、面白くない。重い身体を引きずってでもぶん殴りに行きてえなあと思うくらい、本当に面白くなかった――


 ――夕食を終え、煙草を何本か吸い、シャワーを浴びて、また煙草の煙を燻らせながら買ってきた酒を飲む。そうしている内に夏の夜は刻々と更けていき、彼以外の住人が眠った家の中は静まり返る。


 最初に眠るのはライルだ。今頃、部屋のベッドでいびきをかきながら、爆睡していることだろう。昔から寝相が悪い子供だった。冬は毛布にくるまっている分まだいいが、この季節になるとベッドから落ちることもしばしばある。そして、落ちても起きないのだから困ったものだ。睡眠時の鈍感さは冒険者にとっていいものではない。成長期の間は見逃すがそれ以降は叩き起こす予定だ。


 関係を持ちはじめてから気付いたが、シェリーはライルと逆で寝つきが悪い。小さく身体を丸め、息を潜めて浅い眠りに落ちるのを待っている。そして微かな物音でも目を覚まし、朝は日が昇る前に意識を覚醒させていた。まともな休息すら取れない生活だったのだとしたら、飛び出して正解だ。


(死んでたろうな。あと半年くらいで)


 初めて会った時の様子を思い出す。


 青白い顔、水分が足りずに割れた唇、艶がなくパサついた髪――身体全体はもちろん、指先まで細く、骨に直接皮膚を巻きつけているだけのようだった。それでも青灰色の目の光は失われておらず、解放感と今後の日々への期待で輝いていて――目が合った瞬間、ヴァンはシェリー=グリーンを気に入った。


 煙草の火を消し、テーブルの上を軽く片付ける。足音を立てず、気配を殺して彼女の部屋の前に行けば、中からまだ起きている気配を感じた。


 コン、と一度だけノックする。中で物音がして、近付いてくる足音が聞こえ――扉が開いた。


「ヴァンさん? どうしたの?」


 すでに寝支度を終えていたシェリーは、薄手の寝間着を身に纏っている。簡素なワンピースのような服で、首回りが大きく開いていた。


 細い肩と浮き出た鎖骨に昨夜の情事を思い出す。


 この一年の間に潤いを取り戻した若い肌は、ヴァンの堅い手の平に吸いつくように瑞々しい。恥じらう素振りを見せながらも、一枚ずつそっと花弁をめくるように愛撫していけば、白い肌は淡い桃色にほんのりと色づいてくる。肌を舐めれば微かな甘さすら感じ、執拗なほど舌を這わせてしまう。


 元夫との雑な性行為は苦しみと不快感ばかりがあったそうだが、彼女の反応に男を倦厭するものはない。最初のほうこそ緊張で硬くなっていたが、生娘を抱くように丁寧に、ゆっくりとコトを進めていけば、シェリーの身体はだんだん開かれていった。声を殺して、耐え忍ぶかのような表情が崩れていき、艶のある声を漏れ聞いた時には達成感すらあった。


 一度でも快楽を知った、女の若い身体は正直だ。ヴァンの与える快感をひとつずつ拾って、もっともっとと強請り、更なる快楽を期待する。その期待を裏切らないように、四十過ぎの男は培ってきた手練手管を惜しまず駆使した。


 本人に自覚はないらしいが、シェリー=グリーンは男の目を惹く女だ。楚々とした品のある風貌はもちろん、何よりも彼女には独特な空気がある。捨て切れない薄暗い過去のせいだろう。悲しみの香りが滲み、薄幸の雰囲気を纏う若い女には――妙に男の部分を掻き立てるものがあった。


 今の彼女は、家で魔法薬師の仕事をし、ギルドを通してのやり取りしかしていないため、接触する人間が少ない。だがこれから一歩でも交友関係を広げたら、すぐに彼女の魅力に気付く男が現れると、ヴァンは確信していた。


 エラヴァンスの街は大きな街だ。若く、金を持っていて、将来有望な男はいくらでもいる。彼女が冷静に周りを見られるようになれば、子持ちの四十男――金もなく、身体もガタがきている男なんて、見劣りするだろう。


 だから捨てられてしまわないように、男が躍起になっていることを、彼女は知らない。


(知られたくもねえけどな)


 シェリーに縋りついて、捨てないでくれと懇願するのは、彼の中に残っているプライドが許さなかった。鎮痛薬の煙草に依存し、酒に溺れ、息子に稼がせている情けない実態は出会って間もなく知られているが、それでも、懇願するみっともない姿は見せたくないと思ってしまう。


 これまで繋がれていた彼女を繋ぎ止めてしまいたくないが、自らの意思で自分の隣に残ってくれるなら――と、そんな風に考えてしまうのだ。そのためならばいくらでも尽くせた。華奢な身体を掴んで、揺すって、征服したいという暴力的な雄の欲望を押し殺し、ただただ彼女を蕩けさせることに注力する。


 もっとも、何も考えられないほど蕩け、女の悦びにむせび泣く姿を見るのが楽しくないわけではない。さらに言えば、そうさせているのが自分なのだと思うと、本能に身を任せた性行為ではなくとも、終わる頃には満足感を得ているのだが――


「ヴァンさん?」


 黙り込んだヴァンを見上げ、シェリーが首を傾げている。青灰色の目にじーっと見つめられると――


 ヴァンの指が自然と動き、彼女の耳に触れた。細い肩が小さく跳ねる。気にせず小ぶりな耳を撫でるが、振り払われることはない。そのまま後頭部に手を回し、男は唐突に彼女の唇を奪った。


「んっ!?」


 驚きで薄く開いていた唇の間に舌を滑り込ませ、口腔内を堪能する。互いの唾液を混ぜ合わせれば、シェリーはきゅっと目を閉じた。逃げて奥で縮こまる彼女の舌を絡め取る。後頭部を支えたまま舌を睦み合わせ、熱くぬめる粘液の壁を擦った。


 淫らな水音が響く。重なる唇同士の隙間から、どちらからともなく吐息が漏れた。彼女の鼻にかかった甘い声が腰にくる。


 唾液がシェリーの口の端を伝っていた。楚々とした彼女の顔が蕩けていき、頬が赤く染まっていく。空いた手で腰を抱き、尾骶骨からすーっと撫でれば、細い身体が震えた。丁寧に丁寧に開いていった身体は敏感で、素直に快楽を拾う。


 やがて唾液の糸を引いて唇を離すと、ヴァンは彼女の口の端に伝った唾液をベロリと舐め取った。甘い。腕の中の存在を抱き締めたまま、見下ろす。肩で息をするシェリーの顔が情欲に染まっているのを、ヴァンは見逃さなかった。


「今夜、いいだろ?」

「っ……ライルくんがいるわ……」


 はっきりとそう決めたわけではないが、関係を持つのはライルが不在にしている時ばかりだった。彼女は恥ずかしそうに視線を逸らしながら「声が……」と、ごにょごにょ言っている。


 嫌がっているのではなく、恥じらっているのなら、ヴァンは引かない。誘うように腰を撫でながら、やわい耳朶をくすぐる。


「あいつは一回寝たら起きねえよ」

「でも……」

「なあ、ダメなのか?」

「ぁ……」


 昂って硬くなった雄をぐっと押しつければ、シェリーの顔が艶やかな色を浮かべた。期待で熱に浮かされた彼女を抱いたまま、一歩、部屋の中に足を踏み入れれば――シェリーは身体に力を入れることなく、ドアから手を放す。


 シェリーの部屋は物が少なく、ヴァンの部屋といい勝負だ。しかし魔法薬師という専門職に就いているため、関連した資料や本が棚にぎっしりと並んでいた。薬草の爽やかな香りと、彼女の匂いが混ざった空間に昂りを抑えられそうにない。


 抱きかかえてベッドに座らせる。平静を装って、薄手の寝間着を纏う若く麗らかな肢体を見下ろした。ごくりと生唾を飲む。貪りつきたい衝動に駆られながら、シェリーの頬を撫でた。


「昨日よりすごいことしてやる」

「え?」

「むせび泣くくらい、ドエロいことだ」


 ベッドにそっと押し倒し、内腿を手で開かせる。


「あっ……」


 太腿の間に身体を入れて見下ろした。ヴァンの願望だろうか。青灰色の目が期待と欲望で濡れている気がした。触れていた手をそのまま、やわい肌に滑らせてスカートの中に侵入させる。足の付け根の輪郭をくすぐるようになぞれば、シェリーの身体がぴくぴく震えた。


 ヴァンが自身の乾いた唇を舐めると、シェリーは熱い眼差しを向けてくる。目は口ほどに物を言う。強請る目に応えて、ヴァンは上半身をゆっくり倒し、小さな舌を覗かせる彼女の口に噛みついた――。






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