表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

レベルを上げよう

 俺のスキル【オネダリ】は、自分と同レベル以下の相手に効くことが分かった。つまり、俺のレベルが上がれば、どんな魔物相手にもスキルが通用するってことだ。

 魔物を倒すのに、攻撃役が俺だけでは心もとないが、ルカンダがいればその心配もなくなる。ルカンダが魔物を怖がってしまっても、【オネダリ】によって攻撃してもらえばいいのだ。


 俺たちは、レベルを上げるためにクエストを受けることにした。

 クエスト屋に行くと、昨日は忙しそうにしていたシュルンがボーっとしていた。

「シュルン、おはよう。クエストを受けたいんだけど、何だか元気がないみたいだね。」

「あ、マモルさん、それにルカンダちゃんもオハヨーっす。いやー、昨日『フヤフヤ冒険記』の新刊を手に入れて、徹夜で読んでしまったんすよ。おかげでネムネムっす…。」


 シュルンによると、『フヤフヤ冒険記』という人気のシリーズ本があるらしい。勇者が未知の大陸を冒険する物語で、今爆発的な人気があるそうだ。

「眠いところ悪いんだけど、今日もクエストを受けたいんだ。レベル上げにちょうどいいクエストはないかな?」

「ん-、そうっすねぇ。ムニャムニャ…」


 眠そうな目をしたまま、依頼が書かれた巻物をガサゴソと探していく。そして、2つの巻物を台の上に乗せた。

「レベル上げなら、このどちらかがおススメっす。」


 クエスト:スライムの大量討伐

 ・スライムを討伐し、スライムの体液を持ち帰ること。


 クエスト:キバイヌの討伐

 ・キバイヌを討伐し、キバイヌの牙を持ち帰ること。


 シュルンによると、スライムを10匹も倒せばレベルが上がるらしい。キバイヌはスライムよりは強いが、2人なら問題なく倒せるだろうとのことだ。

 俺はルカンダと少し相談して、2つのクエストを同時に受けることに決めた。


「2つとも引き受けてくれるなんて助かるっす!いやー、最近冒険者の数が減っちゃってて…。それにしても、ルカンダちゃんとパーティーを組むとは、玉の輿っすね!ん?逆玉か?」

 手早く手続きを済ませながらも、ニヤニヤとからかってくる。眠いはずなのに、失礼は忘れないらしい。

 俺はシュルンから、昨日よりも少し大きめのボトルと筒を受け取った。やはり、どちらも不思議な模様が施されている。

 眠そうなシュルンに見送られ、クエスト屋を後にした。


 ルカンダは念のため、回復薬を買いに行くというので、その間に俺は、ファボロの店に寄って昨日預けた鎧を受け取ることにした。店に着くと、すでに鎧の修理は終わっていた。新品同様に修理されている。

「今日はキバイヌと戦うんだって?あいつの牙はするどいから、腕を食いちぎられねえように気をつけろよ!ワッハッハッハ!!」

 笑いながら怖いことを言わないでくれよ…。ファボロに礼を言って店を出ると、ちょうど買い物を終えたルカンダと合流した。よし、準備はバッチリだ。


 街の外に出ると、まずはスライムを探すことにした。危険度が低いスライムで、ルカンダとの連携を試してみたかったからだ。

「スライムは、水辺近くに多いんですよ。」

 というルカンダの言葉通り、川の方を目指していると2匹のスライムを見つけた。さっそく戦闘開始だ!


「スライムよ、動きを止めろ!」

 俺は、さっそく【オネダリ】を使う。これで、スライムたちは動けないはずだ。

 1匹のスライムはプルプルと動けずに震えるだけになったが、もう1匹はこちらに体当たりしてきた。

「おっと!」

 俺は身をかわしながら、スキルは複数ではなく単体にしか効果がないのだと考えた。だが、1匹でも動きを止めてしまえば、順番に倒すだけだ。

「ルカンダ、止まっているスライムを攻撃して!」

「はい!」

 俺の声を聞くと同時に、ルカンダは鋭い攻撃をスライムに繰り出していた。まずは1匹!


「よし、スライムよ、動きを止めろ!」

 これでもう1匹の動きも止めることができた。俺はそのままの勢いでスライムを攻撃し、無事に2匹目も倒すことができた。


「わあ!簡単に勝てちゃいましたね!」

 ルカンダが明るい声が響いた。昨日の怯えていた彼女とは大違いだ。

「うん、このままどんどん倒していこう!」


 俺たちは、そのまま川の近くでスライムを倒し続けた。10匹ほど倒したところで、ルカンダが嬉しそうに言った。

「今の戦闘で、レベルが2に上がりました!きっと、マモル様も上がってますよ!」

 たしか、右手を前にかざすと確認できるんだっけ?俺は右手を出すと、ステータスウインドウが現れた。


 マモル ≪レベル2≫

 スキル:【オネダリ】(レベル1)


 たしかに、レベルが2になっている!元の世界のゲームだと、「パラパパッパッパッパー♪」のようなファンファーレが鳴るのだが、さすがにそんなものはないようだ。

 レベルは上がったが、特に何かが変わったような気はしない。

「うーん、これって本当に強くなったのかな?」

「もちろん強くなってますよ!力とか素早さが上がっているはずです!」


 ルカンダによると、見た目は変わらなくても、攻撃力や素早さがしっかりとアップしているらしい。言われてみると、ちょっと体が軽くなったように感じる。


 試しにもう1匹スライムと戦ってみると、スライムの攻撃をさっとかわし、スキルなしでも倒すことができた。昨日はあんなに重く感じた剣や鎧が、もう何ともなくなっている。これがレベルアップした効果なのか。


「もうスライムはだいぶ倒せたし、もう一つのクエストのキバイヌも倒してみようか」

 キバイヌがどんな魔物か詳しくは知らないが、レベルアップした俺たちなら問題なく倒せるんじゃないかな。ルカンダも同じ気持ちだったようで、キバイヌがよく見つかる場所を教えてくれた。


 少し小高い丘を目指していくと、小さな犬の後ろ姿が見えた。一瞬「可愛いな」と思ったが、こちらに気付いて振り返った犬は、遠くからでもその鋭さが分かるくらいの大きな牙を持っていた。

「あれがキバイヌです!よかった、1匹だけのようですね」


 やはり、あれがキバイヌか!こちらにゆっくりと近づいてくるキバイヌに向けて、俺はスキルを試す。

「キバイヌよ、動きを止めろ!」


 だが、キバイヌの動きは変わらない。キバイヌのレベルの方が上なのか?

 俺の声に反応して、キバイヌが攻撃の姿勢をとった。来る!


「ガウガウガ!」

 大きな牙で突き刺そうと、こちらに飛びかかってきた。だが、動きはしっかりと見えている。

 俺は剣で牙を受け止め、一度距離をとる。ルカンダの方をちらりと見ると、顔は緊張しているが大丈夫なようで、俺の視線に気づいてこっくりと頷いた。


「よし、ルカンダ!俺がキバイヌの攻撃を受け止めたら、その隙に攻撃を頼む!」

 俺はキバイヌの注意を引きながら、攻撃してくるのを待つ。


「ガガウガ!!」

 さっきよりも高く跳び上がったキバイヌは、俺の顔めがけて飛び込んできた。なんとか牙を剣で受け止めたが、キバイヌは諦めずに爪で攻撃してきた。

「うっ!」

 左肩にもろに食らってしまったが、爪は牙ほどの攻撃力はないようだ。牙と爪による攻撃を繰り出したキバイヌは、完全に無防備な姿になっていた。これはチャンスーーー


「ええーい!」


 俺がチャンスだと合図を送るよりも前に、ルカンダの攻撃が決まった。魔物の動きをしっかりと見て、自分で動けていたようだ。すごいぞ!


「やりましたね!あっ、マモル様、肩に傷が!」

 ルカンダは剣を納めると、すぐにカバンから回復薬を取り出した。それほど痛みはなかったのだが、

「マモル様!こういう小さな傷でも、そのままにしていると他の魔物に襲われたときに命取りになることもあるんですよ!」

 ルカンダの熱のこもった説明を聞きながら、俺はありがたく回復薬を受け取った。少し口に含むと、もう肩の痛みは完全になくなっていた。すごすぎる。


 キバイヌにシュルンから預かった筒を近づけると、スライムと同じように姿を消した。どうやら牙を回収できたようだ。

 こうして2つのクエストを終えた俺たちは、街に戻った。帰り道は特に魔物と出くわすこともなく、ルカンダと安堵のため息を漏らした。やっぱり街の外は緊張感があるのだ。


 クエスト屋に報告に行くと、昨日の倍以上の報酬を受け取ることができた。シュルンから

「この調子でもう1クエストいかがっすか?」

 と勧められたが、今日はちょっと行きたいところがあったので断り、また明日来ることを約束した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ