スキル発動!!
街の入り口から外に向かおうとすると、ピカピカと輝く鎧を纏った人に声を掛けられた。
「あんた、街の外に行くのかい?許可書はある?」
外に行くには許可書がいるのか?そんなことファボロもシュルンも一言も言っていなかったけど…。
まあ魔物がいるのに、無許可で外出したら危ないもんな。
「ええと、許可書って誰からもらえばいいんですか?クエストを引き受けているんですけど。」
「クエスト屋に行ったのかい?だったら、何か預かってきたんじゃないか?」
シュルンから預かった物といえば、不思議な模様が入ったボトルくらいだ。
ボトルを取り出すと輝く鎧の人はニッコリと笑いながら言った。
「ああ、それがあれば大丈夫。そのボトルが許可書の代わりになってるから。」
どうやら、この模様は特別な模様らしく、許可書の役割を果たしているらしい。こういう大事なことを説明してほしいんですけど…。
何はともあれ、俺は街の外に出ることができた。
辺りを見回すと、この近くは草原が広がり、奥には森や、なんだか黒い山が見える。すごく遠いはずなのに、見ているだけで不気味さが伝わってくるようだ。
「とりあえず、スライムを探さないと。」
クエスト屋でシュルンから魔物図鑑を少しだけ見せてもらっているので、スライムの見た目はバッチリだ。俺は、街から離れすぎないように探索を始めた。
しばらく歩くと、小さな木の近くにスライムを見つけた。丸い形のようで、動くと伸びたりつぶれたりを繰り返している、なんとも不思議な生き物だ。ちょっと可愛いなとも思えた。
シュルンによると、動きも遅いらしいので、俺は安心して近づいた。
よし、一撃で倒してやる
俺は鞘から剣を抜くと、ぐっと力を込めて振りかぶった。
「うおおおおおお!!」
俺の攻撃は見事に 外れた。
「あれ?思ったより素早い!?」
スライムはプニプニと形を変えながら、不規則に動き回る。右から来る、いや左?
重い鎧で体がうまく動かせない俺は、スライムの動きについていけない。
「プギィ!」
叫び声と共に、スライムが体当たりをしてきた。ダメだ、よけられない!
俺はもろに攻撃を受け、尻もちをついてしまった。ダメージはほとんどないが、このままだとまずい!
「立て直さないと…」
俺は立ち上がろうとするが、スライムの素早い攻撃をまたも受けてしまう。
「ぐっ!」
2回目の攻撃は少し響いた。鎧で体は守られているが、攻撃は内側まで響いてくる。
「そうだ!スキルを試してなかった!【オネダリ】だから、お願いがきくのか?」
俺は、謎のスキル【オネダリ】にかけることにした。
「ええいスライムよ!消滅しろ!」
一刻も早くスライムを倒したかった俺は、スライムに消滅をお願いした。
しかし
「プギィ!!」
スライムに変化はなく、俺は3度目の体当たりを受けてしまった。
「なんだこれ?スキルで倒せるんじゃないのか?」
俺が倒せそうな相手だと理解したスライムは、さらに攻撃をしようと体を震わせている。
「うわぁ!ちょっと待ってくれ!!」
俺は頭を守りながら叫んだ。スライム相手に命乞いをすることになるとは。
さらなるダメージを覚悟して身を固めているが、一向に攻撃が来ない。
何があった?
恐る恐るスライムの方を見ると、プルプルと震えているだけで動こうとしていない。
「もしかして、待ってくれているのか!?」
『ちょっと待って』という俺のお願いを、スライムが聞いてくれているようだった。
「よし、ちょっと試してみるか。動いて!」
すると、スライムはまた不規則に動き出し、俺に攻撃をしようと近づいてくる。
「わ、やっぱりちょっと待って!」
スライムは、その場で動かなくなった。これなら、俺でも倒すことができるぞ!
少し重い剣にぐっと力を入れて持ち上げると、その場で待ってくれているスライムに一気に振り下ろした。
「プギュウ」
スライムは一撃でぐったりと動かなくなった。スライムに勝利したのだ!
や、やった!安堵でいっぱいになったところだが、クエストの内容を忘れてはいけない。
『スライムの体液を持ち帰ること』
ええと、どうすればいいんだ?とりあえずシュルンから預かったボトルをスライムに近づけてみた。
すると、ボトルの模様が光りだし、スライムの姿がふっと消えた。どうやら、スライムの素材がボトルに自動的に入ったようだ。これが魔法ってやつか?すごいなぁ。
こうして、無事に初めてのクエストを達成することができた。怖い魔物に出会わないうちに街に戻らなきゃ、そう思いながら歩いていると街の入り口の方角から悲鳴が聞こえてきた。
「やだー!!誰か助けて!!」
さっきの戦闘の疲れも忘れ、俺は自然と駆け出していた。