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第一章⑤

「で、休憩時間ギリギリ、と」

「しょ、しょうがねーだろ! 緊張すると、なかなか出ねーんだよっ!」

「まぁ、それはわかるけど」

 俺と鈴木さんは、図書館へ急いで向かっていた。鈴木さんの花摘みに時間がかかったため、高橋先生と決めた休憩時間は、あと二、三分しかない。

「晩飯まで、何も口に入れれねぇかな、こりゃ」

「だから、悪かったって!」

 そんなやり取りをしているうちに、図書館に到着。中に入ると、怒髪天を突いた姉貴が待っていた。

 姉貴を見た途端、鈴木さんが俺の後ろに隠れる。

「さっちゃん! 今まで何処にいたのよっ!」

「だからトイレだって。メールしただろ?」

「何処のよ! 南館か北館か、ちゃんと教えてくれないとわからないじゃない! あちこち探しちゃったわよっ!」

 姉貴にそう注意されるも、鈴木さんに手を引かれていた俺はどちらの校舎にいたのか今まで把握できていなかった。

 自分が出てきた校舎を思い出して、俺は姉貴に答える。

「ごめんごめん。北館一階にいたんだよ」

「もう! 連絡はちゃんとしてよ? 危うく同僚呼ぶところだったじゃない」

「だからそれは職権乱用だって……」

「おや、戻ってきたのかい? 武田くん」

 高橋先生が、貸出カウンターの奥の部屋から顔を出した。額には汗があり、先生はそれを拭う。

 何をしていたんだろうと思っていると、高橋先生が軍手を外しながら答えてくれた。

「待っている間、図書委員の手伝いをしていたんだ」

「そうだったんです――」


「きゃぁぁぁああああっ!」


 高橋先生の言葉に頷きかけた瞬間、図書館中に絶叫のような悲鳴が響き渡る。

 誰もが一瞬動きを止めたその中で、一番最初に動いたのは、姉貴だった。悲鳴が聞こえた場所に、姉貴は迷わず走りだす。高橋先生がその後に続き、俺も鈴木さんを引き連れて後を追う。

 行き着いた先は、一つの部屋だった。

 リスニングルームと札がかけられたその中には、口を抑え、顔面蒼白となった女子生徒。

 そして、頭部を血だらけにした、女子生徒が倒れていた。

「動かないでっ!」

 部屋の中に入ろうとした高橋先生を、姉貴の叫び声が止める。

 姉貴は素早く倒れた女子生徒の腕を取り、脈を測る。

 しばらくすると、姉貴は静かにつぶやいた。

「高橋先生。図書館を閉めてください。誰も出入り出来ないように」

「ど、どういうことですか?」

 狼狽する高橋先生に向かって、姉貴は真剣な目をしながら、ハッキリとした口調でこう言った。

「殺人事件です」


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