8.ランプ
なぜランプが鳴るのか推理してください。
運転中、突然警告灯が光った。シートベルトのマークが赤色に点滅していた。
『ピコン、ピコン、シートベルトを装着してください。』
由加は焦った。というのも、シートベルトは装着していた。だがランプは定期的に警告してくるのだ。
何度も警告音を聞きながら家に辿り着いた由加は、その日の夜に拓実に相談した。
「車の故障かな?」
2人は車に乗り込み、シートベルトを装着した。そして拓実がエンジンを掛けると、夜のドライブに出掛けた。しかしランプは光らなかった。
「おかしいなぁ。」
コンビニに駐車すると、由加が運転を変わった。シートベルトを装着し発車するが、やはりランプは光らない。
「変ねぇ。」
家に戻ると、2人はコンビニで買っていたアイスを食べながら話し始めた。
「昼間私が運転した時は、たしかにランプが光って警告音が出たの。シートベルトを装着してくださいって何度も言われたわ。でもなんで今は鳴らなかったんだろう。」
「たしかに装着してたの?」
「うん。間違いない。手で触って確認したもの。」
拓実は状況を整理し始めた。
「昼間に1人で運転していて、シートベルトのランプが光った。でも確かめるとシートベルトをしていた。他にいつもと何か違ったことはなかった?」
「うーん。そういえば、ベルトの締め具合が少しきつかったような気がする。」
「締め具合の違和感・・・か。」
由加は思い出したように言った。
「拓実の運転した後は、いつも座席が後ろ過ぎるから、前に移動してからシートベルトを付けるんだけど・・・昨日は先にベルトを付けてから座席を移動したの。それできつかったのかも。」
翌日の夕方。由加が車を走らせているとまた警告音が鳴った。やはりシートベルトのランプが光っているが、しっかり装着している。
「おかしい・・・やっぱり故障かしら。」
由加は拓実に相談し、週末に車を買った店で点検してもらう事にした。しかし、異常は見当たらなかった。
「もしかして、私呪われてるのかな。」
「えっ・・・」
拓実が驚いて由加の顔を見ると、深刻な顔をして悩んでいた。
「これから酷い事故が起きるから、シートベルトをしっかり付けるように幽霊が教えてくれてるのかな。」
「考えすぎだよ、由加。ちゃんと見てもらって異常が無かったんだから、大丈夫だよ。」
拓実は苦笑いした。不安そうな由加を元気づけるため、「気晴らしに運転してきなよ」と由加を送り出した。もうランプは鳴らないと確認して欲しかったのだ。
だが、先ほど出発した由加が5分もしないで戻って来てしまった。
「拓実!! また鳴ってる!! どうして!?」
由加は青い顔をして、目には涙を浮かべていた。拓実は急いで運転席のドアを開け、ランプを確認した。確かにシートベルトのマークが赤く光っている。
拓実は丁寧に由加の身の回りを観察した。
そしてある事に気がついた。
「由加、シートベルトがきついって前に言ってたけど、今はどう?」
「え?・・・あぁ、たしかにちょっと違和感あるかも。でもなんで?」
「やっぱり気づいてなんだ・・・由加、よく見てみて。
運転席のシートベルトを、助手席のシートベルトの留め具に付けてるよ。」
「・・・え?」
由加がベルトの留め具を見ると、確かに助手席の留め具にベルトを付けていた。
「わ、私、間違えてたのね!!!」
すると由加は大笑いした。
「良かったーー、呪われてなくて!! 拓実、ありがとう! あなたと結婚して良かった!」
「うぅ〜ん。こんな事でそんな事言われてもなぁ・・・」
喜んで抱きついてくる由加を受け止めながら、なんとも言えない気持ちでいる拓実であった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。