7.似てる
「アメリカンホットドッグが食べたい。」
スーパーで由加と買い物をしていた拓実は何のことだろうと思った。
「ねぇ、拓実もアメリカンホットドッグ食べない?」
誘われて戸惑った拓実は、由加にアメリカンホットドッグとは何か尋ねてみた。
「なんでそんな事聞くのよ。もしかして、拓実は食べた事ないの? そんな事ないと思うけどなぁ。みんな一回は食べてるでしょ。このお店でも売ってるのを見たし。」
「えぇ? ・・・みんな一回は食べる物なの?」
「食べてると思うけどなぁ。ソーセージのしょっぱさと、周りの甘いのが合うんだよね!」
いまいちピンとこない拓実は由加の案内でパン屋コーナーに案内された。店で焼かれた美味しそうなパンが並べられている。
「あっ! 私トイレに行ってくるから、アメリカンホットドッグを2本買ったらお肉かお魚コーナーを見てて!」
由加はあっという間に行ってしまった。困った拓実はアメリカンホットドッグが何なのか考えた。
由加はみんな一度食べている、この店で売っている、ソーセージが入っていると言っていた。
陳列棚にはメロンパン、あんぱん、デニッシュパン、ホットドッグ、食パン、クリームパンなど、様々なパンが並んでいた。パン以外にも、アップルパイや揚げ物なども売られている。名前を見ながら、拓実の目が1つの商品を捉えた。
「ホットドッグ」
これだと思った。ソーセージがパンに挟まっている。パン生地が甘いとは思わなかったし、由加がなぜアメリカンと言ったのかは分からなかったが、ホットドッグという名前の商品はこれだった。
拓実は由加に言われた通りホットドッグを2つ買い物カゴに入れると魚コーナーに向かった。刺身を見ていると由加が戻って来た。
「お待たせ! あれ、アメリカンホットドッグが無いじゃん!」
「え? 由加が言ってるのって、ホットドッグじゃないの?」
拓実が差し出すと、由加は首を横に振った。
「これじゃ無いよ。」
2人はもう一度パン屋コーナーに来た。
「ほら、あるじゃん! 私さぁ、昔からこれが好きなんだよね。」
由加がホットドッグを陳列棚に戻しながら話を続けた。
「ソーセージと周りの甘じょっぱい生地が合うんだよねぇ。でもね、一番好きなのは、食べ終わった後に串に残ったカリカリの部分を食べるのが最高なの!」
由加が「串」と言った時に拓実はピンときた! そういえば、「2本欲しい」と言っていた。食べ終わりに串にカリカリの部分が残る食べ物といえば・・・
由加は「アメリカンドッグ」を手に取っていた。
「それアメリカンホットドッグじゃなくて、アメリカンドッグだよ。」
「え? 何言ってるの?」
由加は笑顔で返事をしたが、拓実が商品名の書いてある紙を指さすと「アメリカンドッグ」と書いてあった。
「嘘でしょ!!!!!? 私今までずっとアメリカンホットドッグだと思って生きてきた!!」
由加は恥ずかしくなって、買い物カゴの中にアメリカンドッグを叩き入れた。
拓実は半笑いで先ほど戻したパンを指差した。
「由加、これは?」
「ホットドッグ。」
今度はカゴの中を指差した。
「これは?」
「アメリカンホットドッグ。・・・じゃなくて、ホットドッグ? あれ、違う??」
拓実は腹を抱えて笑った。由加は顔を真っ赤にして怒った後、恥ずかしそうにしながら買い物を続けた。