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絵日記は青く塗られ始める

久寺彩薇とのデートが終わったが、前回のデートよりうまくいかず、むしろ最初は完璧だったと後悔をし始める五行は憂い感じる思いで就寝した。

その翌朝である。


         空は再び太陽の入りを許す。

        そして彼も再び日を浴びるのだ。


        8月の27という同じ日を浴びる。


 焦燥に目がくらんだ昨日の日を被っている僕では、「同じようで違う今日」というのを実感することになる。酷く苛まれた感情がこの記憶を思い出すたびに思い続けるのだろうと思った。しかし、今日はこの思いを消し飛ばすような日だった。 


 つるやかでプニッとした腕に、一本のろうそくの火を静かに消すような吐息。簡単な間違え探しだ。同じようで違う今日。


スースーと気持ちよさげに寝る少女……。


「って!! うわああああ!!」


 布団を投げ飛ばし飛び上がるように僕は起きた。

この悲鳴を聞いてトテトテと足音を立てて、僕の部屋のドアを開けた。


「どした!! にいーちゃん!! メダカにポイでも破られたか!!」


「あ」


 僕のベットにはあの白い少女がすやすやと眠っていたのである。少女はパジャマを着ていて、くるりと寝返りをした。「なんでここに?」と考えたが、横で震えてるやつを見るとそれどころではないことが分かる。


「あ、兄者が……」


「ち、違うんだこれは!」


「ポイを破ったのは兄者の方だった……」


「おぉい!! へんなこと言うな!! まて!! 話を聞くんだ!!」


「あにが、はだかでポイを破ったんだーー!!」


「ちょっと、どこへいく!?」


 妹の来葵はドタドタと階段を下り、どこかへ出かけてしまった。

このうるさい騒ぎに目を起こしたのか、ぐしぐしと擦りながら起き上がった。


「んん? ふぁああー ……おほよーね?」


「おほよーね? じゃねえよ! なんでこんなとこにいるんだよ!」


「私は君に色々教えに来たんだけどねっ」


「え?そうなのか?」

意外にも僕を救ってくれるのは張本人なのか?……


「じゃあ……」


「まあ、そんなことはできないけどねっ?」

僕は期待をしていたが損をした気分だ。それと割とまともに喋り会えるのだと感じた。

この前は僕らの問いかけに、のほほんと答えるだけだったのに。


どういう風の吹き回しなのか……。


「じゃあ、五行の失恋話の話でもするっ?」

さらっと呼び捨てで呼ばれているが、流してやろう……。

そう言って、僕は勉強机の椅子に腰をかける。


「はぁぁあ、とりあえず何しに来たんだ?」


「クスっ、とりあえず今の感想を聞きに来たの」


「感想?」


「見てるだけじゃわからないでしょ?」


 これを読んでいる読者にはわからないかもしれないが、白い可愛げな少女の、首かしげおねだり上目遣いとなると、五行も無視はできない。五行は天井を見上げて考え、ギイイイイイと椅子に寄り掛かる。

そしてすんなりと話し始めた。


というのも、元凶に愚痴を吐き出すいい機会とも考えられるのだ。



「最悪に決まってんだろ? 瀬貝には毎日説明しなきゃだめだし、やったことが全て無に帰す。過去なんて知ってても役に立つことなんかないんだよ」

少女はまたもや、クスっと笑う。


「それに……」

と僕が愚痴を続けようとすると、


「そうだね。 …………。


 ーーーー便利な世界だね。ーーーー


                  」


「え?」


 このときの少女は楽しそうに見えた。僕の感情すらも無下にし笑う、その無邪気な喜びを天使のように告げるのだ。僕とは真反対のことを述べるのだが、簡単に論破されてしまった。


なぜなら僕も言語化したことで気がついていた。


いや、うすうす思っていたことかも知れない。でも絶対に口にはしてはいけないと思っていたから、


           気持ちが揺らいでしまう。



 確かに便利な世界である。

昨日、前回よりうまくいかなかったデートもないことになっている。何もかもを揉み消せる力を授けられてしまったのだ。そして、憂鬱だった学校のスタートが遠ざかっているのも、うれしいことこの上ない。



「そうでしょ? 久寺彩薇の代わりには久寺彩薇がいるの。 そんなこんなで失ったものも、すっかり元通り。いわば、



          ーー君は後悔というのを失った。

                          ねっ?」


「久寺に代わりがいる? ……失った? 何を言っているんだ?」


「まぁとにかく!! 君の夏休みはまた始まったんだ」

そう言われると、どこか不安や悲しみがあった気がするけども、そんなのはないと蓋を閉じた。

だって夏休みが始まったのだから。


そうか、また始まってくれたのか。



 カーテンから漏れる日差しも強くなってきた頃には、いつの間にか白少女も僕の憂いと一緒に消えていた。僕はカーテンを開けて、日に光る白いベットを見た。心も高ぶらせる絶好の晴れ日和に体も爽快に動いた。



       白い人 ともに転機が 苦も晴らす



五行、自身最高傑作が青くなった快晴の日に落ちる。


この天気が変わりませんように。と







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