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再現するには技術より事実が大切

再び一日前に戻っていた五行終人は瀬貝が待ち合わせ場所に来ていないことを確認し、瀬貝に学校に来るように連絡をした。


ガラガラシュルル


 図書室の窓際、僕はこの暑い中でも選んでしまう。

部屋の空調は3月を想起させる暖かさ、適当な小説を選び取り、椅子の背もたれに肘を掛けて座る。


ここはいつでも変わらない。

気温も日差しも心も。


たった、2日の異次元を彷徨うだけで、当たり前を願っていまう。


 さきほど、久寺と別れる際に僕はここに来てくれと約束をした。

それはこのループについて、久寺とも話し合うべきだと感じたからだ。

久寺は「そう、真剣ね?」と言い、背筋をグーっと伸ばし、テニスコートへ向かった。

何かを確信したようだ。あいつも頭がいいから異変に気づいたようだ。



 ブブッ

瀬貝が僕に一通の連絡を入れた。

毎週木曜は部活がないので、僕は瀬貝に学校に来てもらうように言ったのだ。

どうやら今、向かって来てくれているらしい。

あいつは面白いものに惹かれて飛んでくる。

きっと今もニヤニヤしながら、電車に乗っているに違いないな…


ガタンゴトンッ シーーーーーッ



 山の木が捌けたところのような光が差し、自然のような部屋でページをめくっていた。

すると、久寺彩薇が入っていくところが見かけれた。


本に集中しているとは言え、オーラのようなものを感じれたのだ。

彼女は少しそわそわさせて「で…話って何かしら?」と言う。


「すまんが、ここでは少し話しにくい。屋上に場所変えるぞ?」


「別に、どこでも構わないのだけど」


何故かいつものような強気さが感じられない。

横を向いてそっけないような態度で、僕が本をしまっているのを待っている。

僕は様子のおかしい彼女と屋上に向かった。



 めずらしく会話をせず、彼女はそっと付いてくる。

僕は再び、かの重い扉を体を使ってスッと開けた。

ある程度涼しく晴天でくだらない風が弱く吹いている。


僕がスタスタと歩くと、彼女は下を向いて付いてくるため、ピタッと止まり振り返ると、

彼女は後ろで手を結び、顔を赤らめている。


「そ、それで、話って何かしら?五行君」


「あぁ、それなんだけど」


と言ったとき、ギギギッと後ろの扉が動いた。


「おーい、来たぞー、ってなにしてんだ?」

と瀬貝が入ってきた。


「ちょうど良かった。まだ今から話すところだ」

すると慌てたように彼女は


「ちょっと待ってくれるかしら!五行君」

と言った。


「ん?どうしたんだ?」


「あなたって…はぁ〜…なんでもないわ」

少し怒っているようだ。しかし、いつもの久寺に戻ったような気がした。


「それで?今度はどんな話を持ってきたんだ?」

瀬貝は毎度のように嬉しそうに言った。


「その前に一つ、瀬貝に聞きたいことがある。」


「ん?なんだ?」


「僕の明日の晩御飯はなんだ?」


「あ、明日?」

この様子からどうやら昨日の記憶はないらしい。

時系列はしっかりしているのか…


「そうね?毒入りのスープかしら?」

久寺は恨みがあるように言った。

なにで僕はこいつを怒らせたんだ…


「いや、知らないぞ? 俺に期待しすぎだろ?」


「そうね…じゃあ毒入りのトリカブトかしら?」


「毒に毒じゃねえか!」


「普通にわからないって」


「あぁ、そうか、そうだと思ったよ。」

僕はまた、あの31日のことについてすべて説明した。

また、昨日…つまり30日のことについても話した。


久寺と瀬貝は意外にも、やじを入れずに真剣に聞いてくれた。


「白い少女?タイムスリップか…」


「それも一日ずつ戻っていくなんてね」


二人の天才たちも、なかなか難航しているらしい。

すると、瀬貝が再現をしてほしいと言ったので、屋上での事を演じることとなった…








 8月31日


 僕、五行終人は学校の屋上で一人イヤホンの断線した部分を眺めていた。


 何を考えているわけもなく、だ。


 僕の左耳が不機嫌だったとき、暑い日差しがなにかに遮られた。

 見上げると何もなかった。快晴に近い空があり、遠くの雲はなんの想像もさせない雲だった。

 

 見下げると、白い、えー、少女。というか女子生徒が地面を這いつくばっていt



「カットだ!カットー!!」

僕は瀬貝のナレーションを遮った。


「と、心の葛藤をもらし、少女をクラウチングスタートのように強く蹴っ飛ばしたのであった。」


「違えよ!!サイコパスじゃねえか!」


「どうしたの?五行君。はやく蹴っ飛ばさないと進まないでしょ?」


「なんで、お前は受け入れてんだ!? そもそも話が変わっているって!」


「とは言っても、再現できないんだからな。しょうがないだろ?」


「いやなんかこうー、あんな感じでプカプカと…」


僕らに衝撃が走った。

ふざけた様子の二人も動揺して場が涼しく静まった。

そこにはふざけた風にゆらゆらと揺れる、あの白い少女がいたからだ。


「おいお前!」

少女は目を開くと達観した口で言う。


「また君か、なんだか気が合うみたいだね」


瀬貝は堪らず少女に話しかけた。


「君が五行をループさせているのか?」

核心をついた質問に僕も唾を飲む。


「違うよ、それは彼が勝手にやっていることだよ?」


「飛びたくないのは、五行?」


そのまま少女はゆらゆらと地面に触れることなく、雲のように流れていった。

僕たちが確信したことはあの少女が原因であり、僕もまた原因だということ。

少女がなぜ再び現れたのか、少女の正体はなんなのか?

疑問は浮かんで消えず、空も雲が流れ着き

どんよりと暗い天気となってしまった。



 瀬貝は彼女とデートの約束をしていたらしく

あのあとは「夜に連絡する」と言い残し、去っていった。

僕は久寺と二人きりとなった。

彼女は話を変えて喋ってくれた。


「そういえば五行君?」


「どうした?」


「昨日のデートのことを聞いたのは明日に活かすためかしら」


「…あぁそうだ」


「あまり過去の私を失望させないでよ?」


この言葉は重かった。

事実だけならば、僕は二回目のデートとなり、

他の人とすでに行ってしまっている状態だ。

彼女にとっては別の人とのデートで記憶を上書きされるのだ。

この世界の久寺彩薇は消えるのだ。

僕は一体誰を久寺と呼べばいいのかわからない。

彼女自身もしんみりと感傷に浸っていた。



 その夜、暗い部屋に携帯の明かりが眩しく苛つく。

瀬貝からのメールが入った。

ぼんやりと読んでいたため、何も理解ができなかった。

ただ最後に綴られた文章には「しっかり寝ろよ?」と書かれていた。

それだけはなんとなく覚えている。

目や身体までゾンビのようになるのは避けたかったからだ。




 初デート 寝ずに行くなら ねずみ色


五行、後悔しないための俳句である。


 










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― 新着の感想 ―
[良い点] 久々のコメント失礼します。やっぱり面白い小説ですね!少し憧れ?を抱いてるみたいです!僕もこんなふうに書けたらいいな〜と常々思ってます!これからも頑張ってください! コメント失礼しました […
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