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まだ夏が可愛らしい日を放っていた

一日前に戻っていた五行終人は少女と会った屋上に来ていた。

しかし、そこには何もなく、屋上から見えた久寺彩薇を見て、

仲良くなったきっかけの、あの事件について思い出す。


 僕は駅前のカラオケにて一人で歌っていた。

いいだろ? 別に。カラオケは一人の方がいいんだよ。


 午後10時ごろ、派手に歌いきった僕は、脳内で曲を流しながら、

ノリノリでゆらゆらと自転車で帰っていた。

酔っ払ってるおじさんの運転のように……。


 川の大橋に入るかかるときに、うるさいくらいに明るいパチンコ店を横目に見た。


うるさい……と思い、前を見ようと振り返るときに、路地に女性が引き込まれるところが一瞬だが、見えたのだ。引っこ抜かれているようにも見えた。


 僕は突然の出来事すぎて、あまり理解ができず、呆然と足をついて、立ち尽くしていた。


 すごく冷たい風が吹いていて、初夏にしてはとても涼しかったと今思う。

月の明かりがいつもより多く、橋は美しく照らされていた。


 何かを考えているようで何も考えていない僕は意識が戻った。


当たり前のことだが、僕より彼女の方が怖い思いをしてる。その意識だけで十分だ。


 僕はその女性を助けるために、自転車を止め、路地に入り1つ目の角を曲がった。

そこにはチャラいチンピラの三人組に口を抑えられ、体を過激に彼らの舌でえぐられている女性の姿があった。


 暗い影の下で行われていたそれは、なにかの儀式のように感じた。


 神に捧げる犠牲、妖怪に供える生贄、村のために死ぬ少女。

どれも神秘的で恐ろしい妄想を想像させ、僕は怒りに溢れた。


 あの女性は生贄の少女として選ばれてしまったのだ。神でも妖怪でもなく…人間に。

というかいつだって人間が選ぶのだ。


犠牲も生贄も。


 僕がやるべきことは一つだ。それを許さないことだ。


 口を抑えていたチンピラが僕の存在に気付いた。

僕はまだ気持ちの整理ができていなかったが。


「おい。なにもするな。彼女から離れろ」と、

咄嗟に出た言葉、僕の正義はそこにあった。勇気ではなく、論理の上でそういった。


いわば流動的である。


「あぁん?」

三人が同時に僕の方を見て、ヘヘッと笑った。


「なんだぁ?チビ イキってんじゃねえぞ?」


「そこで指でも咥えて見てろよ?邪魔すんじゃねえよガキが」

漫画とかでは雑魚キャラのセリフなのだが、実際にただの高校生が見ると、今すぐにでも指をしゃぶって見ていたいほど怖さなのである。



「はぁ。できれば手荒な真似したくねえのになあ。場所を変えるしかねえな」

と僕を見て、ペラペラとだらだら話す。でも何も警戒されていなかった。


 囚われている彼女はじっと懇願するような目で睨んでくる。

その魔力のおかげなのか、僕は冷静に携帯で動画を取り始めることができた。


「ちっ めんどくせえな おい あいつの携帯を壊せ」


 ふっ。僕も無策ではない。

僕は本能的に獲物を狩る神経によって脳が回転されていた。

こんなときのためにと、僕の手にはさっき自転車止めたときの……。


 僕の携帯を壊そうと一人の痩せ型の長身の男が殴りかかって来たが、我ながら上手く、右手で払い避けた。


 そして渾身の一撃を浴びさせるのである。


「残念だったな!僕は左利きなんだよ!!」

月の光が僕の左手にある武器を照らした。


「サ、サドルッ!?」


 僕は男の肩を自転車のサドルでぶっ叩いたのだ。

ここが暗い場所だったから、左手で持っていることがバレなかったのだ。


 すかさず僕はそいつの顔を殴ろうとした。が……。


 このときの耳鳴りは酷かった。

キーンという音と共に見えたのは地面が横になる瞬間だった。


 もう一人の仲間が僕の脳天を上から殴り付けたらしい。

あとはひたすらに蹴られ尽くした。ヤンキー達は僕を動けないようにする程度で殴っていたが、唯一僕が肩を攻撃した男は最後まで強く蹴ってきた、仲間が引き止める声がして、やっと蹴られなくなった。


 亀も自分が憎かったのだろうか。悔しい。

縮こもっていないと痛いから縮こまらないとだめだが、

こんなことしたくない。


こんなことしたくないのに……。

僕は身を屈めて亀のように丸まっていた。


 そのあとのことは僕は何も知らないのだが、どうやら女性は僕が蹴られている間に逃げていて、僕のために救急車と警察を呼んでいてくれていたらしい。


 でもそれが惨めに思えた。あの光の差しこんでいる橋を胸を張って歩きたかった。


 重い怪我はしていなかったが、何もかもズタボロの重症で

いつか治ってしまうこの怪我も、治らないでほしいとか戦士の勲章とか色々考えたりしたが、痛みがすごいため、早く治れと願うばかりである。


 僕はポジティブな人だから、女性が助かったなら頑張ったなと思い、簡単に話は終わった。

そして今回みたいなことがあったら、一人では挑まないことを覚えた。





ひとりでは 路地入りすぐ ハイリスク


これは五行、今後の俳句である。









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