作戦
また作戦を練り直すことにした。
「じゃあまず、闇落ちマイクが全属性の魔法を使えるってどゆこと?」
この世界では一人につき魔法は一つしか使えないはずなのだ。
「いや、稀に聞いたことがある。千年か百年かに一人、そういう奴もいるんだ」
「マジか。魔法の精度はどんくらいなんだ?」
「人によるが、、、話を聞くに基本的なものは全て使えるぐらい」
「それは私たちでもなれるの?」
「分からない。でも、重要なのは感覚なんだ。その全属性を使える人は、生まれた時からそれを知覚してるけど、僕たちはそれができないから他の魔法を使えない」
「なるほど、、、、」
その後、ベースは異世界のアリカに向けて
「マイクの強さはどれくらいですか?」
と聞いた。
「私も詳しいことは、、、全属性の魔法を使えることなんて今聞いたし。魔法を使っているところもあまり見ないわね」
「敵は何人ぐらいいるの?」
「私たちは反逆賛成派を半分ほどに増やしたわ。だから正面衝突なら数は同数よ。でもまだこのことをマイクは気付いていないから、敵の内側から戦ってうまくいけば、マイク派の勢力を抑えられるわね」
「じゃあ余裕なんじゃね?俺たちに頼るほどだったのか?」
「でも私たちにマイクを倒せる人は存在しないのよ。私も勇者とは言え異世界術で戦えないし、他に強いのはあの馬鹿すぎるベースだけよ」
「たとえば残った兵士数百人で一気マイクを叩いたとしても無理そうですか?」
「ええ。今まであんなおかしな男に従うしか無かったのは、彼が誰よりも強く、従わないものはみんなの前で殴り殺していたからよ」
「こえええ」
「それを私たちに倒して欲しいってこと?」
「それはマジで怖いんだが」
「他に、気になることはある?」
「ダンラが死んだのはいつ頃ですか?」
「え?三年前よ」
「そうですか?じゃあ、杞憂だったかな」
「ベース、どういうこと?」
「いや、、、」
その直後、異世界のアリカの顔色が変わる
「あがっ、、はあはあ、、、やばい、始まったわ共感覚が」
顔色は真っ青になり、体中が震えている。
「そろ、そろ、、帰る、、わね」
そしてアリカは帰って行った。
「あんなに共感覚って酷かったか?」
「いや、私たちの時はそんなことなかったわよね」
「時間も早かったしね。それも気になるとこだけど、僕たちに闇落ちマイクと戦うメリットってあるかな?」
「え?頼まれたから、、?」
「いや、だって龍種のみんなも命をかけてまでこのタイミングで戦う義理はないって話だけど、龍種たちとは違い、僕たちはそもそも死んだら終わりなんだからそれこそ戦う義理はないよね」
「めっちゃ確かに!!」
「じゃあ、今からでも断ってくるか、、?」
「うん。でももう一つ、、、さっきアリカさんに聞いたのは、異世界でもこっちと同じ時期に人が死ぬのか気になったからだ。答えは違ったけど、でも現状、こっちで死んでる人はあっちでも死者になっている」
「つまり、、、?」
「もし、異世界のマイクが死んだ場合、こっちのマイクはどうなる?」
「、、、!!!」
「さっきのアリカさんの返事が嘘で、本当は同時期に死んでいてもおかしくないと思う」
「じゃあ、、、」
「あっちのマイクが死んだら、こっちのマイクも死ぬ」
「うわわわわ、それはマズイ!!」
「だから、アリカさんたちの誘いに乗って、マイクと戦い、寸でのところで止めればいいんじゃないかなって」
「それだ!」
「確かに、あっちのマイクに異世界の私やベースが殺されても私たちがどうなるか分からないものね」
ということで作戦はまとまった。
「じゃあ、三日後ね、、」
「ちょ、待てよ〜」
マイクが口を挟む。
「どうかしたの?」
「二人に見せたいものとかが三つあって、」
「なんだ?」
「まず、もうすぐ俺はこの国の王になる」
ダンラが死んだ後、信頼に値する貴族たちが王の座を引き継いでくれていたが、マイクももうすぐ16歳とこの国では成人になるため、国王として即位することが決まったのだ。
「それで、俺はうまく王としてやっていけるか不安だから、、、これからも二人の力を借りたいと思ってる」
恥ずかしそうにマイクが言った。
「もちろんよ!」
「当然だね。マイクは馬鹿だしこっちが不安だもん」
「あと、それで、俺、妻を作んなくちゃいけなくて、、、」
アーベルカ王国では今まで勇者の力を持つ王族の血を大切にしてきた。つまり、その血を途絶えさせないことは何よりも大切であり、特にベースとは違い、純血の王族であるマイクには妻が必須なのだ。
「候補はあるのか?」
「決まりでは俺は有力な貴族の令嬢の誰かと結婚することになる」
「マイクはそれでいいの?」
「父さんも望んで結婚したわけじゃないって言ってた。お互いを嫌ってたわけじゃなかったけど、恋愛感情はなかったんだって」
「まあ、仕方のないことだしね」
「で、誰を妻にするんだ?」
「それがこの人だ!お入りください!」
マイクの拍手と共に出てきたのは黒髪ロングの清楚系美女だった。
「こんにちは」
「うおおおおおおお!!」
「こちらはミカさんだ!俺の未来の嫁な!」
セリステの女装に騙された時や、アリカの前世を勝手に妄想して劣情を抱いていた時からなんとなく察しはついていたが、どうやらこういうのがマイクのタイプらしい、、、w
「それで、もう一つってなんだ?」
そう聞かれると、じゃあね〜と言ってマイクはミカを見送り、また三人になる。
「あと、シラクス国と平和条約を結んでからあっちの技術が入ってきたらしくて、それを見て回るっていう仕事を一緒にやってほしい!」
ということで三人は街に向かった。
なぜマイクの仕事を手伝う必要があるのかは謎だが、まあ、馬鹿なマイク一人に任せるのも不安なのだった。
「これだ!」
そう言ってマイクは黒い持ち手のある筒を持ってみせた。
「あ、危ないので、慎重に触ってくださいね」
技術者にそう言われた。
「こちらは拳銃というものです。この引き金を引っ張ると弾が発射され、目標に穴を開けます」
「穴ってやばくね!?」
「あちらが的です」
そう指さした先には人型の的があった。
バンバンバン
「うおっ、うわっ、、うえええ、、、」
マイクは撃ってみるが、そもそも撃った時の衝撃でびっくりしているほどで的など全く当たらない。
バンッ!
「これすごく難しいですね」
ベースも撃ってみるが、全然当たらない。
(これ、知ってる、、、私はこれを、知っている)
バンバンバン
弾丸は真っ直ぐ進み、人型の的の脳天を撃ち抜いた。
「す、すげえ」
「もしかして、あなたはシラクス国出身でこれを扱ったことがあるのですか?」
「え?出身はそうですが、扱ったことはない?です」
「すごい才能です!」
褒められてアリカも得意そうにしている。
帰り道、アリカは花屋さんによって、赤いポピーを買っていた。
そんなこんなでやることも終わり、三日後の戦いの日となった。
貴族学校についての補足説明
貴族学校では貴族としての常識的な礼儀作法や教養を教えています。それ故に出席は自由で月末のテストだけ受ければ大丈夫です。
テストで赤点だと親に通告が行きます。
また、生徒の人数は数十人程度なので一クラスしかなく、それ故クラス替えもないです。
実施場所はマイクたちの住む大きなお城で、教えるのはブールスや手の空いている城の従者たちです。
ちなみに今はウェジラータを討伐してから数ヶ月が経過していて、5月ぐらいです。
アリカは三月生まれ、マイクは5月生まれ、ベースは九月生まれです。