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番外編1 ベースの過去編

シーズン1とマイクのキャラデザが青い目から赤い目に変わっています。

ベースは初めから兵器として死ぬはずだった。

アーベルカ王国は技術、戦力の面で戦争中のシラクス国と大きな差があった。

だが、そんなアーベルカ王国にしかない力がある。

それが、代々王族が引き継ぐ強力な力、いわゆる勇者の力である。

アーベルカ王国ではその血をできるだけ濃く保つため、王族の人数は最小にし、親族同士の結婚を繰り返してきた。

ベースやマイクの父親であるダンラもその一人だった。

力を発揮した王族は戦場で何千人にも匹敵する戦力を持つ。

だが、それでも埋めきれない差が出始めていた。

貴族たちが他国との貿易を独占していたアーベルカ王国ではその貴族たちが仕入れた新しい技術を出し渋って、研究が遅れ、もう何千人の力など無意味な戦争が生まれていたのだ。

そして、その対応をするのもまた貴族たち。

貴族たちはダンラでも戦力が足りないのならダンラに子供を多く産ませ、戦力を増やそうとした。

王族は一人しか子供を産まない決まりを破り、ダンラは二人の女性と子を作った。

これからも王族として生きていく、貴族の母親を持つマイクと、10歳を過ぎれば戦場に送られ、兵器として利用されるはずの下民との子のベースである。

これは、そんなベースの物語。


僕は失敗作だ。

僕とマイクは別の親から同じ年に生まれた。

僕たちが3歳になる頃に大人たちが僕たちの強さを検査した。

その時からマイクに僕が敵わないことは決まっていた。

マイクの脅威的な体力、反射神経、そんなものの数々が、僕にはなかった。

母親はそんな僕が兵器として役に立たなかったら自分の立場も危うくなると考えた。

毎日のように血反吐を吐くまで訓練をさせられた。

毎日のように母親にゴミのような目で見られた。

そうやって僕が9歳になる時、母親は倒れ込む僕の胸ぐらを掴み、どうしてあなたはもっと強くなれないの?と怒鳴りつけた。

どんなに頑張っても僕の力が平均を超えることはあっても、マイクに勝つことはなかった。

でもその時僕は言ったんだ。

『あなたは王国の財産を横領しています。この事実を告発されたくなければ、もう僕に関わらないでください』

って。

母親は背筋が凍ったような顔をしたよ。

告発されるのが怖かったわけじゃない。僕のことが気味悪くてそうなったんだ。

憎しみと軽蔑と狂気に満ちた目をした僕に

『この化け物め!』

そう吐き捨てて母親は僕に関わることは無くなった。

その頃から僕は天才と呼ばれ始めた。

気に入らないやつは罪を露呈させて潰した。

情報はうまく使えばすごく強いから。

そして、ダンラ国王陛下に直談判して学校に通わせることを承認させた。自分の兄とやらを見てみたかったからだ。

でも学校に通い始めたらそんなことはどうでも良くなっていた。

自分が良い成績を取れば周りは褒めてくれた。

僕は天才だったんだ。

愛されるには理由がある。僕はそれが頭脳だっただけだ。

でも聞いてしまった。

『なんで私が下民と一緒に?』

『てか、うざ』

『ダンラ様の血が入ってるのに下民の黒い髪と青い目だけ引き継ぎやがって』

『決まりを破って二人も産むからこんな失敗作が生まれんだよ』

は?

学校の友達だけじゃない。

屋敷のメイドも母親もみんな僕のことを

愛して、ない?

僕に下民の血が入ってるから?それともこんなんじゃ僕は強くないから??

そんな時に母親の罪が露呈して母親の追放が決まった。

その夜、あいつは言ってきたんだ。

私にはまだ5歳の病気の息子がいる。高い治療費を出すために今追放されるわけにはいかない、あなたならどうにかできるはずでしょう?

ダンラとは違う男の子供。僕には腹違いの弟がいて、どうやらそいつは僕と違って愛されているみたいだ。下民の血が入ってるのに。なんで。

お前らを助けるわけないじゃん。

『ざまあ』

にちゃあと自然に笑顔になっていた。

『あなたの弟よ!弟を見殺しにするのね!!』

母親は金切り声をあげたが、僕の狂気しかない目を見て、口をつぐんだ。

でも憎しみに満ちた目でこっちを見て、

『あなたは狂っている!あなたが治ることはない!これからも死ぬまであなたが幸せになることはない!!!』

『そんなことはもう分かっている』

口から自分への嘲笑が溢れていた。

次の日、母親は追放された。どこに行ったかは分からないが、治療費の巨額の借金を抱えて物乞いでもしているのだろう。

金の使い癖は簡単には治らないからね。

僕はもう何も分からなくなっていた。

自分の人生に反吐が出る。

生きるメリットとデメリット。

もう生きる意味も分からない。

学校に行くのももうやめようと思っていた。

そんなある日のこと。

『なあなあ!今回の単元、全くわっかんねぇから教えてくんね!?』

そう笑いかける男の輝く金髪と赤い目を見て、その男が、多くの人が自分と比べては賞賛した自分の兄であると気付いた。

どうすればよかったのか、彼とは何が違うのか興味が湧いて、その誘いを受けた。

一ヶ月間、彼と勉強をした。

本当にこんなところもわからないのか不思議でたまらない。

こいつの成績は悪くない。平均かそれより少し上くらいだ。

だが、知能が低いということなのだろうか。

今までテストのために無理やり知識を押し込んでいたように思えた。

『うおおおおおおおお!!めっちゃ分かった!公式の意味を分かって使えたの始めてだ!ありがとな!!』

太陽のような笑顔で笑いかけられた。

ああ。何もかも彼と僕は違いすぎる。

きっと今まで人から平等に愛されて、褒められて、幸せに暮らしてきたんだろう。こんな僕とは違って純粋で、優しくて

綺麗だった。

目眩がしそうなほどに。

最後に一つだけ分からないことがある。

『なんで、君は僕に話しかけたの?』

『え?いやー、勉強できるんだろ?だから教えてくれたらなーって』

やっぱり僕は。

『でも、一番はなんか勘!お前とは気が合いそうな気がした!!』

え?

『それは、僕たちが兄弟だから?』

本で読んだことがある。家族は意味なく愛し合うって。

でも、僕はそんなことなかった。

でも、でも、こいつはそれだから?

『え?俺たち別に兄弟じゃないだろ?笑』

こいつ、知らないのか?それとも気付いていないのか、僕が弟だって。

でもだったら、

『なんで?』

『え??友達になることに理由なんてないだろ!!

あ、これからお前は俺のダチな!』

『あれ?』

いつのまにか目から水が出ていた。

これは何?まだ分からないことだらけだ。

『ちょ!!お前どうしたんだよ!?ああ!嬉しいんだな!

この俺の友達はまだお前しかいないから誇りに思えよな!』

決めた。僕は、

『ははっ光栄だよ。これからよろしくね』

こいつと一緒に生きていこう。

それが僕の生きる意義だ。

二人が親友になる頃には、頭のいいベースを兵器として利用するのではなく、このまま学校で学ばせて技術開発をさせたほうがいいと決まった。

二人は互いに苦手な分野を教え合ってどんどん強くなった。


「ーーーそれでさ。マイクお願いがあるんだけど」

「なんだ?」

「僕の母親に会ってみようと思って」

「分かった。俺も一緒に行くな!」

二人は王国のはずれの小さな家に向かった。

場所はベースが目星をつけた。

「こんちくわー誰かいますかー?」

マイクが大声で呼んでみる。

すると中から10歳くらいの少年が出てきた。

「なんのようですかーーって、王族!?」

「やべっ顔隠すの忘れてた!」

マイクは特徴的な金髪と赤い目で王族と分かってしまうので、力が覚醒するまで他国に命を狙われる可能性があるため、外出するときはフードをかぶっていたのだ。

「簡潔に話そう。僕はベースだ」

ベースがそう言った瞬間、空気がひりつく。

「てぇめぇえええ!!!」

そう言って少年はベースに飛びかかった。

「お前が母さんを見捨てたのか?」

そういう少年をマイクが引き剥がそうとする。

だがそれをベースは手で押さえた。

「そうだ。だから、大丈夫だ」

「っ!?」

少年は困惑した。目の前にいるのが母親が言っていた狂った兄とは全く違う人のように見えたからだ。

悲しそうに笑ってるその男が。

少年はベースから手を離し、母親について離し始めた。

「僕は母さんが借金をしてまで治療費を出してくれたから、今生きている。でも母さんはその後働き詰めで死んだ。

母親はいつもこう言っていたよ。

『私だって初めから死ぬと決まっている子供を作りたくなかった。でも生きるためにはもうそれしかなかった。情を出せば死んだ時に悲しくなると思って、その子を愛そうとしなかった。それを償うようにあなたを愛した。あの子は私のせいで狂ってしまった。もう絶対に許されることじゃない。だから、私が死ぬのは仕方ない。だから、もし、あの子が来ることがあったら、あなただけでも彼を愛すのよ』

ってね。でも俺はそうは思わねぇ。でも君の気持ちがわからないわけじゃない。さっきは飛びかかって悪かった。それに、もうその必要はないみてぇだしな」

チラリとマイクを見ながら少年は答えた。

「そうか。教えてくれてありがとう」

二人は王国に帰った。

「大丈夫か?」

「うん。平気」

マイクの問いにベースが答えた。

「俺たちはーーーーーーー親友だからな!」

マイクがまたとびきりの笑顔でそう言った。

それから二人は腐敗した貴族たちの一新に努めて、有力な貴族は皆、民のことを考え任せられる存在になった。

余談だが、マイクは頭脳面を全てベースに任せることにし、知識を無理やり詰め込むのもやめた。

そしていつの日にか成績が学年最下位になっているのだった。

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