私のエッセイ~第二百四弾:ちょっと怖い話(後編)
・・・ぼくね、彼女が『事故』で亡くなったという、その悲しいニュースを、ジムの中のトレッドミルの「ミニテレビ」のモニターで知ってから・・・
数日後に、矢板市内の某・花屋さんで、一束の花を買いました。
花屋さんの女性店長さん、言いましたよ。
「・・・あの子でしょ?」
「えっ?」
「あの子のところに持ってってあげるんでしょう? 今から・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・かわいそうだったわよねぇ、まだ入学して間もなかったのにねぇ・・・さぞや、つらかったでしょうに。」
・・・ぼくね、店長さんのその言葉を聞いたとたん、その場で声を上げて泣きましたよ。
もう、わんわんとね。
あんなに大声で泣いたのは、いつ以来だったでしょうかね・・・。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ぼくは、花束と、まだ若かった、年頃の彼女が喜びそうなお菓子とジュース類をたずさえて、彼女が無念に散った事故現場におそなえし、しゃがんで手をあわせ、冥福を祈りました。
・・・それからのぼくは、彼女の命日の頃は、仕事で行けない年もあったけれども、できるだけお参りして、彼女のことをしのぶ・・・
それがあたりまえの習慣になっていきました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・そして、きのうと今日。
警備内容は、「葬儀で留守になる個人宅の留守番警備」でした。
現場は・・・
彼女の亡くなった事故現場から、1キロほど北の、ある農家さんでした。
その事故現場を通過した際、先日ぼくがおそなえした、無糖の紅茶、ポッキー、そして新発売のセロキロカロリーのおいしい乳酸飲料がちらりと見えました。
(・・・また来たよ。元気にしてたかい? 帰り、ここ通るからね。しばらく待っててね。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
初日の勤務は・・・つまり、きのうですね。
勤務時間は、15時半から19時。
そとにトイレはありません。
だから、おしっこがしたくなったら、家の中のトイレをお借りするしかないんですね。
でもね・・・
昔の昭和時代の農家さんの家って・・・あまり言いたくはないんですが、ちょっと不気味なんですよ。
電気をつけても中は昼なお、薄暗くって、奥に進むほどだんだんと暗さが増していって・・・
おまけに、畳の古い和室では、歴代のご先祖様の白黒写真が、何人も上からぼくを見下ろしていたりしてね。
お線香のにおいがかすかにただよう、その薄気味悪い、せまい畳の部屋を・・・そして仏壇の前を通過し・・・奥の暗い廊下の突き当りが、お目当てのトイレです。
トイレ自体は、様式のきれいなものでしたがね。
・・・でもね、外で立哨してるときはまだよかったんですよ。
薄暗くなってから、そんな家の中に、ひとり入ってごらんなさい。
たとえ『霊感』がない人だって、あの寒気というのか、独特の妖気みたいなものが、うっすらと霧のようにただよう室内を進んでいくのって、かなり勇気と度胸がいりますって。
でもね・・・
ふだんから「幽霊」や「お化け」を信じている、そんなこわがりのぼくも、なぜかきのうと今日の勤務では、まったく『恐怖』は感じませんでした。
どうしたわけかね・・・。
ぼくね、自分のそばに『彼女』がずっとついていてくれてるような気がしましてね。
おそらくは・・・
『A子ちゃん』、ぼくを守りに・・・余計な『浮遊霊』やら、その土地に住み憑いた『地縛霊』などのおそろしい怨霊・悪霊ども・・・つまりは、そういった『不成仏霊』の魔の手から、ずっとぼくのことを守ってくれていたんじゃないか、と。
(そうか・・・そうだったのか、A子ちゃん。ありがとね。でも、そんなに気を遣わせちゃって、ごめんね。また来るからね。
・・・暑い時期に、冷たい飲みもの持ってくるね。じゃね。愛してるよ。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ぼくね・・・思うんです。
きっと彼女ね、とってもいい子だったんじゃないかって。
すごくまじめで、ナイーブな、魅力あふれる可愛い子だったんだろうなぁって。
それがために、すごく傷つきやすいハートの子だったんだろうなぁって・・・。
だから、言い方・表現は乱暴かもしれませんが、こんな可愛くて優しい『A子ちゃん』を、平気で死に追いやった腐れマ〇コの「ズベ公ども」にはですね・・・
いずれ、おそろしい報い・・・天罰がくだると思いますよ。
・・・もう、すでにくだっているかもしれませんがね。
でも、『A子ちゃん』。
君ならきっと・・・
ぼくと「馬が合う」ような気がするんだ。
君が元気でいるころに会いたかったなぁ・・・。
きっとぼくたち、それは理想のカップルに・・・素敵な恋人どうしになれた気がするんだ。
・・・そんな気がね。
じゃ、またね。
とりあえず、おやすみ。
あしたぼく、仕事だから寝るよ。
m(_ _)m