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願いのカギ

 王宮に到着してからは、この前と同じだった。

別の文官が持ってきた書類にチャリス氏がサインした。

それから僕らはこの前と同じ応接室に案内され、そこで待つよう言われた。

また悠然とやって来たチャリス氏に導かれて、謁見の前に通された。


「マインから使者が来ましたよ。

無事にドラゴンを倒したそうですね。

ご苦労様でした」

 僕らのあいさつを聞くと、女王陛下はそうおっしゃった。

それを聞いてステラさんがおずおずと尋ねる。


「ありがとうございます。それで報酬についてですが」

「ええ、もちろん用意します。

後々宿屋に届けさせますから、お待ちなさい」

 女王陛下のお顔は、この前より幾分か穏やかだ。


「重ね重ね、ありがとうございます。

ガブリエラ様、さらにお願いをする形になって申し訳ありませんが、マインに復興費用を届けてはいただけませんでしょうか?

かの町はこの度、ドラゴンの影響で甚大な被害を受けています。

現状のままですとこの国全体の石炭産出にも影響が及ぶと思いますので、どうぞご検討をお願いいたします」

 ステラさんは深く頭を下げて、そう言い切った。


ガブリエラ様は少しお考えになってから、言葉を返された。

「わかりました。実地調査を行なってから、支援額を決めるとしましょう」

「ありがとうございます」

 ステラさんは、再び深く頭を下げた。


「ガブリエラ様、単刀直入に伺います。

魔王のもとに行くには、どうすればいいのでしょうか。

どうか教えてください」

 ナギさんがそうやって本題を切り出した。

この前はドラゴンの出現でうやむやになってしまったが、魔王討伐が僕らの本来の目的だ。

ガブリエラ様、どうか情報をお授けください。


「その質問には、私が答えるとしよう」

 突然そうおっしゃったのは、ランドルフ様だった。

僕らは一斉に女王陛下の夫君に視線を移した。

そのお顔は以前ナギさんが言っていた通り、極めて冷静だ。

そうだ、このお方は24年前に現れた魔王と戦っていらっしゃる。

ランドルフ様は、そのまま言葉を続けられた。


「魔王のもとに行くには、『願いのカギ』という代物が必要になる。

もともとは王宮に保管されていた宝物のひとつだったが、今はここにない。

盗賊団プランクに悪用されてはまずいと考え、ある場所に移したのだ」

 ステラさんがぎくりとしているかと思ってちらりとそちらを見たが、彼女は実に涼しい顔をしていた。

この人、案外演技派なのかもしれない。


「それで、その『ある場所』とはどこなんですか?」

 ナギさんがそう疑問をぶつけると、ランドルフ様は相変わらず冷静にお答えになった。

「王都のずっと北にアルブムという町がある。

その近くに塔が建っていて、ビンセント・ウイズダムという魔法使いが弟子たちと暮らしている。

彼はもともと王宮に勤めていたから、その縁でカギを預けたというわけだ。

あの辺りは豪雪地帯だから、装備を厳重にして行くように」


 ビンセント・ウイズダム。

その名前に僕は聞き覚えがある。

特別講義のためにソーサリー魔法学園に来たことがあるからだ。

15年前のあの当時で結構いい歳だったから、今現在はかなりの高齢になっているはずだ。

それなのに未だに弟子をとっているなんて、精力的な人なんだな。


「彼にはこちらから話を通しておくから、協力が得られるはずだ。

では道中、くれぐれも気を付けてほしい」

 ランドルフ様がそうおっしゃったので、僕らは女王陛下ご夫妻の御前を辞去した。

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