復興計画
「どうでしたか?」
戻ってきた僕らの顔を見たファイアストン氏の第一声が、それだった。
「まだ使っていないので、本当に強くなったのかどうかはわかりません。
でも強化の方法は、なかなかに神秘的でしたよ」
ナギさんは少し考えて、そう返事した。
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、ステラさんはひとつの提案をした。
「ファイアストンさん、この武器強化を商売にする気はありませんか?
うまく行けば、マインの復興費用を稼げるかもしれませんよ」
ファイアストン氏は驚いて、彼女をじっと見た。
「えっとそれは、具体的にどういうことでしょうか?」
「武器屋が各地にあるということは、それだけ武器を持つ冒険者もいるということです。
彼ら彼女らの中には自分の武器に愛着があって、より強い武器を買うよりも今の武器を強化して使いたいという者も一定数いるはずです。
現に私も、このクロスボウには愛着があります。
これまでいろいろな町や村を回ってきましたが、武器強化ができたのはフンメルさんのところが初めてです。
いかがでしょう、いい商売になりそうではありませんか」
「うーん、確かに一理ありますが、まずは武器強化の効果が本当にあるのかという点と、フンメル君がうなずいてくれるかという点が問題ですよ」
ファイアストン氏はそう言いながら、頭をかいている。
瞬時に問題点を指摘できる能力。
さすがは町長の器といったところか。
「フンメルさんには、こちらから打診しましょう。
武器強化の効果につきましては、実戦の結果をお手紙で送るというのはどうでしょう。
商売成功の暁には、こちらへの返礼をどうぞお忘れなく」
ステラさんは自信たっぷりにそう言い切った。
彼女の目は、心なしか商売への期待に輝いているようにさえ見える。
この人、本当になんで聖職者をしているんだろう。
商人の方がずっと向いているんじゃないだろうか。
ファイアストン氏は少し上を見上げて、彼女に返事した。
「確かにほかに復興費用のあてはないし、考えてみますよ」
その日はそれでファイアストン氏と別れ、僕らは世話になっている民家でのんびりと過ごした。
次の日は僕のワンド、その次の日はステラさんのクロスボウを強化してもらった。
強化の方法はナギさんのときと同じだが、使う素材の色が異なっていた。
僕のときは青が4つと黄色がふたつ、ステラさんのときは赤が4つと黄色がふたつ。
ほかにも黒や白、紫やオレンジの素材があったが、それらはきっと別の能力強化に使うのだろう。
自分の武器を強化してもらった後、ステラさんはちょっとお話がと前置きして、フンメル氏に武器強化を商売にしませんかと切り出した。
フンメル氏は最初渋い顔で聞いていたが、ステラさんに研究資金を稼げる可能性の話をされて急に乗り気になった。
ステラさん、こんなに話術が巧みなら、いよいよあなたは商人になった方がよさそうだ。
結局フンメル氏は、予約制で武器強化を承ると同意した。
あとはファイアストン氏の承諾が得られれば、本当に武器強化が商売になる。
マインがああなってしまった以上、ファイアストン氏もフンメル氏もお金が必要なのは間違いない。
そこにマイン鉱山でとれる素材で稼げるという話が来たのだから、まさしく渡りに船だ。
フンメル氏が商売のことでファイアストン氏と話をしたいと言ったので、僕らは彼と共にファイアストン氏のところに向かった。
元の村に戻るとすぐ、ファイアストン氏とフンメル氏、そしてステラさんの3人は民家の客間にこもって話を始めた。
僕とナギさんはファイアストン氏がお世話になっているこの家の主婦が話しているのを、うなずきながら聞いていた。
この人も夫が炭鉱夫で、夫の仕事はどうなるんだと町長に随分せっついたらしい。
ファイアストン氏はもう復興への道筋を考えていて、町民総出でひとまずがれきを片づけ、作業が一段落したら炭鉱夫たちがまたマイン鉱山で働けるよう、仮設の休憩所を建てる計画を立てているとのことだ。
がれきの片づけにも日当は出るという話だが、それならなおさらマインの経済は火の車だろう。
だとするとますます武器強化での収入が必要になる。
僕がそこまで考えたところで、ステラさんが部屋から出てきた。
「話はまとまりました。明朝、王都に向けて出発しましょう」
僕とナギさんは、ただうなずくしかなかった。




